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VOLK RACINGのデザイン美学が宿るレイズの鍛造1ピースホイール「G025」、その魅力に迫る

本稿ではレイズの「VOLK RACING G025」にスポットを当てて紹介。撮影車両はオリジナルブランド「HM RACERS」を展開する広島マツダのデモカー「MX-30」

Gシリーズのコンセプトは“走りからの卒業”

 これから紹介するレイズの「VOLK RACING G025」は2019年にデビューした鍛造1ピースホイール。2×5(細いスポークが組み合わされた2本が5つ構成されるということ)のスポーク部の細さが際立つそのデザインは、スポーツカーはもとよりセダン、SUV系にも受け入れられそうな雰囲気だ。

 そのG025が掲げるコンセプトはなかなか面白い。まず、ネーミングに入るGの文字は「graduate=卒業」という意味を込めているというのだ。さらにはVOLK RACINGのデザインの美学は「理由のあるライン」と「意思を持つカタチ」だという。

 その真意をレイズの執行役員であり、鍛造事業戦略推進室 室長の山口浩司氏に聞いてみたところ「GシリーズのGは走りからの卒業という意味なのです。速さへの追求をむき出しで行なうのではなく、クルマのボディラインとのマッチングを大切にして、大切な家族や友人と共にクルマを楽しめるようなホイール、それがGシリーズの位置付けになります。けれども、加減速やコーナリングGは常に感じていたいよね、という思いもその名に込めています」とシリーズのコンセプトについて語る。

株式会社レイズの執行役員で、鍛造事業戦略推進室 室長の山口浩司氏にG025の魅力を聞いた
2019年にデビューしたVOLK RACING G025。写真左はマットガンブラック/リムエッジDC(MK)、右はシャイニングブラックメタル/リムエッジDC(HK)。サイズは国産車用が18×7.5J~20×12Jで、PCDは100と114.3を用意。輸入車用のサイズは18×7.5J~20×10.5Jで、PCDは108、112、120を設定する
2020年に限定カラーモデルとして登場した「G025 DB/C」はベースコート、ペイント、ダイヤモンドカット、厳選したブルークリア、仕上げのクリアコートと、全ての工程を吟味して完成させたもの。正対で見た時、斜めから見た時で違った表情を見せるのが特徴の1つ
2021年に限定カラーモデルとして登場した「G025 BR/C」。BR/Cはボルドーレッド/クリアを表しており、前作のG025 DB/Cとは異なり、若いボルドーワインのカラーを彷彿とさせる意気のよさを表現したという

 コンセプトだけを聞くとドレスアップ優先のホイールのようだが、実はJWLやVIAといった規格の2倍の負荷をかけてもOKな性能を持たせているそうだ。レイズ、そしてVOLK RACINGの名に恥じないものをという意気込みはほかのレーシング系ホイールと変わらない。現代のクルマが持つ重量、そして近年のタイヤが持つハイグリップにもきちんと対応している。

 最も違うのはG025が持つ造形美。基本的なスポーク構成は2×5のシンプルな作り。ホイールナットが刺さる取り付け点が5ホールのタイプにマッチするタイプだ。だが、ホールの位置にまずは特徴がある。G025は2×5の2の付け根にホールが開けられているのだ。

 実はこの方式を採用すると、応力が集中するポイントに穴を開けていることになるため、一般的にはなかなかトライできない。あえてそれにチャレンジしようというところがG025の新しさである。さらに驚くのはホール上に2つの穴が開けられていることで、「ウェイトレスホール」と名付けられた軽量化のための穴が存在する。レイズが持つ鍛造技術の自信がそこに詰まっているといっても過言じゃない。

「2つのスポークの付け根にホールを与えた理由は技術的なトライという側面がある一方で、コンケイブの深さを感じさせる視覚的効果があるということもそのデザインを採用した理由の1つです。純正車高で車検対応する製品を考えた場合、リム幅はそれほど広げることは難しく、そうなるとディスク面が平面になりがちなんです。車高をダウンすることが前提だったり、輸入車サイズであればリムと中央部の落差が大きく、やはりそちらのほうが抑揚があってカッコいいという話になりがちなんです。リム幅が小さくてもそのようなコンケイブ形状を達成できないかというトライが、このデザインには詰まっています。リムとほぼ同じ位置にある2つのスポークが、ホールに向かって落ちていくところがポイントです」と山口氏。

