トピック
三菱自動車、PHEV誕生の地・岡崎製作所で「PHEVオーナーズミーティング」初開催 テストコース走行&工場見学など盛りだくさんの内容
2023年3月14日 13:24
- 2023年2月25日 開催
三菱自動車工業の人気モデルである「アウトランダーPHEV」は、改良やモデルチェンジを重ねつつ、2023年1月で発売開始から10周年を迎えた。先代のアウトランダーPHEVは世界初となるSUVタイプのPHEVであり、エコなクルマとして注目を浴びた。現行型にスイッチしてからはエコであるだけでなく、PHEVならではの給電能力からアウトドアレジャーでの便利さ、万が一の災害や停電時の備えという面も選ばれている理由になっている。また、SUVらしく力強さを感じさせるエクステリアや、高品位な作りのインテリアも「欲しい」と思わせる要素だろう。
本稿で紹介するのは、三菱自動車が2月25日に開催した「PHEVオーナーズミーティング in 岡崎製作所」。このイベントはアウトランダーPHEVが発売から10周年を迎えたこと、2022年度上期の販売台数実績がPHEVカテゴリーで1位になったことを記念して企画されたもので、開催場所はアウトランダーPHEV、エクリプス クロス PHEVが製造される三菱自動車岡崎製作所と併設する技術センターだ。
イベントは三菱自動車の開発者によるトークショーや車両展示だけでなく、アウトランダーPHEVやエクリプス クロス PHEVの製造行程見学やテストコースでの同乗試乗なども盛り込まれた充実の内容。
自動車メーカーの工場やテストコースは当然のことながら普段立ち入ることができない場所なだけに、貴重な体験ができる特別なイベントとなった。それだけにイベントへの参加は狭き門になったようで、約500組からの応募の中から89組(198名)が選ばれて当日参加した。
アウトランダーPHEV開発者による解説&体験試乗
「PHEVオーナーズミーティング in 岡崎製作所」が始まる前、報道陣向けに行なわれたのがアウトランダーPHEVの歴史や技術面、販売面に関するプレゼンテーションと岡崎製作所内のテストコースを使った、先代アウトランダーPHEVと現行アウトランダーPHEVを乗り比べる体験試乗会である。
試乗の前に新旧アウトランダーPHEVの開発を手掛けている三菱自動車工業 製品開発本部の本多謙太郎氏より、アウトランダーPHEVの特徴および進化のポイントが説明された。
本多氏がアウトランダーPHEVの開発に携わったのは2009年から。この年代の三菱自動車では電動車の比率を上げることなどを含めた環境ビジョンを掲げていた。そんな流れから誕生したのが軽乗用車の「i」をベースにしたBEV(バッテリ電気自動車)の「i-MiEV」だった。その中でSUVの新型車を作ることになったのだが、この時点では「BEVにするかPHEVか」というような具体的な仕様は決まっていなくて、会社のビジョンのみがあったという。
そこで本多氏は、まずユーザーの行動パターンを分析した。すると日常生活では長くて50~60kmほどの走行に収まるのがほとんどで、遠出と呼ぶほどの走行はそれほど多くないということが見えてきた。この結果について「当たり前といえる結果でしたが十分参考になった」とのことから考え出されたのが、日常的な使用ではEV走行、そして週末のドライブではガソリン車として乗ることのできるクルマだった。ここで見えたのがi-MiEVのようなクルマにエンジンを追加する方法。BEVをベースにしたハイブリッド車の開発である。この仕様であれば三菱自動車が掲げている環境ビジョンにも合致するのだ。
これが2009年の話で、そこから約3年かけて作ったのが先代アウトランダーPHEVだ。このクルマは環境訴求車という位置付けだったので顔つきもどこかやさしめで、訴求色のボディカラーも当時流行っていた環境へのやさしさを表すような淡いブルーであった。
先代アウトランダーPHEVの評価は高いものだったが、SUVというイメージから「もう少し力がほしい」という声もあったという。そこで2016年に顔つきを三菱自動車の一連のデザインであるダイナミックシールドを採用したのに加えて、エンジンラインアップに2.4リッターを追加することで見た目、走りともに「力強さ」を追加したのだった。
登場から約4年の期間でユーザーのニーズに合わせ進化したアウトランダーPHEVだが、環境訴求車を作る風潮は日本国内だけでなく世界的なものだった。海外メーカーからも競合車が発売されてきたことで、さらなる進化を追求していくことになったという。
