トピック

絶妙な乗り心地、高い静粛性。横浜ゴムのSUV向けタイヤ「ジオランダー CV G058」の魅力

モータージャーナリストの岡本幸一郎氏がクロスオーバーSUV向けタイヤ「ジオランダー CV G058(シーブイ・ジーゼロゴーハチ)」を試した

間口の広いグランドツーリングタイヤ

 ヨコハマタイヤのSUV向けタイヤ「GEOLANDAR(ジオランダー)」ブランドには、いまや悪路走破性を極めたものから、オンロードでの快適性を重視したものまで、実に7つものラインアップがある。

 今回取り上げる「ジオランダー CV G058(以下「G058」)」は、2012年に登場した「ジオランダー SUV」の後継となる街中での走行に対応しつつ快適なロングドライブにも応えるよう進化させたクロスオーバーSUV向けのグランドツーリングタイヤだ。

 このところますますSUV人気が高まり、とくに顕著に伸びている小型~中型のクロスオーバーSUVの中では、アウトドアユースなどのライフスタイルを訴求する車種も増えており、OEM装着タイヤもサマータイヤとM+Sが混在している。

 今回、同時に発表された新商品「ブルーアース-XT AE61」とも少なからずキャラクターがかぶるところだが、G058はM+S規格のため溝が深く、耐久性に優れており、ラベリング制度の対象外となることが大きな違いだ。

 ジオランダーの中での位置付けは、同じくオンロード指向の商品として「ジオランダー X-CV」があるが、そちらが18インチ~22インチというパフォーマンスクロスオーバーSUV向けのラインアップなのに対し、G058は15インチ~20インチと一般的なクロスオーバーSUV向けのサイズラインアップ。特に郊外へ遠出するユーザーに向けて温度、気候、路面への対応力や経済性を重視したという。

長所を伸ばし短所を克服

今回試したジオランダー CV G058は、2012年に発売した「ジオランダー SUV」の後継モデル。街中での走行に対応しつつ、快適なロングドライブにも応えるよう進化させたグランドツーリングタイヤだ

 G058は、M+Sタイヤの強みである耐摩耗性や浅雪での性能を確保する一方で、M+Sタイヤが不得手とする静粛性や乗り心地を大幅に改善するとともに、ウェット性能を大きく向上させるなど、トータルでの性能を高めたとしている。

 そのためにいくつもの技術を搭載している。まず、M+S性能の軸となる部分については、先進のシリカ技術を駆使した専用コンパウンドにより低温でもやわらかさを維持し、ウェットや降雪を含むさまざまな路面状況下での安定した走りを実現するとともに、転がり抵抗と摩耗性能を両立している。

 また、新開発のトレッドパターンには、最適に配置したサイプと溝によりエッジ効果を高め、滑りやすい路面でのトラクションを確保する「サイプベースパターン」、路面を問わない優れたトラクションと耐ハイドロプレーニング性能を両立する「4コンビネーショングルーブ」、3Dサイプによりブロックの倒れ込みを抑制しドライ性能と耐偏摩耗性能を高めるとともに、ウェット路面や急な降雪時でも優れたトラクションを発揮する「2-3Dコンビネーションサイプ」、各ブロック列をずらすことでピッチノイズを分散させ耳障りな音域のパターンノイズを低減する「5ピッチ・バリエーション」など、舗装路でのドライバビリティにも寄与する多くの特徴が与えられている。

 さらに、接地面圧が均一になるよう断面形状を最適化した新開発のマウンド・プロファイルにより幅広でフラットな接地形状を実現し、トラクションと耐摩耗性能および耐偏摩耗性能を確保した。

