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横浜ゴム、人気のクロスオーバーSUV向けタイヤなども登場した新製品発表会レポート

突然の降雪にも対応可能なオールシーズンタイヤ「BluEarth-4S AW21」も展示

2019年12月5日 開催

新商品プレゼンテーションが行なわれた3製品。左からクロスオーバーSUV向けサマータイヤの「BluEarth-XT AE61」、クロスオーバーSUV向けグランドツーリングタイヤの「GEOLANDAR CV G058」、乗用車用オールシーズンタイヤの「BluEarth-4S AW21」

 横浜ゴムは12月5日、同日に発表したクロスオーバーSUV向けタイヤの新製品「BluEarth-XT AE61」「GEOLANDAR CV G058」などの商品概要を説明し、実車に装着して製品展示する新商品発表会を開催した。

BluEarth-XT AE61(ブルーアース・エックスティー・エーイーロクイチ)

BluEarth-XT AE61(ブルーアース・エックスティー・エーイーロクイチ)
BluEarth-XT AE61は展示車のボルボ「XC40」のような都市型の小型~中型クロスオーバーSUVがターゲットとなる
展示車のタイヤサイズは235/55R18。18サイズをラインアップする
BluEarth-XT AE61のトレッドパターン

GEOLANDAR CV G058(ジオランダー シーブイ・ジーゼロゴーハチ)

GEOLANDAR CV G058(ジオランダー シーブイ・ジーゼロゴーハチ)
GEOLANDAR CV G058の装着展示車はトヨタ自動車「RAV4」。クロスオーバーSUVとして市街地での使い勝手を重視しつつ、アウトドアレジャーを楽しむ時に多彩な路面での走破性も備えるタイヤとなっている
展示車のタイヤサイズは225/65R17。32サイズをラインアップする
GEOLANDAR CV G058のトレッドパターン

BluEarth-4S AW21(ブルーアース・フォーエス・エーダブリュー・ニーイチ)

BluEarth-4S AW21(ブルーアース・フォーエス・エーダブリュー・ニーイチ)
BluEarth-4S AW21の装着展示車はトヨタ「カローラ スポーツ」だが、このタイヤは車種によってターゲットが決まるものではなく、ユーザーのライフスタイルに適合するかどうかで選ばれる、これまでとは少し毛色が異なる製品となっている
展示車のタイヤサイズは205/55R16。19サイズをラインアップする
BluEarth-4S AW21のトレッドパターン

多様化するクロスオーバーSUVのニーズに2つの新製品で対応

横浜ゴム株式会社 執行役員 タイヤ企画本部長 結城正博氏

 発表会では個々のタイヤの解説に先立ち、横浜ゴム 執行役員 タイヤ企画本部長 結城正博氏が新製品を投入する消費財商品戦略などについて説明。

 横浜ゴムでは2018年度~2020年度の中期経営計画「GD2020(グランドデザイン2020)」を展開しており、消費財部門では商品戦略として「プレミアムカー戦略」「ホビータイヤ戦略」「ウィンタータイヤ戦略」「お客様とのコミュニケーション活性化」の4点を柱としており、2020年1月から本格販売を開始する乗用車用オールシーズンタイヤのBluEarth-4S AW21はウィンタータイヤ戦略にプラスする新しいカテゴリーになると語った。

 2種類の新タイヤを投入するクロスオーバーSUVのジャンルについては、SUVと言えば以前は車体が大きく「ちょっと特殊なクルマ」と認識されていたが、昨今ではほとんどのメーカーで市街地走行も視野に入れたクロスオーバーSUVの新型モデルを積極的に展開しており、さまざまなSUVを目にするようになったと指摘。そのように拡大を続けているクロスオーバーSUVではユーザーの使い方や要望も多様化しており、横浜ゴムとしてサマータイヤのBluEarth-XT AE61、M+SタイヤのGEOLANDAR CV G058という2つの新製品を提供。幅広いユーザーニーズを満たすべく提案していくとした。

中期経営計画「GD2020」で推し進めている4つの柱
クロスオーバーSUV向けに性格の異なる2つのタイヤを市場投入
乗用車用オールシーズンタイヤ「BluEarth-4S AW21」は2020年1月9日から本格販売を開始する

 最後に結城氏は「私たち横浜ゴムはクルマを愛しています。そしてクルマを楽しむことが好きです。しかし、皆さんもご存じのとおり、日本に限らず若者のクルマ離れがずいぶん前から言われています。さらに自動車業界では100年に1度の大変革期にあり、クルマのあり方、クルマの存在自体が大きく変わろうとしています。当然われわれもその波にきちんと乗って対応していかなければならないと思っています」。