2×5スポークデザインを採用するG025。最新の鍛造技術によりわずか5.5mmという圧倒的な細さのスポークを実現するとともに、「TE037」に続く「ゼロシリーズ」としてセンター部にはデザイン的にも目を引くウェイトレスホールが空けられた。これは構造解析技術により強度を下げない形で重量の低減を図ったもの

 ホールの周辺を囲うようにウェイトレスホールや立体的なデザインが施されることで、ホイール中心は贅肉が削ぎ落とされたかのような引き締まったラインを実現。結果として、リムから中央部へ落ち込んでいく立体感のあるコンケイブを達成しているかのように見える。この部分は削って製作されているのかと思いきや、金型でそれを制作し、基本的に鍛造で成立させているというのだ。これによりコストカット、そして無駄なアルミを出さないことにもなり、結果的になじみやすい価格につながるという。デザインも製法もユーザーを考えて立ち向かっているところはさすがだ。

リム外周にレイズが特許を持つ「A.M.T.」と呼ばれる彫刻加工で「RAYS ENG.」「MADE IN JAPAN」といった文字が与えられるのもデザイン面での特徴の1つ

見た目だけでなく剛性も外せないポイント

「操舵の応答性やリアの安定感を生み出すには、見た目だけでなく剛性も外せないポイントだったのです」と語る山口氏

 視覚的効果を狙ったのはそこだけじゃない。実はスポークの細さについてもこだわりが詰まっている。正面から見た時のスポークの細さは、従来品のG25が7.5~8mmだったのに対し、G025では5.5~6mmまでシェイプアップされている。だが、G025をよく見てみるとスポークの奥行きにはかなりの太さがあったり、リムとの接触面は山型に盛り上がるようになっていたりと、見た目だけではなく剛性面についてもかなりこだわったことが伺える形状をしている。

「G025はスリムに見えますが、実は中央部は肉厚に作っていますし、リムとスポーク面との接触部は山型にするようにして力を分散して伝えるように考えられています。タイヤからの入力って実はリムの両端の6~7mmくらいのところに集中しているのです。それがスポーク、ハブとの接合部、そしてサスペンションやボディを伝ってドライバーへと伝達されます。Gを常に感じていようとなれば、ホイール各部の剛性は見逃せないポイント。操舵の応答性やリアの安定感を生み出すには、見た目だけでなく剛性も外せないポイントだったのです」と山口氏は熱く語る。

HM RACERSの「MAZDA3」にG025をセット

 たしかにホイールの剛性だけで走りはガラリと変化してしまう。個人的に感じているのは重量が軽くなることよりも大切なもの。かつて同じ車両でいくつかのホイールを試したことがあるが、やはり剛性が低いものはリニアリティが低く、結果として意図せず操舵角が増えたりしてしまう。剛性の高さやバランスにこだわった製品は、操舵しはじめからきれいにクルマの動きにそれが展開され、結果として速く走れてしまう。国際サーキットでコンマ数秒のタイムアップを経験したこともあるほどだ。

「われわれは強度解析とは別に剛性解析をどのホイールでも行なっています。これはレースに使うものだけに必要なものではありません。インナーリムのたわみをなくし、きちんとした剛性を保った結果、操安性が高まることは見えていますので、レーシングホイールだけでなく市販車のドレスアップホイールに対してもきちんと対策することが当たり前のように行なわれているのです。ホイールは金属部分の最終の砦ですからね。ここがシッカリしていなければタイヤの性能はすべて引き出せないんですよ」(山口氏)。

 このように、ドレスアップに特化した性能を持たせつつも、その一方でレーシングホイール直系の技術をふんだんに盛り込んでいるG025は、かなりぜいたくなホイールと言っても過言じゃない。本稿を通じてVOLK RACINGのデザイン美学である「理由のあるライン」「意志を持つカタチ」をご理解いただけたら幸いだ。

G025はSUVの「CX-5」にも絶妙にマッチする

Photo:清水良太郎