レビュー
【タイヤレビュー】M+Sを感じさせない静粛性で重量級ボディを受け止める横浜ゴムのSUV用新型タイヤ「ジオランダー X-CV」
“SUV本来の性能”を見つめ直したタイヤ
2019年1月29日 20:48
横浜ゴムが新たにSUV向けに発売する「ジオランダー X-CV」は、ハイパフォーマンスSUVをターゲットにしたタイヤだ。17サイズが今回ラインアップされるが、それらは18インチから22インチというかなり大径なものばかり。それをご覧いただいてもご理解いただけるだろうが、モノコックボディを採用するかなりハイパワーなクルマを視野に入れていることが分かる。だが、近年このタイプのSUVはスポーツカー顔負けの“走り”をターゲットにしたものが多い。現に横浜ゴムではそれらに対して純正装着をしている経験もあるが、銘柄は「ADVAN sport V105」ばかり。スポーツカー顔負けの……という世界は、タイヤが支えていたという側面もあったのだろう。
ジオランダー X-CVはそこを狙うタイヤではなく、あくまで快適性を重視。ただし、安全性を確保しつつというコンセプトだ。特徴的なのはM+Sとすることで、SUVらしくマッド&スノーもシッカリと抑えているところだろう。オンロードだけではなく、たまの悪路もきちんと受け止め、さらにドライ路面では乗り心地や音にも拘ったというこのタイヤ。話を聞けばかなりバランスはよさそうだが、果たしてそんな世界は達成できるのか?
そんな目標を達成するために搭載されたコンパウンドは、スノーやウェットでもきちんと作動し、さらにシリカを分散させるポリマーを配合したニュータイプを採用。シリカはこのタイプにしてはかなり増量しているようだ。トレッドパターンを見ればM+Sらしい細かな溝が刻まれているが、左右非対称パターンとすることで走りを確保。リブやショルダーに備わる溝を微妙にずらす「5ピッチ・バリエーション」を搭載することで、各溝が発する音を打ち消すようにも設計されている。さらに、トレッド下のケース部分には「2層ナイロンフルカバー」を奢っている。溝やケースに備えた技術が静けさに対する答えといっていい。
ジオランダー X-CVは“SUV本来の性能”を見つめ直したタイヤ
そんなジオランダー X-CVを箱根のワインディングで試乗した。クルマはメルセデス・ベンツの「GLE 350d」。タイヤサイズは265/45 R20 108Wである。走り始めてまず感じることは、たしかにM+Sであることを感じさせない静粛性だった。パターンノイズから高音のシャー音は出ず快適だ。まさにコンセプト通りといったところだろう。驚いたのはシッカリ感がかなり高かったことだ。ステアリングの操舵に対する反力がきちんと存在し、コーナーリングにおいても揺らぎなくこらえてくれる印象がある。GLEの巨体であってもきちんと受け止めたその走りは、もはやM+Sとは思えない世界観と言っていいだろう。もちろん、スポーツカーのようにコーナーに飛び込めば頼りなさもあるのだが、そこまで使わない一般的な方々には十分なレベル。これで悪路もOKとならば許せるだろう。
もはやSUVであることを忘れてしまったかに思えるクルマやタイヤが多い中、ジオランダー X-CVはSUV本来の性能を見つめ直したということなのだろう。オンロード指向に偏り過ぎたSUVに疑問を持つ人にオススメしたい。