ライバルは当然アウトランダーPHEVのことも研究しているので、三菱自動車としてはPHEVに新たな特徴を盛り込んだ。それがモーターの使い方だ。
アウトランダーPHEVではエコな部分でモーターを使うことを重視していたのに対して、ライバル車は「走りのよさ」もアピールした。そうした流れを見て、本多氏は「エコという部分だけ考えていると置いていかれる」と考え、新型車開発では走りの面の強化も盛り込んだ。
この時点で先代と比べて大きく進化した点が4つあるので順に紹介していこう。
1つ目はエクステリアデザイン。先代も途中でダイナミックシールドへと進化したが、さらにSUVらしい力強さを与えるため、ボディサイズの拡大に合わせてデザインの変更、タイヤの大径化などを行なった。
2つ目はインテリアのデザインや質感を高めたこと。ちなみにCar Watchではこれまで何回か現行アウトランダーPHEVオーナーにクルマの印象をインタビューしているが、その誰もが気に入っている点の上位にインテリアを挙げていた。
話を戻して3つ目は、車両運動統合制御システム「S-AWC(Super-All Wheel Control)」に新たに後輪側にもブレーキAYC機能を追加するなど、より走りを高度なものにしたこと。ブレーキ制御のAYC(Active Yaw Control)を組み合わせたASC(Active Stability Control)を採用するなど、常時4輪を統合制御することであらゆる状況でクルマを意のままに操れるようにした。
最後はPHEVの部分。EV航続距離を伸ばすことや走りの力強さを上げるため、フロントモーターではジェネレーターとともにマグネット配置や巻線を最適化し、冷却効率の高い油冷システムなど最新技術を導入。最高出力は60kWから85kW、最大トルクは137Nmから255Nmへと大幅に向上させた。リアモーターはステーター側のコイルを角型断面とすることで巻密度を高め、最高出力を70kWから100kWに向上(最大トルクは先代車と同じ195Nm)させた。また、従来の電池セル80個から96個として総電圧350V、総電力量20kWhの大容量駆動用バッテリ(先代車は総電圧300V、総電力量13.8kWh)を採用している。
なお、EV航続距離については先代の時に50kmでも足りるという声もあったそうだが、「もっとほしい」という声に応えて87km(Mグレード。PおよびGグレードは83km)を実現したのもポイントだ。
というのがアウトランダーPHEVの10年間。本多氏は「それこそ多くのお客さまにいいところ、よくないところを伺いました。そしてそれらを盛り込んだのが今回の新型アウトランダーPHEVです」と結んだ。
試乗は発進加速の体験からワインディング路へ進む。折り返したあとはパイロン区間でのスラロームを行なうというコース。
試乗用の先代アウトランダーPHEVも2.4リッターエンジンモデルなので力強さは十分感じられたが、現行型はさらにパワフルであり、それでいて加速中の車内の静かさも上。
設定された試乗コースにはワインディングコースからパイロンスラローム区間があったが、S-AWCを採用する新旧モデルともに安定感は十分。しかし、ターマックモードに設定した新型アウトランダーPHEVではよりハイスピードで走り抜けることができた。また、「オーバースピードか」という状況では高出力なツインモーター4WDとS-AWCの組み合わせによって姿勢が破綻せず、まるでスポーツカーのようなドライビングを体験できた。
「PHEVオーナーズミーティング in 岡崎製作所」の会場を紹介
ここからは今回の主題である「PHEVオーナーズミーティング in 岡崎製作所」の模様を紹介していこう。
「PHEVオーナーズミーティング in 岡崎製作所」のメイン会場にはステージやフードコーナーなどが並ぶが、そこで使用する電気はアウトランダーPHEVから給電されるというスタイルになっている。
車両展示の中でとくに注目を集めていたのが、現行型エクリプス クロス PHEVのラリーカー。こちらは三菱自動車岡崎製作所で務める社員を中心としたチーム。社員によるラリー活動ではあるが、会社のクラブではないため完全プライベートチームだ。
チーム監督の水野豪氏によると、もともと社内にはラリー好きな社員が多くいるという。しかし、現在はWRCなどでのワークス活動を行なっていない。そのためラリー界での三菱自動車の名前が過去のものになってしまうことを懸念する声も多いという。そこで水野氏やドライバーを務める揚村氏が中心となり社員チームを立ち上げて2022年からラリーへの参戦を開始した。