「ただ、そんな状況ではありますが、やはりクルマが好きな人が、以前とは変わっているかもしれませんが、今後もいろいろな形で存在していくと信じております。そんなクルマ好きな皆さんに、私たちはきちんと応えていきたい。われわれが生み出す商品で喜んでもらいたい。そのように考えて、今回は新たに6つの商品を展開するということです。今後もわれわれは、クルマにまつわる世界をもっと楽しくする。そんなことを常に頭に置きながら、皆さんに知恵や力をお借りしながら製品開発、情報発信をこれからも真摯にやっていきたいと思います」と締めくくった。

従来品である「JOB RY52」から耐摩耗性能を20%、ウェット制動性能を6%向上させる「BluEarth-Van RY55」
「GEOLANDAR MT G003」と「GEOLANDAR X-AT」に軽トラックに対応する新サイズを追加
「クルマにまつわる世界をもっと楽しくする」と結城氏

ウェット制動、ウェット円旋回は従来品から16%性能向上

横浜ゴム株式会社 タイヤ企画本部 消費財製品企画部 製品企画1グループ グループリーダー 小畑桓平氏

 クロスオーバーSUV向けサマータイヤであるBluEarth-XT AE61の商品解説は、横浜ゴム タイヤ企画本部 消費財製品企画部 製品企画1グループ グループリーダー 小畑桓平氏が担当。

 小畑氏は市場動向の分析によって小型~中型クロスオーバーSUVの販売台数が大きく増えていることを新製品開発の背景として紹介。クロスオーバーSUVは通勤やショッピング、家族の送迎、ドライブなどが用途の中心となっており、SUVといってもオンロード走行が主体になっていると説明。これを受け、BluEarth-XT AE61では市街地や高速道路での使用にベストマッチしたタイヤとして開発したという。

 小畑氏は自身でもテストコースでBluEarth-XT AE61とGEOLANDAR CV G058の乗り比べを行ない、サマータイヤであるBluEarth-XT AE61はステアリング操作に対するレスポンスがよく、スポーティなタイヤとの印象、GEOLANDAR CV G058はコンフォートテイストのタイヤとの印象を受けたと説明した。

BluEarth-XT AE61のコンセプトイメージ
クロスオーバーSUVは2010年代になって販売が大きく伸長
クロスオーバーSUVはオンロードでの乗用車的な使い方がメイン
製品コンセプト
SUVカテゴリーにおける横浜ゴム製品のすみ分け
製品のポジショニングマップ
クロスオーバーSUVのユーザーニーズを分析。5つの点に応えている

 商品特長は「思い通りに走るシャープなハンドリング性能」「SUVの車内に静かな空間を提供」「偏摩耗に強く、長く使える」「低燃費に貢献」「濡れた路面でもしっかり止まるウェット最高グレードの安全性」の5点と説明。国内タイヤラベリング制度では転がり抵抗性能「A」、ウェットグリップ性能「a」を獲得しているという。

 トレッドパターンでは専用開発の非対称パターンを採用。すべてのラググルーブとサイプを非貫通形状として、高い剛性による安定感のある走り、静粛性の向上などを果たしている。

 静粛性の向上では、トレッド中央にある「トリプルセンターリブ」のイン側にエッジを設定し、車外通過音を抑制する「サイレントエッジグルーブ」、音圧シミュレーションを使って5種類のピッチ・バリエーションを最適配置し、パターンノイズの発生を抑える「5ピッチバリエーション」などの技術を投入。ウェットグリップは「4ストレートグルーブ」の4本の主溝で高い排水性を実現する。

 タイヤ形状ではタイヤ全体に加え、リブやブロックなどの形状を中央部分がわずかに高い「マウンド・プロファイル」として接地圧の均一化を推進。重心が高く、重量も重めなSUVに装着しても偏摩耗を起こしにくいようにしている。

 これらにより、BluEarth-XT AE61はSUV向けタイヤの「GEOLANDAR SUV G055」と比較して全面的な性能向上を実現。中でもウェット制動、ウェット円旋回で16%の性能向上となっている。

BluEarth-XT AE61専用設計パターンを採用
「4ストレートグルーブ」「インサイドナローグルーブ」などでウェットグリップ性能の最高評価となる「a」を獲得
リブやブロックなどの形状を中央部分がわずかに高い「マウンド・プロファイル」で接地圧を均一化
「ナノブレンドゴム」でコンパウンド内部のシリカを分散させ、均一性を向上させる
2020年2月から18サイズを順次発売
「GEOLANDAR SUV G055」との性能比較

ドライグリップをキープしながらロードノイズの発生を34%低減

横浜ゴム株式会社 タイヤ企画本部 消費財製品企画部 グローバルSUVタスク タスクリーダー 小島弘行氏

 クロスオーバーSUV向けのグランドツーリングタイヤであるGEOLANDAR CV G058の商品解説は、横浜ゴム タイヤ企画本部 消費財製品企画部 グローバルSUVタスク タスクリーダー 小島弘行氏が担当。

