レビュー
【タイヤレビュー】日本未発売! 横浜ゴムのオールシーズンタイヤ「ブルーアース 4S」を氷上&雪上で試してみた
スタッドレスタイヤ「アイスガード 6」と比較した性能は?
2019年2月26日 00:00
ジワジワと日本で注目されはじめてきたオールシーズンタイヤ。あらゆる路面でグリップするという謳い文句ではあるが、その真実はどうか? きっとそんな疑問を持つ人々も多いはずだ。欧州メーカーは一部で日本に導入を踏み切っているが、今回試乗を許された横浜ゴムでは、まだ日本への導入を検討中だという。スノーやアイス路面における性能がスタッドレスタイヤに比べれば落ちるからというのが本当のところのようだが、果たしてその差はどのように表れるのか? 現在販売されている横浜ゴムのスタッドレスタイヤ「アイスガード 6」と比べながら話を進めて行く。
今回話題にするのは欧州で販売されているオールシーズンタイヤ「ブルーアース 4S AW21」である。ブロックが細かく、サイプもかなり刻まれているスタッドレスタイヤとは違い、トレッドパターンはV字となりサイプも少ない。ショルダーあたりのブロックも大型化されているのが特徴的だ。溝面積はスタッドレスタイヤを100とした場合、109。溝の深さは8.7mmに対して8.4mmとやや浅い。ウェット路面の排水性を重視したほか、ドライ路面における剛性や摩耗を確保するために、ショルダーのサイプを少なくしている。ゴムはスタッドレスタイヤのように吸水剤を使っておらず、ゴムの硬度もやや硬めとなっているとのこと。ゴムは温度が下がると完全に固まるが、その温度はサマータイヤで約-35~-40℃、オールシーズンタイヤで約-50℃、スタッドレスタイヤで約-70℃だという。
今回は「CX-5」にアイスガード 6(225/65 R17 102Q)とブルーアース 4S(225/65 R17 102H)を装着してその違いを探ってみる。まず違うところはサイズを見ても分かる通り最高速度がスタッドレスタイヤはQレンジの160km/hまで、オールシーズンタイヤは210km/hまで許容していることだ。オールシーズンタイヤは欧州のドライ路面における高速走行も視野に入れていることがここから読み取れる。
まずはオールシーズンタイヤが最も不得意とする氷上で試乗をスタートした。初めに乗ったのはブルーアース 4Sだ。サマータイヤであれば動くことすらままならない場面をどう走るのか? すると、静かに発進すれば速度を乗せることが可能なことが分かった。縦方向のグリップはそれほどわるくはない。だが、パイロンをクリアするためにステアリングを切り込むと、操舵初期からステアリングの反力はなく、スリップアングルがかなりついた状況でようやく反応してくるような動きが気になった。その後、リアもフロントに少しずつ追従してくるのだが、旋回を始めたかと思えば一気に発散するような動きになったのだ。スライドコントロールを行なえば何とかパイロンをクリアすることができるが、正直に言えばかなり難しい。やはりアイス路面は苦手だというのが正直なところだ。
後にアイスガード 6に乗り換えれば、発進は強力だし、旋回時の安定感はかなり高いことが分かる。操舵感もシッカリと出ており、氷に食いついてくる感覚は高い。操舵初期からクルマが見事に反応し、ステアリングをそれほど切り込まずして旋回していく。一方でリアの安定感も抜群で、なかなか発散しない。横方向のグリップが高いことはどれほどありがたいことなのかと実感した。ちなみに、横浜ゴムが提供してくれた資料によれば、スタッドレスタイヤを100とした場合、オールシーズンタイヤは制動が77、エッジ効果トータルは88だという。だが、その数値以上に体感では差が大きいように感じた。
その後、スノー路面において同様のテストを行なうと、氷上ほどの差は出ない感覚があった。もちろん、横方向のグリップは薄く、それを頭に入れていなければ危険な状況に陥るのだが、進入スピードをきちんと落とし、ゆっくりと旋回していけば乗れなくはない。雪が磨かれて氷が出ているような場面に遭遇すると、先述したような状況に陥るのだが、雪を狙って走って行けばそれも対応できそうなのだ。ここでも横浜ゴムが示した資料をご紹介しておくと、スタッドレスタイヤを100とした場合、スノー制動は93。氷上ほど差がないことがここからも分かるだろう。
このように、オールシーズンタイヤは冬の路面で万能というわけではないが、走れなくはないということが感じられた。横浜ゴムではまだ日本の市場に投入するか否かを迷っているようだが、われわれユーザーがきちんと理解して使うのであれば問題はなさそうだ。非降雪地域における突然の雪になら十分に対応は可能。動けなくなるのと、少しでも動けるのとでは全く世界は異なってくる。万が一の時のお守りになる、それがオールシーズンタイヤの真実だろう。