深田昌之のホンダ「N-VAN」で幸せになろう
第11回:分かりにくいN-VANカスタムと、N-VANキャンピングカー情報
2019年8月30日 00:00
納車されたのが2018年の8月末なので、2度目の夏を経験した筆者のN-VAN。走行距離も1万8000kmまで伸びたけど、相変わらず好調で、気になるようなフィーリングの変化はない。エンジンオイルも小まめに替えているのでエンジンの調子も変わらないし、メカノイズも元のレベルだ。ただ、気温が高いぶんエアコンの負荷も高いのか、燃費は夏前と比べて落ち込んでいる。普段と走り方に違いはないのに、平均して-2km/Lの13km/Lあたりだ。
660ccという排気量からみるといい数字とは言えないけど、夏場のターボエンジン搭載車は丁寧に走らない限り「そんなもの」という話も聞いたので納得はしているが、燃料タンクの容量が25L(4WDの場合。FFは27Lタンク)と少ないので、燃費の低下はもともと短めな航続距離に響いて正直厳しいと感じている。
そんなことから思いついたのが、ルーフやボディ側面のトリム内へ断熱材を入れること。これでエアコンの負担を軽減すれば、ひょっとして燃費にいい影響が出るかも? というものだが、着手するには時期を逸している。もし、読者の方でN-VANの断熱をやったという方がいたら結果を教えていただきたい。
カスタマイズはひょんなことからアイデアが生まれる
さて、それでは今回の話に入ろう。以前も書いたことがあるが、筆者はホンダアクセスが2019年の東京オートサロンに出展したN-VANのカスタム仕様車「TRIP VAN」のファンである。これはN-VANを「旅をするためのクルマ」に仕立てているものだが、カスタムされた1つひとつに「そうなった」理由があって、しかもその理由と変更後の機能が道具的なクルマであるN-VANの本筋から外れていない。N-VANのことをホント真剣に考えて作られているクルマなので、N-VAN好きな方ならきっと気に入るであろう1台だ。
そんなことから筆者のN-VANも「N-VANであること」を第1に考えて、筆者なりに「N-VANらしい」と思えることをプラスしてきたのだが、以前から実行できていないことが1つあった。それがボディ側面下部の色つけ、つまり2トーン化である。
これもTRIP VANの影響によるものだが、TRIP VANはただの2トーンではなく、ボディ下側を接触や石跳ねからガードする意味で「ラインX」という軍隊の車両にも使用する特殊コーティングを塗布していて、その色がマットの黒なので結果的に2トーンになっているというものだ。
このアイデアをそのまま使わせてもらうことももちろん可能だが、ラインXの吹きつけにはかなりの金額が掛かるようだし、1度吹き付けてしまうと元に戻すのは大変だ。
筆者のN-VANではこれまでチョコチョコと細かい部分に手を入れたり、用品を追加してきたが、それらすべては記事を読んだ方が同じことを容易にやれること。そして合法であるのは当然として、元に戻せるとか査定的な面からクルマの価値を落とさないようなことを考えてやっている。
そうなるとラインXはこのルールに合わないので、筆者のN-VANでやることではないということになる。
ここでボディ下部に黒のボディ用フィルム(カッティングシート)を貼れば似たような感じになるかもしれない。フィルムを貼ることで塗装面の保護にもなるだろう。だけど「TRIP VAN魂(急に出てきた言葉だけど、ようはN-VAN的な工夫をすること)」が足りない気がしていたので、ただフィルムを貼るだけはナシだ。それに、最近は石跳ねなどから塗装面をガードするためのプロテクションフィルムもあるが、これも貼るだけなのでもの足りないのだ。
で、アイデアというものはいきなり出てくるものだった。筆者はカスタム仕様車の取材もしていて、たまにカーラッピングカスタムのことも取り上げたりする。
