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ノート C-Gear、モード・プレミア、NISMO。オーテックが放つ「ノート e-POWER」の3つの世界観

クロスオーバーSUVスタイルのノート C-Gear、上質さを高めたモード・プレミア、走りを極めたNISMO。あなたならどれを選ぶ?

 2017年度のコンパクトセグメントで販売台数No.1となった日産自動車「ノート」。その勢いは時折ニュースとなっているからご存じの方も多いだろう。

 エンジンを発電機としてモーターの力で走るe-POWERが登場してからというもの、ノートは息を吹き返したように売れ、今ではおよそ7割がe-POWERだそうだ。こうした勢力拡大を後押ししているのが、今回取り上げる特別仕様車の存在だ。街にノートが溢れるからこそ、人と違った仕様が欲しくなるのは人情というもの。

 今回は、そんな心理をうまく突いたオーテックジャパンが手掛ける3台を見てみることにする。果たしてディーラーで購入可能なモディファイドカーは、一体どんな世界を提供してくれるのか? そしてノーマルとの違いはいかなるものなのかを検証してみたい。

走行性能を高める「Touring Package」

オーテックジャパンがリリースするノート e-POWERシリーズ3台の魅力を、モータージャーナリストの橋本洋平氏が解説

 まず、今回持ち込んだ3台に共通していることは、走りの部分においてアドバンテージが得られるノート C-Gear、モード・プレミアのe-POWERにオプション設定される「Touring Package」を装着(NISMOは同等の装備を標準採用)していることだ。これは専用アルミホイールを16インチとし、それに合わせた専用のサスペンション、電動パワーステアリングのチューニング、ボディ補強(フロントクロスバー、フロント&リアサスペンションメンバーステー、センタートンネルステー、テールクロスバー)、そしてファインレスポンスVCMを搭載。結果として、ベーシックモデルとは違うスポーティな走りを実現できているところがポイントとなる。

 走り出した瞬間から確かな手応えがステアリングに伝わり、シッカリ感はかなり高く、路面状況がきちんとダイレクトに伝わってくることもあり、安心感が増しているところは好感触。高速道路やワインディングにおいてもフワついた感覚はなく、車体がフラットに突き進むところもよい。これがコンパクトカーのノートなのかと疑いたくなるほどの質感が備わっているのだ。

 一方、ファインレスポンスVCMによってよりリニアにトルクが反応するようになり、力強さが増したこともTouring Packageの特徴の1つである。e-POWERならではの、どの速度レンジにおいても反応のよい世界観を存分に楽しめるのはこの仕様なのかもしれない。Sモードにおける反応の爽快感は格別だ。エコだけに終わっていないところが面白い。

 Touring Packageはオーテックジャパン扱いのモデルに対して装着することが可能なのだが、こうした走りの特徴が評判らしく、3割ものユーザーがこれをチョイスするのだとか。それも十分に頷けるところだ。

都会でもアウトドアでも似合うクロスオーバーSUVスタイルの「ノート C-Gear」

ノートの特別仕様車「ノート C-Gear」

 こうした前提がありつつ、3タイプの全く違うクルマが準備されている用意周到さには恐れ入る。

 なかでも最も新しい「ノート C-Gear(シーギア)」は、都会でもアウトドアでも似合うクロスオーバーSUVの世界観を狙っている。ダークメタリックのエアロやフェンダーアーチを備えることで、同じ車高ながらもちょっと腰高に見えるところが面白い。SUVテイストのホイールデザインも独自の世界観を後押ししている。

2017年10月に発表されたノートの特別仕様車 ノート C-Gear。撮影車は「e-POWER X C-Gear」(223万5600円)で、ノートのアクティブ感を強調する内外装を採用。ボディサイズは4140×1705×1535mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2600mm。車両重量は1230kg。ノート C-Gearではガソリン仕様も用意されるが、販売構成比ではe-POWERが約85%と圧倒的。また、「Touring Package」装着車が全体の約30%を占め、こちらも高い数値を示している
エクステリアでは車体下部にダークメタリック色のスタイリングガード(フロント/サイド/リア)を採用するとともに、ホイールアーチガーニッシュを装着。これに加え、ダーククロムのフロントグリルやブラックのルーフモールを採用してSUVテイストを強調する一方で、フロントのフォグランプフィニッシャーにライトグリーンの差し色を用いてハイテク感も与えているのが特徴
ノート C-Gearの標準モデルでは専用デザインのグロスブラック15インチアルミホイールが標準装備されるが、撮影車はオプションの「Touring Package」(8万6400円)に含まれるグロスブラック16インチアルミホイール(タイヤは3モデルともに195/55 R16サイズの横浜ゴム「DNA S.drive」)を装備
パワートレーンは直列3気筒DOHC 1.2リッター「HR12DE」型エンジンにEM57モーターの組み合わせで、モーターの最高出力&最大トルクは標準グレードのe-POWERシリーズと共通の80kW(109PS)/3008-10000rpm、254N・m(25.9kgf・m)/0-3008rpm。ただし、今回の3モデルは共通で専用チューニングコンピュータ(ファインレスポンスVCM)を装着しており、ドライブモードの「ノーマルモード」「Sモード」では独自の鋭いアクセルレスポンスや強い回生力を実現している。なお、クリープについてはベース車と異なり「Sモード」でも発生する設定

