レビュー

ダンロップの新プレミアムコンフォートタイヤ「VEURO VE304」に試乗。かつてない静かさと上質さを体感

前身の「VE303」からどう進化した?

数値の上がり幅に驚く

 本当によいタイヤができたということで、7年ぶりに満を持してモデルチェンジしたプレミアムコンフォートタイヤ「VEURO(ビューロ)」の最新モデル「VE304(ブイイーサンマルヨン)」は、キャッチコピーにも「理想のタイヤ」云々と自ら謳うくらいの自信作だという。

 概要については別記事のとおりで、ポイントとしては最上級の静粛性と快適性、最高レベルのウェット性能と、それが長続きすることなどが挙げられる。デザインにもこだわり、プロダクトデザイナーの和田智氏を監修に招いて積極的に関わってもらったというだけあって、見た目もなかなかインパクトがある。「VE」を省いて「304」を強調し、周囲にテクスチャーを組んだサイドのデザインは斬新な印象を受ける。一方で、トレッドパターンはあえてシンプルにし、波型グルーブなど機能がひと目見て分かるようにされている。

 最上級の静粛性と快適性、最高レベルのウェット性能と、それが長続きさせるためにいくつもの新しい技術を採用しているが、資料に目を通したところ、従来モデルの「ビューロ VE303」と比べて各要素の上がり幅を示す数値の大きさに驚いた。ノイズの発生源となる溝とピッチ配列を最適化し、さらに主溝を3D波型グルーブとしたことで、パターンノイズを24%、ロードノイズを29%低減。また、パターン剛性を適正化し、ハンドリングによるタイヤ変形を精密にコントロールすることで操縦安定性を10%向上した。

 さらに、185/65R15を除くすべてのサイズで最高グレードのウェットグリップ性能「a」を達成したほか、ゴムの劣化を抑制する新素材の水素添加ポリマーや、摩耗しても溝幅が広がる3D波型グルーブの採用により、ウェットブレーキ性能低下率を14%も向上させたというから大したものだ。

3月1日から順次発売されたダンロップ(住友ゴム工業)の新プレミアムコンフォートタイヤ「VEURO VE304」。高い静粛性能と操縦安定性を兼ね備えたタイヤで、ウェットグリップ性能では展開する64サイズ中のうち63サイズでラベリング最高グレードの「a」を達成している。今回はトヨタ自動車「クラウン RS」に装着してその実力を試した
VEURO VE304ではノイズの発生源となる溝とピッチ配列を最適化。主溝に「3D波型グルーブ」を新採用し、溝を流れる気流をコントロールすることで従来モデルの「ビューロ VE303」と比べ、パターンノイズを24%低減することに成功。さらに剛性の異なる素材をより合わせた「ハイブリッドバンド」をトレッド部に配置することでタイヤの振動を抑制し、ロードノイズを29%低減させたという

音や衝撃をやさしく包み込む

 今回はVE304の開発時にもベンチマークにしたという「クラウン」のRSグレードに装着して、都内湾岸部の一般道および都市高速を半日ほどテストドライブしたのだが、走り出した瞬間から走りの上質さを直感し、走るほどに感心する気持ちが深まっていったことをあらかじめお伝えしておこう。とにかく静か。そして滑らかでしなやかだ。加えて「A」というだけあって、転がり抵抗が小さいことも感じ取れる。

 いろいろな路面を通過しても、ロードノイズやパターンノイズともかつて経験したことがないほど小さい。路面の細かい凹凸を拾ってゴロゴロしたりザラザラしたりする感覚が大幅に抑え込まれている。また、現行クラウンの中でもスポーツセダン的な位置付けのRSは乗り心地が硬く、突き上げや微振動がやや気になったものだが、その当たりがサスペンションを変えたかのように払拭され、上質な乗り味になっていることに感心した。

 首都高速に乗って車速を高めると、よい印象がさらに高まる。ジョイント部を越えたときに発する音や衝撃も優しく包み込んで抑えてくれる印象で、車内に響く共鳴音も小さい。きれいな路面では感覚としてはほとんど“無音”になる。もともとクラウンは静粛性に優れるが、輪をかけて静かになり、むしろ多少の風切り音とエンジン音の方が気になるくらいだ。

しっかり感のある上質な走り味

 ダンロップには「ル・マン」という快適性に特化したラインアップもあるわけだが、ビューロは走りも大事。前身のVE303でも、快適性と走りの両立ぶりはなかなかのものだったと記憶しているが、今回のVE304はさらに高みに達している。

 路面への当たりがマイルドな中にもサイドには剛性感があり、フラットライド感は高い。ステアリングにもしっかりとした手応えがあり、微操舵の領域から切ったとおり正確に応答遅れなく動く。素直にヨーが立ち上がり、揺り返しもなく収束する。一連の動きのすべてが適度に減衰されて、しっとりと落ち着いた上質な走り味を提供してくれる。

 ヨーゲインは高くなく、ハンドリングの前後バランスもよく過敏なところもない。ケースの縦バネを十分に確保しながらも、絶妙な柔らかさが与えられていることを横Gの高いコーナリングで感じるのはスポーツタイヤとの大きな違いだが、こうすることで走りのよさと快適性、ウェット性能などをうまく両立させているのだろう。

 クラウン RSに限っていうと、やや気になっていたカドも取れて静かで上質になり、本当はこういう乗り味で世に出したかったのではないかと思ったほどマッチングがよく、よりクルマのよさを引き出せていたように思う。

 加えてVE304はウェットブレーキ性能も高く、それが長く続くという。試乗した日はときおり小雨がぱらつき、ところどころ路面が湿っていたもののウェットと呼ぶほどの状況ではなかったのだが、ウェットグリップが高そうな片鱗はうかがえた。その性能が摩耗しても落ちにくいというのもありがたい。

 VE304は、まさしく「理想」のプレミアムコンフォートタイヤよろしく、あらゆる要素を高次元でバランスよく兼ね備えていた。中でも印象的だったのは、かつてない静かさと、ビューロの最新版としてふさわしいしっかりとした上質な走り味であった。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一