この世界は色やデザインにこだわる傾向なので、とくに色合いの表現に長けているのが特徴。そして、そのためにインクを調色して色を作り、それをインクジェットプリンターでフィルムに印刷する手法がある……と、これを思い出してから胸のつかえのようなものが取れた。そう、クルマのイメージに合う色を印刷したフィルムを貼ればいいのだ。
ということで貼ってみたのが、トップ写真の姿。色を作るので塗色は自由に選べたが、ここはあえて目立たないようN-VANのボディ色である「ガーデングリーンメタリック」を選択した。それに加えて印刷面の保護のためにオーバーラミネートフィルムをツヤ消しタイプにしているので、色は同じであってもボディの反射の違いを使っている珍しい感じの2トーンとなった。
このようにツヤを変えることで見え方を工夫してみたのだが、「それだとツヤ消しのプロテクションフィルムを貼ったのと違いがないのでは?」という意見もあるかと思う。でも、そこはもちろん承知しているので、実はここにもひと工夫入れてあるのだ。
N-VANに限らず、クルマのボディカラーにはユーザー向けの名称のほかに板金修理業者向けの「カラーコード」という呼び名があり、ガーデングリーンメタリックのカラーコードは「GY33M」というもの。今回の調色のため、塗料メーカーが出しているカラーサンプルを調べてみたところ、GY33Mには2018年式のN-VANに塗られていた色と、それ以降のN-VANに塗られている色の2種類があることが判明。それぞれのカラーサンプルを見比べると、現行のGY33Mのほうが色合いが少し明るいように見えた。
筆者のN-VANは2018年式なので色味が濃いほうのGY33Mが塗られている。だから、フィルムへの印刷も濃いほうのGY33Mで……と考えたが、同じカラーコードで色が違うという状況は滅多にないだろう。それならここは現行のGY33Mにしたほうが面白いのでは、ということで現行のGY33Mを選択している。
結果はツヤ消しと合わせて、ちょっとした色味の違いのあるさりげない2トーンになってくれたので非常に満足だ。
まあ、見た目の変化に乏しいのは承知しているが、アイデアや手間は並以上にかかっているし、フィルムを貼ることでマッドガード的な石跳ねなどによる傷付き予防の機能もあるので、これはTRIP VAN魂に沿ったものだ、と筆者は思っている。
さて、この施工をお願いしたのは埼玉県の秩父郡皆野にあるグラントデザイン(株式会社宏有)さんで、ここはアニメの公式キャラクターグッズの製造や公式のラッピングカーを製作しているところだが、母体はクルマ販売や修理、板金塗装などを行なう自動車整備業者。それだけにクルマ用塗料のデータも持っているし、色合わせの技術もあるので、今回のフィルム用のボディカラーを調合するという難易度の高そうなことも、ここならできるのでは? ということからこちらへ依頼したのだ。
筆者のN-VANと同じ色のフィルムを製作するのはもちろん、他のN-VAN純正色のフィルムを製作することも可能(事前にコーションプレートのカラーコードを調べておく)だ。それに色味の調整やオーバーラミネートフィルムをツヤありかツヤなしかも選べる。さらにフィルム製作だけの依頼もできるので、通販で購入し、施工は地元のディーラーや板金業者、またはDIYでやることも可能だ。もちろんグラントデザインでの施工もできるが、作業予定が詰まると取りかかれるのがずいぶん先になるそうなので、ここは要相談だ。
費用は今回と同じ範囲に施工する場合は、フィルム代と個別の色合わせ工賃で約3万円。これは通販可能だ(送料は別途必要)。グラントデザインでの施工まで依頼すると、フィルム代と施工料で計約4万円が目安というところ。やってみたい方はグラントデザイン(TEL:0494-62-0150)に問い合わせていただきたい。
なお、普通に石跳ねなどからボディを守りたい場合は、ホンダ純正アクセサリーのマッドガードがあるので、それを選ぶのもいい。ボディカラーに塗装済の「カラード」と樹脂の黒のままの「ブラック」がある。定番はカラードだろうが、筆者のN-VANのようにホイールカバーを外していたり、無骨なイメージにしている場合は未塗装の質感が似合うのでブラックがいいかもしれない。