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横浜ゴム、人気のクロスオーバーSUV向けタイヤなども登場した新製品発表会レポート
突然の降雪にも対応可能なオールシーズンタイヤ「BluEarth-4S AW21」も展示
2019年12月6日 00:00
- 2019年12月5日 開催
横浜ゴムは12月5日、同日に発表したクロスオーバーSUV向けタイヤの新製品「BluEarth-XT AE61」「GEOLANDAR CV G058」などの商品概要を説明し、実車に装着して製品展示する新商品発表会を開催した。
多様化するクロスオーバーSUVのニーズに2つの新製品で対応
発表会では個々のタイヤの解説に先立ち、横浜ゴム 執行役員 タイヤ企画本部長 結城正博氏が新製品を投入する消費財商品戦略などについて説明。
横浜ゴムでは2018年度~2020年度の中期経営計画「GD2020(グランドデザイン2020)」を展開しており、消費財部門では商品戦略として「プレミアムカー戦略」「ホビータイヤ戦略」「ウィンタータイヤ戦略」「お客様とのコミュニケーション活性化」の4点を柱としており、2020年1月から本格販売を開始する乗用車用オールシーズンタイヤのBluEarth-4S AW21はウィンタータイヤ戦略にプラスする新しいカテゴリーになると語った。
2種類の新タイヤを投入するクロスオーバーSUVのジャンルについては、SUVと言えば以前は車体が大きく「ちょっと特殊なクルマ」と認識されていたが、昨今ではほとんどのメーカーで市街地走行も視野に入れたクロスオーバーSUVの新型モデルを積極的に展開しており、さまざまなSUVを目にするようになったと指摘。そのように拡大を続けているクロスオーバーSUVではユーザーの使い方や要望も多様化しており、横浜ゴムとしてサマータイヤのBluEarth-XT AE61、M+SタイヤのGEOLANDAR CV G058という2つの新製品を提供。幅広いユーザーニーズを満たすべく提案していくとした。
最後に結城氏は「私たち横浜ゴムはクルマを愛しています。そしてクルマを楽しむことが好きです。しかし、皆さんもご存じのとおり、日本に限らず若者のクルマ離れがずいぶん前から言われています。さらに自動車業界では100年に1度の大変革期にあり、クルマのあり方、クルマの存在自体が大きく変わろうとしています。当然われわれもその波にきちんと乗って対応していかなければならないと思っています」。
「ただ、そんな状況ではありますが、やはりクルマが好きな人が、以前とは変わっているかもしれませんが、今後もいろいろな形で存在していくと信じております。そんなクルマ好きな皆さんに、私たちはきちんと応えていきたい。われわれが生み出す商品で喜んでもらいたい。そのように考えて、今回は新たに6つの商品を展開するということです。今後もわれわれは、クルマにまつわる世界をもっと楽しくする。そんなことを常に頭に置きながら、皆さんに知恵や力をお借りしながら製品開発、情報発信をこれからも真摯にやっていきたいと思います」と締めくくった。
ウェット制動、ウェット円旋回は従来品から16%性能向上
クロスオーバーSUV向けサマータイヤであるBluEarth-XT AE61の商品解説は、横浜ゴム タイヤ企画本部 消費財製品企画部 製品企画1グループ グループリーダー 小畑桓平氏が担当。
小畑氏は市場動向の分析によって小型~中型クロスオーバーSUVの販売台数が大きく増えていることを新製品開発の背景として紹介。クロスオーバーSUVは通勤やショッピング、家族の送迎、ドライブなどが用途の中心となっており、SUVといってもオンロード走行が主体になっていると説明。これを受け、BluEarth-XT AE61では市街地や高速道路での使用にベストマッチしたタイヤとして開発したという。
小畑氏は自身でもテストコースでBluEarth-XT AE61とGEOLANDAR CV G058の乗り比べを行ない、サマータイヤであるBluEarth-XT AE61はステアリング操作に対するレスポンスがよく、スポーティなタイヤとの印象、GEOLANDAR CV G058はコンフォートテイストのタイヤとの印象を受けたと説明した。
商品特長は「思い通りに走るシャープなハンドリング性能」「SUVの車内に静かな空間を提供」「偏摩耗に強く、長く使える」「低燃費に貢献」「濡れた路面でもしっかり止まるウェット最高グレードの安全性」の5点と説明。国内タイヤラベリング制度では転がり抵抗性能「A」、ウェットグリップ性能「a」を獲得しているという。
トレッドパターンでは専用開発の非対称パターンを採用。すべてのラググルーブとサイプを非貫通形状として、高い剛性による安定感のある走り、静粛性の向上などを果たしている。
静粛性の向上では、トレッド中央にある「トリプルセンターリブ」のイン側にエッジを設定し、車外通過音を抑制する「サイレントエッジグルーブ」、音圧シミュレーションを使って5種類のピッチ・バリエーションを最適配置し、パターンノイズの発生を抑える「5ピッチバリエーション」などの技術を投入。ウェットグリップは「4ストレートグルーブ」の4本の主溝で高い排水性を実現する。