 小島氏は小畑氏の説明同様、クロスオーバーSUVの販売台数が近年増加しており、2019年も多くのメーカーから新型車が市場投入され、さらなる増加が期待できると説明。横浜ゴムがクロスオーバーSUVの新車装着タイヤとして供給しているタイヤでは、サマータイヤだけでなくM+S(マッド&スノー)タイヤも混在。まだ明確な区分けが行なわれていないと語った。

 横浜ゴムではサマータイヤとM+Sタイヤの使い分けとして、サマータイヤは市街地走行やハンドリング性能を重視している人、M+Sタイヤは郊外まで出かけることも多く、気候や路面状況への対応力を必要とする人、またはクルマの純正装着タイヤに準拠するといったスタイルを想定していると小島氏は解説。また、クロスオーバーSUVユーザーに調査したところ、タイヤに求める性能はセダンやミニバンなどと大きく変わらず、雨天時のブレーキング性能や静粛性、燃費、乗り心地、耐摩耗性などが上位を占めていると説明。その一方で、降雪地域では4WD性能や車高の高さなどをによる走破性を利用目的として挙げるユーザーもいると紹介した。

 クロスオーバーSUVのユーザーでは「M+Sタイヤを買わない」という回答もあり、その理由としては静粛性を問題点として指摘する回答が寄せられ、これを受けてGEOLANDAR CV G058の開発では、「M+Sタイヤの弱みであるノイズ性能を改善、乗り心地を向上」「安全性能(ウェット性能)を向上」「長所である耐摩耗性、浅雪での性能確保」の3点を設定して取り組んだ。

GEOLANDAR CV G058の概要
GEOLANDAR CV G058は「GEOLANDAR SUV G055」の後継商品となる
日本国内のSUV販売。フレーム付きSUVなどはほとんど変化していないが、クロスオーバーSUVはこの5年ほどで飛躍的に販売台数が増えている
販売される車両に合わせてタイヤも変化している
静粛性を気にしてM+Sタイヤを買わないというユーザーがいることを受け、GEOLANDAR CV G058の開発ポイントに「ノイズ性能を改善」を掲げている
GEOLANDAR CV G058の商品ビジュアル。日常生活を営む都市部からワープして、郊外でアウトドアレジャーを楽しむイメージとなっている

 具体的な投入技術では、ドライ、ウェット、スノーといった多彩な路面状況に対応するため、高配合シリカとポリマーを組み合わせる「新ブレンドポリマー」を採用。グリップ性能を高めつつ、耐摩耗性や転がり抵抗といった相反関係にある性能も同時に引き上げている。

 トレッドパターンではサイプと溝の配置を最適化して、滑りやすい路面でのグリップ性能を向上。サイプによる分割を増やしても路面からの入力によってブロックが倒れ込むことを抑制するため、ブロックが相互に支え合う「3Dサイプ」を採用している。ノイズ低減ではBluEarth-XT AE61でも採用する5ピッチバリエーションを使い、パターンノイズを低減。また、同じくタイヤ形状にマウンド・プロファイルを使って接地形状の最適化を推し進めている。

GEOLANDAR CV G058の搭載技術
コンパウンドに「新ブレンドポリマー」「高配合シリカの分散」を導入する
トレッドパターンの採用技術
横溝の「サイプベースパターン」、縦溝の「4コンビネーショングルーブ」でトラクション性能を確保
2Dサイプと3Dサイプを組み合わせる「2-3コンビネーションサイプ」を採用
5ピッチバリエーションはブロック内のサイズを変化させ、ピッチノイズを抑制する技術
トレッド面の面圧を均一化するマウンド・プロファイルをGEOLANDAR CV G058でも採用
ショルダーのロゴマークは純正タイヤで採用の多い凹文字とした

 これらの技術の導入で、ドライグリップや転がり抵抗といった部分では従来品のGEOLANDAR SUV G055と同等の性能を維持しつつ、ロードノイズの発生は34%低減を実現。このほかパターンノイズは9%低減、ウェット制動距離は12%短縮、ウェット操縦安定性は13%向上としている。

静粛性と乗り心地の性能比較
従来品のGEOLANDAR SUV G055からロードノイズの発生を大きく低減。ウェットグリップも向上させている
従来品との性能比較データ
15インチ~20インチの32サイズをラインアップ

「冬用タイヤ規制」でもタイヤチェーン不要で走行可能

横浜ゴム株式会社 タイヤ企画本部 消費財製品企画部 製品企画2グループ グループリーダー 増渕栄男氏

 このほかに説明会では、2018年11月から一部地域で試行販売を行なってきた乗用車用オールシーズンタイヤ「BluEarth-4S AW21(ブルーアース・フォーエス・エーダブリュー・ニーイチ)」についても商品説明を実施。

