レビュー
【タイヤレビュー】氷上と雪上でオールシーズンタイヤ試乗! 横浜ゴム「ブルーアース 4S AW21」の実力は?
テストコースでスタッドレスタイヤと乗り比べ
2020年3月2日 08:00
横浜ゴムのグローバルタイヤブランド・ブルーアースに新たなるラインアップが加わった。「BluEarth-4S(ブルーアース・フォーエス) AW21」と名付けられたそれは、4S=Four Seasons、そしてAW21のAWはオールウエザーを意味する記号を備えている(21はパターンナンバー)。つまりは、いま火が付き始めている雪でも走れるオールシーズンタイヤというのがその正体だ。サイドウォールにはM+Sと示されるだけでなく、欧州で冬用タイヤとして認証されたスノーフレークマークも備えている。
ただし、ほかのオールシーズンタイヤと同様、積雪には対応するものの、スタッドレスタイヤのように凍結路面での使用は推奨していない。関東から西の非降雪地域では積雪路面を走るのは4日以内が93%というデータもあり、そうした地域であればこのオールシーズンタイヤは有効となるだろう。また、年間を通じて履きっぱなしにできるので、スタッドレスタイヤのように保管や交換を必要としないことは、都市部のユーザーにとってはありがたい。
雪だけじゃなくドライもウェットも考えたオールシーズンタイヤ
ブルーアース 4Sのトレッドパターンを見てみると、近年増えてきたオールシーズンタイヤと同様の傾向がある回転方向指定のトレッドパターンが採用されていた。V字ダイバージェントグルーブは、あらゆる方向からエッジを確保できる形状で、排雪や排水を効率よく行なっているとのこと。その間にはクロスグルーブを備え、V字ダイバージェントグルーブと溝が交錯することで、雪柱せん断力が向上。また、ブロックにはオールシーズンで効果を発揮する3Dサイプも搭載。これはブロック内部が3次元で構成されることで、互いの倒れ込みを抑え、ドライ路面における剛性を確保。ショルダーブロックは大型化することで操縦安定性も備えているらしい。
コンパウンドには、シリカの分散を向上させ、ゴムのしなやかさを維持することで、優れた雪上性能とウェット性能に貢献する末端変性ポリマーを配合。スノーグリップポリマーとウェットグリップポリマーをバランスよく配合していることもポイントだ。また、マイクロシリカも配合することでウェット性能にも気を配っている。
オールシーズンタイヤを雪の北海道で試乗!!
こうしたブルーアース 4Sの性能を雪上で試した。場所は北海道の旭川にある横浜ゴムの「北海道タイヤテストセンター」。暖冬で雪が少ないと言われる今年であっても、一面は銀世界。夏タイヤなら間違いなく立ち往生するような路面だ。
いざ、ブルーアース 4Sを装着したプリウスで走り出すと発進はシッカリとしたトラクションがあり、速度を重ねるのも容易に行なえる。何度か発進を繰り返し、雪が飛ばされて氷が見えてくるような路面になると、度々トラクションコントロールが入り、発進は難しくなる。やはり氷の路面は得意ではないようだ。これは停止する方向も同じ傾向で、雪が残っているような路面であれば恐怖感もなく確実に止めるイメージ。氷が出てくるような路面ではABSの介入が増えて停止距離が延びる傾向があった。
30km/hほどからパイロンスラロームを行なってみるが、少ない操舵角だと見事に反応するから安心感は高い。ただし、ゆっくりと走っている分には不満はないが、速度を上げて行くと横方向がもう少し欲しいような気もする。が、そこまで求めるならスタッドレスタイヤということになるのだろう。
今回、同条件で横浜ゴムのスタッドレスタイヤ「iceGUARD 6(アイスガード シックス)」でも乗り比べられたのだが、最もスタッドレスタイヤと違うと思えたのは操舵角を大きくした時だ。ステアリングホイールを90度以上切るようなシーンでは、ややフロントタイヤがスッとアウトに膨らむ傾向があるのだ。縦方向に対して明らかに横方向が弱い傾向がある、それがオールシーズンタイヤの特性だろう。サイプの量も少なく、ブロック1つひとつも大きいため、タイヤがよれるような状況に持ち込むと弱さが現われる。
氷盤路でスタッドレスタイヤと性能比較
最後に、推奨はしていないものの、リアルな環境では出くわす可能性があるアイス性能を試してみた。比較対象として持ち込んだのはスタッドレスタイヤの「アイスガード 6」で、ピカピカに磨かれた氷盤路でのブレーキ制動比較である。
共に20km/hからABSが入るフル制動を行なった。まずはアイスガード 6でテストを開始。すると、ブレーキを踏んだ瞬間から制動Gが立ち上がるイメージで、ABSは作動し続けるものの、真っ直ぐに止まってくれる感覚があった。フロントもリアも安定している。その試験を終えた後に氷の上でUターンを行なうのだが、そこでの操舵感もきちんと出ており、すっぽ抜けるような感覚がなく安心感は高い。
続けてブルーアース 4Sで同様のことを行なうと、まず制動Gの立ち上がりが鈍く、ABSの介入が頻繁に行なわれて制動距離が伸びてしまう。リアタイヤも不安定になり、わずかにカウンターステアを当てながらの停止となった。スタッドレスタイヤと比べれば制動距離の違いはおよそクルマ1台分もあった。また、Uターン時にはフロントタイヤがアウトへと膨らむと同時に、操舵感は希薄。明らかに氷の上は苦手である。ここまで一面ツルツルのアイスという状況はなかなかないとは思うが、いざという時にこれだけ差が出るからこそ、横浜ゴムでは凍結路において使用することを推奨しないのだろう。
オールシーズンタイヤはアリか?
このように、氷や大舵角に弱いという傾向があることは明らかだ。オールシーズンタイヤを装着した場合、これをきちんと頭に叩き込んで使うべきだと感じた。コーナーや交差点の手前では縦方向のグリップをきちんと使い、速度をきちんと落とした上で旋回すべきだろう。また、凍結している状況には足を踏み込まないほうが身のためだ。
そこさえ厳守して使うならオールシーズンタイヤはかなりアリな選択。たとえば先月も箱根が急な大雪に見舞われニュースになっていたが、夏タイヤであれば立ち往生するようなそんな環境であっても、しっかりと帰宅できるというメリットはかなり大きいし、タイヤ交換や保管に気を遣わずに1年中クルマを動かせるのはありがたい。乗り方をきちんと守って乗れるユーザーにだけオススメしたいタイヤだと思う。