深田昌之のホンダ「N-VAN」で幸せになろう

最終回:2年越えのN-VANをちょっとだけイメチェン

 N-VANに2年、3万km乗ってきてつくづく思うのが「シート(運転席)がいい」ということだ。

 軽バンというとシートが簡素なイメージもあるが、N-VANのシートはそうでもない。配送などで丸1日クルマに乗る人に“運転しやすさ”と“疲れにくさ”を提供するため、運転席は普通乗用車と同等のフレームを採用することでオシリから腿の裏をしっかりカバーする広い座面としていた。さらにバックレストはサイドのサポートを大きなものにすることでカーブなどで身体が横にずれることを抑えるなど、軽バンのシートとは思えないほどの作り込みが施されている。筆者もN-VANで300~600kmくらいの長距離移動をちょくちょくやっているが、たしかに身体の疲れも出にくいしオシリが痛くなったということも記憶にないくらいだ。

 こうした座り心地に加えて運転席左側には大きめのアームレストが付いているので、高速道路の走行ではこれを使用してリラックスした体勢で運転。ステアリングは右手のみで握ることになるがLKAS(車線維持支援システム)を使うと直進安定性がかなりよくなるので右手はステアリングを軽く握るだけでOK。ふらつくことも不安もない。これにACC(アダプティブクルーズコントロール)での80~100km/h巡航は軽バンとは思えないくらい運転が楽なのだ。N-VAN購入当初は「長距離の移動のために」とそれまで乗っていたシビックセダンも同時に所有していたけど、長距離走行を乗り比べたらなんとACCとLKASのあるN-VANのほうが楽に走れたのでシビックの出番は減り、けっきょく手放してしまったというくらいN-VANは長距離移動(長時間乗車)が得意なのだ。

助手席はダイブダウンをさせる都合で座面は狭くクッションも薄いので長距離を乗るには不向きだけど運転席は乗用車並みかそれ以上。左側には大きめのアームレストも付いているので高速道路巡航はリラックスした体制を取れる
シートの厚みもしっかりある。大きめのヘッドレストも形状、クッション性とも文句なし。頸が疲れたりすることもないし、シートバックを倒して仮眠するときも頭の後ろが痛くなることもない
フレームは普通車用と同等なので座面のサイズも十分、厚みもある。配達などで頻繁に乗り降りしても大丈夫なよう、摩擦に強い生地が使われている

 さて、そんな感じのシートにとくに不満はないのだけど、2年も乗るとなにかイメージチェンジをしたい気持ちにもなってくる。そこで検討したのがシートカバーだった。

 N-VAN用のシートカバーを探すと、ホンダ純正アクセサリーには3種類あるし、アフターパーツでもいろいろなタイプが発売されていたが、筆者のN-VANは道具箱っぽくラフな感じに仕上げたいので、どれもイメージとはちょっと違った。車用品と言うよりアウトドアグッズのようなものが欲しいのだ。とはいえそんなのはないよな……と思っていたらなんとイメージどおりのカバーを発見。それがオートバックスが展開する「ゴードン ミラー」ブランドの「ゴードン ミラー キャンバス シートカバー」という商品だ。

 素材は厚手のキャンバス布とアウトドア感は満点で、表面には撥水効果のあるパラフィン加工が施してあるので飲み物をこぼしたり、濡れた服で乗り込んでもある程度の水分をはじいてくれる。それにパラフィン加工をしたキャンバス布は使用時の摩擦や折れなどにより布の表面に擦れたような痕(チョークマークと言うらしい)が付くので、使い込むほどに風合いが増すという特性もある。

 装着に関してもシートにピッタリ合う用に作られている一般的なシートカバーとは違い、こちらは汎用でエプロンのようにシートに被せるだけというラフなもの。おそらくトヨタハイエースのシートを基準にしていると思われるが、軽バンながら大柄なN-VANのシートでも「ザックリ着る」ことができる。そんなルーズフィットな部分もまさに理想的だった。