 2020年1月9日から日本国内での本格販売が開始されるBluEarth-4S AW21では、センター部分の主溝から左右後方側に放射状に広がる「V字ダイバージェントグルーブ」を採用する特徴的なトレッドパターンを使用。サマータイヤである「BluEarth-GT AE51」と比較して、溝とサイプのエッジ量が67%増となっており、排水性や排雪性を向上。また、V字ダイバージェントグルーブと逆方向に伸びる「クロスグルーブ」の交差溝で雪柱せん断力を発生させ、雪上でのグリップ力を手に入れる。

 コンパウンドでは、作動温度帯の異なる「ウェットグリップポリマー」と「スノーグリップポリマー」の2種類をバランスよく配合するほか、配合するシリカを分散させて低温度下でもゴムのしなやかさをキープし、雪上性能やウェット性能を高める「末端変性ポリマー」を採用。また、ウェット性能を高める「マイクロシリカ」も投入している。

BluEarth-4S AW21の商品概要
BluEarth-4S AW21は積雪路を安心して走れる「欧州型オールシーズンタイヤ」
この3年間で欧州市場のサマータイヤ販売は800万本減少したが、ウインタータイヤが300万本、オールシーズンタイヤが500万本販売を伸ばしており、ユーザーの切り替えが進んでいると分析
日本でも首都圏で雪が降るケースが増えており、万が一の備えに注目が集まっている
オールシーズンタイヤの購入理由では、「タイヤ交換の手間が省ける」「突然の降雪への備え」といった回答がほぼ半数を占めた
iceGUARDシリーズのスノー技術、BluEarthシリーズのサマー技術を継承
気温別にタイヤがカバーする領域。BluEarth-4S AW21は路面が凍結する0℃まで対応
ターゲット車両はすべてシルエット。これは特定の車種ではなく、BluEarth-4S AW21がユーザーの利用目的によって選んでもらうタイヤであることを示している

 これらの技術により、BluEarth-4S AW21ではドライ路面から圧雪まで幅広い路面状況での走行を可能としており、2018年12月から国土交通省によってサマータイヤによる走行が規制されることになった「冬用タイヤ規制」の状態でも、タイヤチェーンなどを装着する必要なく走行可能としている。

 もちろん、圧雪路や氷上ではスタッドレスタイヤのグリップ力にはおよばず、雪上走行で性能を発揮できるのは「スノープラットホーム」が現われる50%摩耗までとしているが、冬期でも降雪がまれな非降雪圏などに住んでいる人などにとっては突然の降雪などの備えとして有効だとしている。

BluEarth-4S AW21はサマータイヤより溝とサイプのエッジ量を増やしてスノーグリップを高め、スタッドレスタイヤより溝のエッジ量を増やしてウェットグリップを高めている
BluEarth-4S AW21は「V字ダイバージェントグルーブ」などの採用でスノーグリップ、ウェットグリップを高める
コンパウンドで「末端変性ポリマー」や「マイクロシリカ」といった技術を使い、低温時でもしなやかさをキープ
14インチから19インチまでの19サイズをラインアップする
BluEarth-4S AW21は2018年12月14日から公布・発令された「チェーン規制に関連する改正」で新設された「冬用タイヤ規制」に対応
凍結路以外の幅広い舗装路にBluEarth-4S AW21は適合する
BluEarth-4S AW21の持つメリットと注意点
降雪圏に住んでいる人にも状況に応じて使ってもらいたいとしている
説明会の冒頭であいさつする横浜ゴム株式会社 取締役常務執行役員 技術統括 野呂政樹氏
説明会の最後にあいさつする横浜ゴム株式会社 執行役員 タイヤ製品開発本部長兼タイヤ第一設計部長 清宮眞二氏

 また、発表会の会場では、同日発表された3種類のタイヤ新製品についても展示が行なわれた。

バン専用タイヤ「BluEarth-Van RY55(ブルーアース・バン・アールワイ・ゴーゴー)」
BluEarth-Van RY55の装着展示車はトヨタ「レジアスエース」
展示車のタイヤサイズは195/80R15。24サイズをラインアップする
「GEOLANDAR X-AT(ジオランダー・エックスエーティー)」
GEOLANDAR X-ATはスバル「サンバー トラック グランドキャブ」に装着して展示
展示車のタイヤサイズは145R14C 85/83Q。、このほかに195R16C 104/102Qも追加となる
マッドテレーンタイヤ「GEOLANDAR M/T G003(ジオランダー・エムティー・ジーゼロゼロサン)」