インプレッション

日産「ノート e-POWER」(ワンペダルジムカーナ)

実力で勝ち取った販売首位

 2016年11月の月間販売台数において、1万5784台を販売した日産自動車「ノート」が、軽自動車を含む国内新車販売台数ランキングで首位になったのはすでに報じられているとおり。ノートとしては初の快挙。日産が同ランキングで首位になるのは「サニー」以来、実に30年ぶりのことであり、日産社内も大いに活気づいているそうだ。

 このニュースを聞いて、まず日産ほどのメーカーが約30年も首位から遠ざかっていたという事実に驚いた。そして、いくら新たに「e-POWER」が追加されたとはいえ、登場から4年あまりが経過して新鮮味の薄れたクルマが、トヨタ自動車の「プリウス」や「アクア」といった強敵に実力で勝ってトップに立ったことに驚いた。これは大したものだ。

 e-POWERはノートの75%程度の販売比率にまで達しており、実のところ、ちゃんと仕組みを理解して買っているかどうかは微妙な部分もあるが、燃費の公表値も十分に魅力的であるのはもちろん、とにかく乗ってみて即決というケースが非常に多いらしい。このクルマを日産が「ひと踏み惚れ」と表現する強力な発進加速が多くの人を魅了しているというのは、たしかに納得させられる思いだ。

 そんなノート e-POWERならではの企画として、「ワンペダルジムカーナ試乗会」が大磯ロングビーチの大駐車場で開催されたので、筆者も参加してきた。

新感覚のワンペダル走行

 このクルマのパワートレーンの仕組みについては、Car Watch読者ならすでにご存じことと思うが、大まかに言うと電気自動車(EV)「リーフ」と同じ電気モーターに発電専用のガソリンエンジンと容量の小さなバッテリーを組み合わせている。駆動力はすべて電気モーターによるもので、バッテリーの残量や車速に応じてエンジンを動かして発電する。減速時には回生ブレーキにより発電した電力をバッテリーに蓄える。外部電力からの充電は不要で、給油のみで走ることができるのが特徴だ。

 さらにノート e-POWERは、電動パワートレーンの強みを活かした新感覚のドライビングを身に着けている。ドライブモードを「ノーマル」「S」「ECO」の3段階からセレクトでき、SモードとECOモードではアクセルペダルを戻したときの減速が強くなる設定で(ノーマルモードの「B」レンジでも、やや強めに減速する)、これによりアクセルペダルの操作を主体に、あまりブレーキペダルに踏みかえることなく乗れてしまうという特技を持っているのだ。

ドライブモードの種類
ドライブモードシフト加速アクセルOFF時の減速(回生の強さ)
ノーマルDノーマル普通
Bノーマルやや強い
SDスポーティ強い
ECODエコ強い
ジムカーナの試乗車として用意されたノート e-POWER X(195万9120円)。直列3気筒DOHC 1.2リッター「HR12DE」エンジンを発電専用に搭載し、EV(電気自動車)「リーフ」の開発で培われた「e-パワートレーン」のインバーターとモーターを流用して前輪を駆動する。JC08モード燃費は34.0km/Lをマークする。ボディサイズは4100×1695×1520mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2600mm
タイヤは185/65 R15サイズのブリヂストン「B250」を装着
今回のワンペダルジムカーナでは、フットブレーキを踏むごとに2秒追加というルールが課せられた。ノート e-POWERはアクセルOFF時にもブレーキランプが点灯するため、フットブレーキを踏んだ際にはパトランプが点灯する仕組みになっていた
ドライブモードは「ノーマル」「S」「ECO」の3段階を設定。ジムカーナでは推奨の「S」モードを選択
VDCはOFFの設定で勝負

 コースはクランク、スラローム、8の字旋回、クランクときて、最後に枠内で止まってゴールというもの。パイロンタッチは2秒加算、ブレーキを踏んだら5秒加算で、ブレーキを踏むとルーフ上に設置されたパトランプが点灯する。サイドブレーキは使用禁止。練習走行を4回行なったのち、本番を2回走って速いほうのタイムが正式結果となる。

 ゴールのある最終セクションは、枠を超えた場合、1m間隔で設置されたパイロンを超えるたびに2秒ずつ加算されていくというルール。2回目のクランクをクリア後、ブレーキを使わずに短い区間で完全停止するのは見るからに難しそうで、どのくらい車速を出して、どのあたりでアクセルをOFFにするかがキモになりそうだ。

コース図

練習ではまずまずだったが……

 慣熟歩行をしたのち練習走行へ。ドライブモードはもちろん推奨のSモードで。VDCについては自由で、今回のコースならON/OFFでの差はあまりないとのこと。歩いたときに「ちょっと狭いな」と感じたコースはけっこう狭くて、車両感覚も問われる。練習走行時も参考までにタイムを計測していたのだが、1回目は慎重に様子見し、続く2回目でちょっと頑張り、この時点で最速の42秒台をマーク。3回目と4回目の走行でもまずまずのタイムだったのだが、パイロンタッチしてしまいタイム更新はならず。11人が走行した中で、筆者の2回目がベストタイムだった模様。本番で上手くまとめれば40秒台は行けるかも!?

まずはコースを覚えるため慣熟歩行
練習走行に望む筆者。このときまでは余裕を感じられました

 ところが迎えた本番でやってもうた……。なんと、2回とも最後のゴール地点で派手にオーバーランしてしまったのだ。練習走行のときは、そこでは1度もミスすることなくできていたのに。本番に弱いことは重々自覚しているが、これほどまでとは……。運営スタッフの女性が「もしペナルティがなかったら(この枠の)トップタイムでしたよ!」となぐさめてくれたのが、さらなる悲哀を誘う(笑)。結局、翌日も含め2日間で41人の参加者がチャレンジした中で、なんと最下位。2回とも大チョンボしたなんていう人は筆者だけだったようだ。

練習でトップタイムを叩きだす実力を本番でも発揮! これはタイムにも期待がかかる走り……かと思いきや
ゴールで大オーバー。大きなパイロンを超えたのち、1m間隔で小さなパイロンが設置される。この小さなパイロンを超えるたびに2秒ずつ加算されていくのがルール。パイロンタッチもあり、いかに本番に弱いかを露呈した瞬間だったのでした

 というわけだが、こうしてワンペダルでジムカーナを楽しめるというのは、まさしくこのクルマならでは。発進の力強さや走りのスムーズさも体感できたし、このクルマをより上手く走らせるコツも、本番は失敗したけれど掴むことができるような気がする。そんなノート e-POWER、日産の販売店には試乗車も充実しているし、12月からはレンタカーにも導入されていて、当面はお得な料金設定で借りることもできる。この新感覚のドライビングを、ぜひ多くの人に味わってほしいと思う。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:原田 淳