レビュー
【タイヤレビュー】4年経過相当のスタッドレスタイヤの性能はいかに!? 横浜ゴム「アイスガード 6」で比較試乗
スポーツカーやSUVでも試乗
2020年3月3日 08:00
2017年に登場した横浜ゴムのスタッドレスタイヤ「iceGUARD 6(アイスガード シックス)」を北海道の旭川にあるテストコースで改めて試乗する機会を得た。といっても今回はただの試乗ではなく、注目したのはコンパウンド経年劣化抑制技術だ。スタッドレスタイヤは冬季のみ使用するため、ガレージの裏で眠っている時間のほうが長いというユーザーも多いはず。数年経過した状況のスタッドレスタイヤの性能は、どのようになっているのかをじっくりと見てみたい。
横浜ゴムでは以前から「永く効く」性能を追求し、約4年後であっても新品時とそれほど変わらない性能を維持しようと努力しているという。今回のテストではラボのオーブンで劣化を促進させ、4年経過後の状況を作り出したというタイヤを使って比較試乗が行なわれた。まずはそのサンプルゴムを触らせてもらったのだが、若干硬化していることは手で感じられる。しなやかさが若干無くなっているとでも言えばよいだろうか?
タイヤの性能が低下するメカニズムとしては、ゴムに配合している軟化剤となるオイルが経年と共に抜けていき、結果としてゴムは硬化。しなやかさが低下することで氷雪性能が落ちていくことになる。横浜ゴムでは経年劣化抑制技術を2008年に登場した「アイスガード 3」から採用開始。その際はオイルがゴムから抜けにくいブラックポリマーIIで対応していた。後に2012年登場の「アイスガード 5」ではブラックポリマーIIに加えて、低温時でもゴムの柔らかさをキープする吸水ホワイトゲルを採用。2015年登場の「アイスガード 5 プラス」ではさらにゲルの大きさを最大30倍まで大きくしたエボ吸水ホワイトゲルを新採用。そして2017年登場の現行アイスガード 6ではブラックポリマーII+エボ吸水ホワイトゲル、さらにオレンジオイルSの新採用によって「永く効く」に対応してきた歴史がある。サマータイヤとは異なるスタッドレスタイヤ特有の技術が必要だと考えた末の対策だった。
アイスガード 6の開発にあたって、スタッドレスタイヤでグリップを高めるためには、しなやかさを出して接地面積を増やし凝着摩擦を発生させることが必要だった。それにはシリカを多量に配合する必要があったのだが、ただ増量すればよいわけではなく、増量したシリカをダマにせず分散させて配合する必要があり、それが課題となったそうだ。
そこで必要となったのがホワイトポリマー。ただしホワイトポリマーを入れ込むということは、ブラックポリマーII+エボ吸水ホワイトゲルの含有量を減らす必要がある。ただし、ブラックポリマーIIには「永く効く」性能が良好である一方で、ホワイトポリマーにはそれがない。そこをリカバーするために新採用されたのがオレンジオイルSだったという。
そもそもウェット特性とアイス特性は背反性があるのだが、オレンジオイルSはそれを一段高い位置で克服することも可能となったことも進化のポイントだ。いずれにせよ、氷雪性能を引き上げつつ、「永く効く」性能をも両立させたことは、試行錯誤を繰り返して辿り着いたものだったことは明白だろう。
4年経過相当品を新品と氷盤路で比較
このように横浜ゴムがこだわった「永く効く」性能を試すために、経年劣化したスタッドレスタイヤでは最も厳しいと思える氷盤路でテストを行なった。まずは劣化させていない新品状態のアイスガード6で試走して感覚を把握したところで、いよいよ4年経過後の状況を作り出したアイスガード 6で20km/hからのフル制動を行なった。すると、新品状態とさほど変わらない感覚で停止。何度か繰り返してみたが、やはり制動距離の違いはフロントバンパー分くらいのもの。新品時と4年経過後がこれだけとは! さらに停止状態から発進する際も、ややトラクションが薄くなったかな? というくらいのもので、使えなくなっているという印象はなかった。
ただし、まったく違いがないというわけではなくて、やはりゴムのコシがなくなっていることは感じられ、特に横方向についてはゴムが効果してスライドし始めるのが早い傾向にあるように感じた。操舵感もやや薄かったことがその証明といっていいだろう。だが、それをきちんと把握して乗れば問題がないと感じられるレベル。同日に試乗した同社のオールシーズンタイヤよりも路面に食いついている感覚はある。横浜ゴムが長年取り組んできた経年劣化抑制技術には、確かな効果があると思えた。
低扁平モデルとSUVモデルも試乗
今回の試乗会では、4年経過相当との比較に加えて、スポーツカーと低扁平のアイスガード 6を組み合わせたパターンと、SUV向けモデルである「アイスガード SUV G075」を試乗する機会も得た。
まず低扁平タイヤを装着したスポーツカーとして用意されたのは、フロント235/40R19、リア265/40R19サイズを装着したポルシェ「718 ケイマン」。ここまで低偏平のクルマの場合、タイヤの接地面積は横長になり、縦方向のトラクション、そして横方向のピーキーさが気になるところだが、パイロンスラロームを行ってみればコントロール性は十分に備えており、コントロール下に置きやすい乗り味があった。また、発進や停止といった縦方向のグリップもきちんと出ていることが印象的。低偏平でも扱いやすいことが見えてきた。
次にSUV向けスタッドレスタイヤであるアイスガードSUV G075の試乗車として用意されたのはトヨタ「RAV4」。サイズは225/65R17だ。試乗したのは雪上のハンドリングコースで、場所によっては逆バンクなどもある状況だったが、そこを難なく走れるところが好感触だった。縦方向のグリップがシッカリと出ており、トラクションもストッピングパワーもなかなか。アイスガード6よりは剛性を持たせる必要があり、実際のグリップは落ちるとのアナウンスがあったが、それはさほど気にならない。コーナーリングもヨレが少なく、接地感がしっかりと伝わり滑り出しが感じやすくコントロール性に優れるところが好印象だった。