 それはインテリアに対しても言えることで、同じ造形ながらもグリーンとシルバーを配した専用シートクロスやフロアマットによって、ずいぶんと明るいイメージにシフトしている感覚があるのだ。これにオプションの防水ラゲッジマットを装着してアウトドアに向かえば、きっと楽しみは広がるだろう。思わず遊びに行きたくなる、そんな仕立て方が実に上手い。

ブラックを基調にしたノート C-Gearのインテリア。なお、ベース車のノートは2017年9月に仕様向上が図られており、高速道路などを使った長距離ドライブ時にドライバーの運転負荷を低減する「インテリジェントクルーズコントロール」、意図せずに走行車線から逸脱しそうなときに車線内に戻るステアリング操作を支援する「インテリジェントLI(車線逸脱防止支援システム)」を新たに採用して利便性や安全性を向上。撮影車のステアリングにはインテリジェントクルーズコントロールの設定ボタンが備わっている
インテリアではシート表皮の一部をグリーンにした専用シートクロス(トリコット)を採用してアウトドアテイストを表現。オプション品として日産オリジナルナビゲーション(MM317D-W)、専用プラスチックバイザー(ストライプ付)、ライトグリーンのパイピングを採用した専用デュアルカーペット(フロアカーペット消臭機能付)、インテリジェントルームミラーなどを装着

上質さを感じる「モード・プレミア」

内外装の高級感を高めたノートのカスタムカー「モード・プレミア」

 モード・プレミアは、コンパクトクラスながらも上質さを諦めない仕様として評判の1台だ。ワイド感も生み出すメタル調フィニッシュの専用グリル&バンパーは、クラスを超えた存在感を実現。スエード調のコンビシートはインテリアに華やかさと質感を共に引き上げるスパイスとなっている。見ても触れてもコンパクトクラスとは思えない造り込みが光っている。

ノートに上質な個性を求めるユーザーに向けて開発されたモード・プレミア(230万400円)。ボディサイズは4130×1695×1520mm(全長×全幅×全高)。車両重量は1230kg。2017年9月のベース車の仕様向上に合わせてモード・プレミアも同様の変更を受けているが、今回の撮影車は仕様向上前のモデル
エクステリアでは専用デザインのフロントマスクや切削光輝の専用16インチアルミホイールを採用し、フロントグリル、ドアミラー、リアバンパーフィニッシャーといった要所にアクセントとしてメタル調塗装を施した。モード・プレミアもノート C-Gear同様にガソリン仕様も用意されるが、こちらも約90%のユーザーがe-POWERを選択。「Touring Package」装着車は全体の約30%を占めているという

 今回はグレージュとブラウンの組み合わせだったが、ブラックとブラウンのタイプもラインアップ。モード・プレミアの中でもインテリアの色調を選択することができるとは実に贅沢である。アームレストを備えたことで、優雅に乗れるところもこのグレードならではの世界観だろう。

グレージュ/ブラウンのコンビシートを備えるモード・プレミア専用インテリア。ブラックとダークレッドのコンビネーションとなる本革巻3本スポークステアリングも専用品

走りはピカイチのNISMO仕様

ノートにNISMO専用チューニングを施した「e-POWER NISMO」

 そして最後はNISMO仕様だ。SUPER GTをはじめ、数々のモータースポーツで得たノウハウを投入したというエアロパーツを身にまとい、これまた独自の世界観を実現しているこのクルマ。フルバンパ―で交換されたことにより、空気抵抗を増やすことなく、効率よくダウンフォースを発生させているらしい。

e-POWER NISMO(246万4560円)のボディサイズは4165×1695×1530mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2600mm。車両重量は1250kgと、実は3モデルのうち1番重い
e-POWER NISMOでは専用装備となるフロントバンパー、16インチアルミホイール、エキゾーストテールエンド、サスペンション、フロント強化スタビライザーなどを装備。また、フロントクロスバー、フロントサスペンションメンバーステー(トンネルステー)、リアサスペンションメンバーステー、トンネルステー、リアクロスバーによってボディ補強も実施しており、本格的なチューニングによってNISMOモデルらしい高い走行性能を手にしている

 コンパクトクラスでダウンフォースがそれほど必要なのかと首を傾げるところもあるのだが、実際にワインディングを走ってほかの2台と比較すると、同じシャシーを有しているにも関わらず、NISMOは明らかに安定性が高いのだ。フロントの操舵は濡れた路面であっても最後まで接地を確保。リアについても接地感が高い。おかげで安心感はワンランク上に位置しているといっていい。

 スエード調スポーツシートが生み出すホールド感もなかなか。どこを見てもルックスだけに終わらず、実のあるチューニングが施されていることは明らかだった。

ブラックを基調に、各所に赤色のアクセントを与えるe-POWER NISMOのインテリア。本革とアルカンターラのコンビネーションとなる3本スポークステアリング(レッドセンターマーク、レッドステッチ、ガンメタクローム加飾付)、赤い加飾が与えられるシフトまわり、専用ファインビジョンメーター(nismoロゴ入り)、スエード調スポーツシート(前席)、アルミペダルなどが専用装備となる

 このように、オーテックジャパンが仕立てた3台は、まるで異なる世界観を構築できていることは明らかだった。同じクルマ、そして同じ仕様を基本部分では使いながらも、ここまで違う仕様が造れるものなのかと感心するばかりだ。ベースモデルとは全く異なるこの3台があるのなら、ノート e-POWERはさらに販売台数を伸ばすことになるだろう。