ジオランダー CV G058の発売サイズは165/60R15 77H~245/50R20 102Vの32サイズ
ジオランダー CV G058では、トレッドパターンにサイプによるエッジ効果を高めた独自の「サイプベースパターン」をはじめ、耐偏摩耗性能に寄与するとともにウェット路面や急な降雪時でも優れたトラクションを発揮する「2-3Dコンビネーションサイプ」、優れたトラクションと耐ハイドロプレーニング性能を両立させた「4コンビネーショングルーブ」などを採用。さらに耳障りな音域のパターンノイズを低減する「5ピッチ・バリエーション」、ウェットや降雪時など低温域の路面を含むさまざまな路面状況で安定感ある走りに貢献する専用コンパウンドなどを採用する
安全性や静粛性といったハイウェイテレーンタイヤとしての基本性能を高めながら、耐摩耗性能や低燃費性能にも配慮してトータル性能を向上させ、さらに急な降雪時でも走行可能な「M+S(マッド&スノー)」規格に対応

 これらにより、従来品のG055と比較してウェットでの制動性能と操縦安定性がそれぞれ12%、13%向上したほか、50km/h時のロードノイズを34%低減、80km/h時のパターンノイズを9%低減(ともに騒音エネルギー低減率)、突起乗り越し時のタイヤ上下軸力を7%低減することができたという。

ソフトな乗り心地と際立つ静粛性

 あえてブルーアースと同時にジオランダーブランドからM+Sとしてリリースしたからには、それなりにM+Sとして想定するシチュエーションは走れて当然という前提で、今回はオンロードを主体に試乗した。装着車両はトヨタ「RAV4」の、トルクベクタリング機構を持つアドベンチャーではなく標準グレード。純正サイズの225/65R17 102Hゆえ、やや高めのハイトとなる。

 現代的でスタイリッシュなルックスは、舗装路が主体であることは明らかながらも、ジオランダーの一員としての面影も見て取れる。見た目だけで言うならば、たとえばRAV4や日産「エクストレイル」、三菱自動車「アウトランダー」などにはG058が似合うのに対し、マツダ「CX-5」やトヨタ「ハリアー」あたりの都市型ならブルーアースのほうが似合いそう、といったニュアンスとご理解いただければよいかと思う。

 ブロックを触ってみたところ、見た目からイメージするよりも柔らかかった。その柔らかさも効いて、まず都内の一般道を走った第一印象としては、思ったよりもずっと快適であった。ソフトな乗り心地に加えて、静粛性にも優れることがうかがえた。

 高速道路でも乗り心地のよい印象は変わらず。それでいて、これだけ乗り心地がよいともっとフラつくのではないかと予想していたのにそんなこともない。なにより際立って感じられたのが静粛性の高さだ。やはり34%も低減したというロードノイズの小ささはハンパではない。車速を上げたときのサー音もあまり気にならない。ジオランダーとしての性能を持ちながら、これほど乗り心地がよく静かで快適だったら申し分ない。

 さらには、路面の継ぎ目を乗り越えたときの衝撃と音の小ささも印象的だった。よい意味でM+Sらしい当たりの柔らかさがあり、路面からの入力を巧く包み込んでくれるかのような優しさを感じる。

 RAV4のクルマ自体の完成度の高さも手伝ってのことだろうが、動きは穏やかながら微舵の領域からリニアな応答があり、ステアリングを戻した際のヨーの収束も揺り戻しが小さく、穏やかでも動きには一体感があるので、修正舵が少なくてすむ。おかげで意のままに操れてリラックスして乗れる。

 ワインディングを走っても、しなやかな中にもしっかり感があり、ほどよくマイルドな動きも心地よく、走りやすいことに変わりはない。さらには小石や砂の浮いた未舗装路に行くと、さすがはジオランダー。サマータイヤならもっとガツガツ来そうな路面でも入力が丸められて衝撃があまり伝わってこないし、やはりサマータイヤとは少し異なるグリップを身につけている。

 このようにG058は、M+S規格ながらM+Sの既成概念を打破する快適性を実現していた。休日には少し羽を伸ばして未舗装路も走るような使い方をするユーザーにとって、この絶妙な乗り心地や優れた静粛性は大きな恩恵をもたらすことに違いない。