タイヤ形状ではタイヤ全体に加え、リブやブロックなどの形状を中央部分がわずかに高い「マウンド・プロファイル」として接地圧の均一化を推進。重心が高く、重量も重めなSUVに装着しても偏摩耗を起こしにくいようにしている。
これらにより、BluEarth-XT AE61はSUV向けタイヤの「GEOLANDAR SUV G055」と比較して全面的な性能向上を実現。中でもウェット制動、ウェット円旋回で16%の性能向上となっている。
ドライグリップをキープしながらロードノイズの発生を34%低減
クロスオーバーSUV向けのグランドツーリングタイヤであるGEOLANDAR CV G058の商品解説は、横浜ゴム タイヤ企画本部 消費財製品企画部 グローバルSUVタスク タスクリーダー 小島弘行氏が担当。
小島氏は小畑氏の説明同様、クロスオーバーSUVの販売台数が近年増加しており、2019年も多くのメーカーから新型車が市場投入され、さらなる増加が期待できると説明。横浜ゴムがクロスオーバーSUVの新車装着タイヤとして供給しているタイヤでは、サマータイヤだけでなくM+S(マッド&スノー)タイヤも混在。まだ明確な区分けが行なわれていないと語った。
横浜ゴムではサマータイヤとM+Sタイヤの使い分けとして、サマータイヤは市街地走行やハンドリング性能を重視している人、M+Sタイヤは郊外まで出かけることも多く、気候や路面状況への対応力を必要とする人、またはクルマの純正装着タイヤに準拠するといったスタイルを想定していると小島氏は解説。また、クロスオーバーSUVユーザーに調査したところ、タイヤに求める性能はセダンやミニバンなどと大きく変わらず、雨天時のブレーキング性能や静粛性、燃費、乗り心地、耐摩耗性などが上位を占めていると説明。その一方で、降雪地域では4WD性能や車高の高さなどをによる走破性を利用目的として挙げるユーザーもいると紹介した。
クロスオーバーSUVのユーザーでは「M+Sタイヤを買わない」という回答もあり、その理由としては静粛性を問題点として指摘する回答が寄せられ、これを受けてGEOLANDAR CV G058の開発では、「M+Sタイヤの弱みであるノイズ性能を改善、乗り心地を向上」「安全性能(ウェット性能)を向上」「長所である耐摩耗性、浅雪での性能確保」の3点を設定して取り組んだ。
具体的な投入技術では、ドライ、ウェット、スノーといった多彩な路面状況に対応するため、高配合シリカとポリマーを組み合わせる「新ブレンドポリマー」を採用。グリップ性能を高めつつ、耐摩耗性や転がり抵抗といった相反関係にある性能も同時に引き上げている。
トレッドパターンではサイプと溝の配置を最適化して、滑りやすい路面でのグリップ性能を向上。サイプによる分割を増やしても路面からの入力によってブロックが倒れ込むことを抑制するため、ブロックが相互に支え合う「3Dサイプ」を採用している。ノイズ低減ではBluEarth-XT AE61でも採用する5ピッチバリエーションを使い、パターンノイズを低減。また、同じくタイヤ形状にマウンド・プロファイルを使って接地形状の最適化を推し進めている。
これらの技術の導入で、ドライグリップや転がり抵抗といった部分では従来品のGEOLANDAR SUV G055と同等の性能を維持しつつ、ロードノイズの発生は34%低減を実現。このほかパターンノイズは9%低減、ウェット制動距離は12%短縮、ウェット操縦安定性は13%向上としている。
「冬用タイヤ規制」でもタイヤチェーン不要で走行可能
このほかに説明会では、2018年11月から一部地域で試行販売を行なってきた乗用車用オールシーズンタイヤ「BluEarth-4S AW21(ブルーアース・フォーエス・エーダブリュー・ニーイチ)」についても商品説明を実施。
2020年1月9日から日本国内での本格販売が開始されるBluEarth-4S AW21では、センター部分の主溝から左右後方側に放射状に広がる「V字ダイバージェントグルーブ」を採用する特徴的なトレッドパターンを使用。サマータイヤである「BluEarth-GT AE51」と比較して、溝とサイプのエッジ量が67%増となっており、排水性や排雪性を向上。また、V字ダイバージェントグルーブと逆方向に伸びる「クロスグルーブ」の交差溝で雪柱せん断力を発生させ、雪上でのグリップ力を手に入れる。
コンパウンドでは、作動温度帯の異なる「ウェットグリップポリマー」と「スノーグリップポリマー」の2種類をバランスよく配合するほか、配合するシリカを分散させて低温度下でもゴムのしなやかさをキープし、雪上性能やウェット性能を高める「末端変性ポリマー」を採用。また、ウェット性能を高める「マイクロシリカ」も投入している。
これらの技術により、BluEarth-4S AW21ではドライ路面から圧雪まで幅広い路面状況での走行を可能としており、2018年12月から国土交通省によってサマータイヤによる走行が規制されることになった「冬用タイヤ規制」の状態でも、タイヤチェーンなどを装着する必要なく走行可能としている。
もちろん、圧雪路や氷上ではスタッドレスタイヤのグリップ力にはおよばず、雪上走行で性能を発揮できるのは「スノープラットホーム」が現われる50%摩耗までとしているが、冬期でも降雪がまれな非降雪圏などに住んでいる人などにとっては突然の降雪などの備えとして有効だとしている。
また、発表会の会場では、同日発表された3種類のタイヤ新製品についても展示が行なわれた。