撮影用の敷物に上に置くより、草の上に置くほうがシックリくるキャンバスシートカバー。価格は8250円だが大人気で欠品中。次回入荷は冬ごろとなっていた
装着するというより着せる感じ。従来のシートカバーにはなかった質感だ
ヘッドレストに被せる。背面シートポケットの使用は可能
固定はカバーについているコードで行なう
コードの長さ調整は可能。コードもアウトドア用ロープのようなものを使っている
ヘッドレスト部の両サイドは編み込みになっていて、ここのコードを締めつけることでフィット感を調整する
シートベルトキャッチがある部分はベルト着脱操作しやすいような形状になっていた
座面部分の端は固定するものがなく、乗り降りの際にカバーが横ずれした。そこで写真のようなクリップを使ってカバーとスライドレバーをつなぐ。1箇所だけでもズレは多少改善。複数箇所留めればなおいい

 キャンバス シートカバーは、ゴードン ミラー製品を扱うWeb通販サイト「JACK&MARIE」のみで販売しているが、現在は売り切れ。次回入荷は冬ごろとなっていた。ただ、これも発売されればすぐに売れてしまうと思うので、手に入れたい人はサイトに登録し、製品ページからお気に入り登録をして入荷時期を見逃さないようにしておくことを勧める。

アームレスト付きでも装着できる。シワが付いてくるほどカッコよくなるので使い込みがいがあるアイテムだ。まさにN-VAN向き

 なお、ゴードン ミラーにはキャンバス シートカバーのほかにアウトドア用のチェアやコットにも使われる丈夫なX-PACという素材を使用した「X-PACシートカバー」もある。こちらは別売りのモールシステムパーツを取り付けていくことで、シート背面にさまざまなものを装備できるようになる。アウトドアと言うよりサバイバルゲーム的なタクティカルなイメージだがこの手の雰囲気もN-VANには似合うのだ。

ゴードン ミラーラボにて「X-PACシートカバー」をN-VANに装着させてもらった。価格は1万8700円でこちらは在庫あり(9月30日時点)。サイズなどの詳細は公式サイトで確認いただきたい
「X-PACシートカバー」もエプロンのようにシートに被せるというか「着せる」感じで装着。左右上下4箇所に付いているバンドに付属のひもを通して締め上げて固定する
ヘッドレスト部のカバーは別体。ヘッドレストが外れないタイプのシートには装着不可
スレなどに強いX-PACという生地。ツヤがあって手触りもいい。縫製もていねいで、合わせる箇所それぞれに最適な強度を出すため部分ごとに縫い方を変えている。本格的なテントなどもこんな感じなので縫製というマニアックな面でもアウトドア好きな人の気持ちに響くアイテム
X-PACシートカバーも装着は簡単。固定する箇所が多いのでずれにくいのも特徴
小物が装着できるよう一面にウェービングテープを張り巡らせてある(モールシステム)シートバックオーガナイザーを付けたところ。X-PACシートカバーにも2段ぶんのウェービングテープがあるが、これを付けるとさらに拡張性が上がる
別売りのアンブレラケースやティッシュボックスカバー、ウエットティッシュカバーを付けた状態。ちなみにサバイバルゲーム用品にはモールシステム対応の小物が多いのでそちらから用途に合うものを選んで付けることも可能だ
N-VANのカーゴスペースに敷いてあるフロアボードと同じグレー色の収納ボックスも購入。ゴードン ミラーからも色違いで同様の製品が発売されている
耐荷重は100kgと人が余裕で載れる。洗車時の踏み台にもなるしキャンプテーブルと高さの合うイスにもなる。筆者はN-VAN内で撮影データの仕上げをしたり原稿を書くこともあり、そのための折りたたみのテーブルとイスを積んでいたがイスは不要になった
先日、さっそくこの装備で原稿を書く機会があったがイスを出すより準備が楽。ボックスには助手席に置いているジェルクッションを敷いたので長時間の作業でも問題なく座っていられた
サイズは底面の長さが685mm、フタは780mm、高さは370mm。N-VANに置くとこんな感じ。N-VANのこの面は幅が約900mmあるのでちょっとすき間ができる。車外から立ったまま何かするのにちょうどいい高さなので作業台としても使える
容量は70L。雨具や撮影用小物などを入れても余裕。防水性もあるので雨の日に外に置いても中身は濡れない
このケースはアウトドア派の方に人気。フタをひっくり返してセットし、さらに板を敷いて平らな面を作ることで、テーブルとして使うという使用法もある

