レビュー

【タイヤレビュー】ブリヂストンの新スポーツタイヤ「POTENZA RE-71RS」をサーキットで全開チェック

「RE-71R」とのタイム差はいかに?

ブリヂストンのスポーツタイヤ「POTENZA RE-71RS」を筑波サーキット コース1000で試した

左右非対称パターン、非対称形状採用

 ブリヂストンのストリート向けハイグリップラジアルタイヤが生まれ変わった。「RE-71RS」とした今回のタイヤは、2015年に登場した「RE-71R」の後継モデル。だが、トレッドパターンに共通性はなく、今回は左右非対称となって登場。ストレートグルーブはイン側に2本寄せ、アウト側は貫通する溝を持たないスリックショルダーブロックを持つなど、かなりタイム狙いなタイヤのようだ。

 RE-71RSでは新非対称トレッドプロファイルを採用。トレッドゾーン毎にラウンド形状を設計し、イン側は極端にラウンド、センターリブは平らに、そしてアウト側は緩やかにラウンドするといった凝った造り込みを行なうことで、コーナリング中の接地面積を6%向上させることに成功。接地圧分布の均一化も行なったことで、耐摩耗性も5%向上したという。

 また、トップコンパウンドも新設計とし、路面への食いつきがアップ。接触面積は11%も向上したそうだ。このような技術の組み合わせがあったからこそ、左右非対称パターンが採用できたという話もあった。かつてRE-71Rは左右対称パターンとしなければ、高速コーナーの接地が稼げないとしていた。それをあっさりとやめたことで疑問を感じたが、非対称パターンでも高速コーナーで問題ナシという判断が下されたらしい。

「POTENZA RE-71R」の後継モデルとして2月1日から順次発売となった新スポーツタイヤ「POTENZA RE-71RS」。製品名のRはRacing、SはSecond/Sportを指す
向かって左がIN側、右がOUT側。RE-71RS向けに最適化した非対称パターンや非対称形状を採用し、ドライ路面でのグリップ力とコントロール性を高次元で両立。ロングライフ性能も特徴とする
ダントツのドライハンドリング性能、ラップタイムを最大限短縮するという目標を掲げて開発が進められたRE-71RS。太い2本の主溝をIN側にレイアウトすることで高い排水性を確保するとともに、OUT側のトレッドのブロック剛性を高めることでコーナリング時の高いグリップを実現
RE-12D(左)、RE-71RS(中)、RE-71R(右)のトレッドパターン比較。なお、同社がRE-71RSとRE-71Rのテストを筑波サーキット コース2000で行なったところ、RE-71RSでは最速ラップタイムを2.0%短縮、平均タップタイムを1.1%短縮することに成功。摩耗寿命も5%向上しているという
RE-71RSのテストドライバーも会場を訪れた。写真は山野哲也選手
佐々木雅弘選手
井口卓人選手
蒲生尚弥選手
佐々木雅弘選手の製品紹介、橋本氏のRE-71RSインプレッション(11分7秒)

RE-71Rとのタイム差は?

 今回は筑波サーキット コース1000において、86、ロードスター、そしてスイフトスポーツに試乗した。いずれの車両でも従来品のRE-71Rをチェックし、その後RE-71RSで再び走るメニューだ。試乗車両はすべてが足まわり、ブレーキ、そしてLSDなどを備えたライトチューニング仕様。走行会に参加する一般ユーザーを想定したものだった。

 まずは86でコースインすると、コース上はハーフウェットだった。だが、そんな状況であってもRE-71RSは走り始めから確かな手応えと確実なグリップでコーナーをクリアしていく。グリップレベルはサーキット向けの「RE-12D」に近いイメージで、極端に言えば“RE-12Dの溝が多いバージョン”といった感覚だ。ウェット路面に乗ってもグリップがすっぽ抜けるようなことはなく、安心感が高い。RE-71Rではその状況でスナップオーバーステアが出ることが多く、操るのはなかなか難しい。

 これは後に試乗したロードスターでも同じ傾向だった。ロードスターで走り出した時にはドライ路面になっていたのだが、RE-71Rは明らかに縦方向のグリップは強力だが、横方向のグリップが弱い。RE-71RSはそこが上手くバランスしたかに感じられるのだ。だから乗り方も変える必要があると感じるほど。極端に言えば、RE-71Rは真っ直ぐで確実に止めて真っ直ぐ出るのが最適解。もちろん、RE-71RSでもその傾向はあるのだが、横方向のグリップもシッカリしているため、例えば筑波サーキット コース1000のまわり込んだ最終コーナーであっても、旋回スピードを落とさずにクリアすることができるのだ。ロードスターと言えば旋回スピード命のクルマ。その特性を引き出すにはRE-71RSはありがたい。

 最後に試乗したスイフトスポーツでも同様の傾向だったが、そこで感じたことは耐摩耗性がシッカリとしていたこと。このコースを2WD(FF)で走ると左フロントタイヤがキツイが、トレッド面に荒れた形跡が見られず、これなら長持ちするのもうなずけるといった感覚があったのだ。

 結果として86で0.3秒(一部ウェット)、ロードスターで0.43秒、スイフトスポーツで0.46秒、RE-71RSはRE-71Rよりも速く走った。1周1kmのサーキットでこれだけのアップがあったのだから、長いコースに行けばかなりの差となることは確実だ。タイムダウンもそれほど見られず、7周をコンスタントに周回していた。

 ただし、3周目あたりからトレッド面がヨレるようなフィーリングがあったことも事実。溝をシッカリと持たせ、ストリートにおける突然の雨にも備えた結果、サーキット向けのRE-12Dよりもブロック剛性が低いからだろう。タイムが出るから、耐摩耗性がいいからといって、連続周回を続けない方がRE-71RSとは長く付き合えそうな気がする。

走行後のRE-71RS

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車はトヨタ86 RacingとNAロードスター、メルセデス・ベンツ Vクラス。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一