これからの季節に増えてくるロードキルへの対策品

 鹿や猪など大型の野生動物が人の住むエリアに多く出没するというニュースを見ることが増えたが、山間部や郊外の道ではずっと以前から野生動物の道路への飛び出しによるクルマとの衝突事故(ロードキル)が発生している。

 N-VANは趣味をサポートするクルマなので山深い道など走行する機会も多いと思うが、軽自動車では大型の野生動物と衝突した際に受けるダメージは普通車より大きいだろうし、野生動物の出没が増えているいまは余計に気をつけたいところ。

 そこで紹介するのがT.M.ワークスというクルマの電気系パーツメーカーが発売している「鹿ソニック」というロードキル抑制装置。機能を簡単に紹介すると鹿や猪などが嫌う周波数帯の音を防水スピーカーからランダムに出すことで道路脇や道路上にいる野生動物を散らす効果を生むというもの。言うなれば電子鹿笛である。

 この鹿ソニックは以前も紹介したが、そのときの製品はアンプとスピーカーが一体式になったタイプで、軽自動車のようにバンパーやグリルに奥行きがない場合はクルマの前面に取り付けしずらく、基本的にバンパーを外して内部に仕込むようになる。ちなみにN-VANなら純正ホーンを移設し、バンパーに開いているホーン用スリットから鹿ソニックの低周波が出るように取り付ける感じだ。ただ、バンパーを外すのはDIYでは難しく、作業を依頼しても工賃がそれなりに掛かるのが難点だった。

 ところがこの夏から、スピーカー部とアンプ部が別体になったセパレート式の鹿ソニックを発売開始。スピーカー部の厚みが24mmと薄いのでバンパーの表面への取り付けも容易になったのが特徴。N-VANを始め軽自動車向きと言えるモデルなのだ。

 気になる価格は2万8600円と安いものではないけれど、ロードキルは例年冬にも多発しているし、とくに今年は夏から野生動物の出没が増えているところから、郊外に出かけることの多いという人は装着しておきたいところである。

鹿や猪、狸やキツネなどとの衝突は年々増えている。交通ルールとか通用しない相手なので対策はクルマ側が立てるしかない
以前紹介した一体式の鹿ソニック。専用ステーでこのように装着。通常はクルマの配線から電源を取るが、9V乾電池でも駆動できるのでキャンプではクルマから外してサイトまわりの鹿除けとしても使える
写真の位置への取り付けは鹿ソニックがバンパーより飛び出るので、保安基準的な問題がないか軽自動車検査協会に相談しにいった。結果はエアロパーツと同様の扱いになるので問題ないとのことだった。ただ、取り付けにあたって突起物扱いになるネジ(蝶ネジなど)を使うとNGだし、検査員によっては違うジャッジになることもあるそうなので、写真のように付ける際は最寄りの軽自動車検査協会へ相談することを勧める
追加発売されたセパレート式の鹿ソニック。スピーカーは2個でサイズは縦54mm、横126mm、厚み24mm。アンプ部は縦90mm、横44mm、厚み25mm。価格は2万8600円
スピーカーは防水タイプなのでクルマの前面に取り付けても問題ない。筐体が黒いので目立たないのもいい
アンプ部はエンジンルームにセット。電源配線も付属していてアクセサリー電源線への接続とマイナスアースを落とすだけ
一体式との比較。一体式も併売しているが構成部品の一部が欠品しているため在庫切れが続いている状態。セパレート式はふつうに購入できる

 さて、2年以上続いたN-VAN連載ですが、車検の模様を紹介するなど、新型車を使った連載記事としてお伝えしたいこともほぼやり終えた感じでもあるので、今回で締めさせていただくことにします。

 とはいえ連載が終わったからと言ってN-VANを手放すわけではなくこれからも仕事や遊びで乗っていくので、どこかで見かけたときはお声がけして下さい。

 では、長い間、N-VAN連載記事にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

深田昌之