参戦カテゴリーは北海道で行なわれるSUV/ピックアップトラックのラリーシリーズ、XCRスプリントカップ北海道。2023年はすでに2戦に出場し、どちらもXC-2クラス2位となっている。このあとの参戦スケジュールは7月7日~9日の「2023ARKラリー・カムイ(後志)」、8月26日~27日の「ROC.H RALLY(TBD)、9月8日~10日の「RALLY HOKKAIDO(十勝)、10月7日~8日の「とかち2023(陸別)」となっているので、現地へ行ける方はエクリプス クロス PHEVのラリーでの走りを見てほしい。
デイキャンプスタイルに工場見学、テストコース同乗試乗などを満喫
参加者用の駐車場は後ろ向きの入庫が求められていたが、これには理由があった。きれいに止めていくとクルマ同士が背中合わせ(リアあわせ?)となるが、今回は後方のスペースを空けるように止めることで、クルマの後ろ側にテーブル等を展開する「デイキャンプスタイル」が取れるようにしていたのだ。
アウトランダーPHEVやエクリプス クロス PHEVはラゲッジに給電ポートがあるので、テールゲートを開けて電源コードを引くことでクルマの後に展開したテーブルでポット等の電気製品が使用できるというわけだ。イベント当日は風が強かったが、天気はよかっただけにこのスタイルは大成功と感じた。
さて、この「PHEVオーナーズミーティング in 岡崎製作所」の目玉は参加者向けに用意されていた構内コンテンツ。項目を挙げるとまず開発ドライバーの運転によるテストコース同乗試乗体験。高速周回路、クロスカントリー路、ハンドリング路といったコースをテストドライバーの解説付きで同乗できるという、このイベントでしか体験できない特別なものである。
ほかにもアウトランダーPHEVやエクリプス クロス PHEVの生産工程が見学できる岡崎製作所生産工場見学。さらに岡崎製作所内にあるデザイン開発設備の見学。そして三菱自動車が生産してきた歴代のクルマが見られるオートギャラリー見学が用意されていた。
どれも魅力的なだけにすべてに参加したいところだが、会場の岡崎製作所は広くて移動に時間を要するのと、各コンテンツともに体験、見学にたっぷり時間を取ってくれていたため、すべてのコンテンツに参加するのはタイムスケジュール的に厳しい。
それだけに参加者は大いに考えて参加コンテンツを決めていたが、どれに参加しても満足度が高いものだったようだ。Car Watchが撮影できたのはテストコース同乗試乗と岡崎製作所工場見学で、それらを写真で紹介したい。
「PHEVオーナーズミーティング in 岡崎製作所」の参加者にインタビュー
盛りだくさんの内容だったイベントなので、参加者の皆さんもあちらへこちらへと積極的に動いていたように感じられたが、そんな中でも3組の参加者からPHEVのことについてコメントをもらったので紹介しよう。
工場見学に参加していた遠藤さんの愛車は先代アウトランダーPHEV。2017年式なのでダイナミックシールドになっているモデルだ。購入した理由はPHEVであったこと。電気とガソリンそれぞれで走ることができる点に魅力を感じたそうだ。
クルマの利用は通勤が主体とのことだが、もちろんレジャーでも乗っていてご家族での旅行もアウトランダーPHEVで出かけているそうだ。なお、アウトランダーPHEVは室内も広さも十分なので家族4人で乗っても快適とのことだった。先代ということでバッテリ容量は現行型と比べると少ないが、それでも通勤で乗る距離であればEV走行が可能なので遠藤さんの乗り方では不足はないという。
また、自宅には200Vの普通充電器を設置しているとのことだったので、気になる電気代のことを伺ってみたところ、クルマの充電をすることで電気料金は上がるが、負担と感じるレベルにならないし、ガソリン代を払っているより安く済んでいるそうだ。
遠藤さんは通勤でクルマを使うのでガソリン代との比較にはシビアな目をお持ちだと思うが、そういう乗り方をする人からの「ガソリン代より安く済んでいる」というコメントはアウトランダーPHEV購入検討者の背中を押すものだろう。
なお、遠藤さんのアウトランダーPHEVはダイナミックシールドになってすぐのモデルだが、グリルとフォグライトベゼルをその後に登場したモデル用に付け替えるという小技カスタムも施していた。
今回のイベントで駐車場デイキャンプスタイルを楽しんでいた豊田さん。アウトランダーPHEVは2022年10月に新車購入。アウトランダーPHEVを選んだ理由はSUVに乗りたかったというもので、他銘柄のSUVと比較して選んだという。決め手になったのは主にスタイル。
試乗したときにスタイルのよさを確認しつつ、インテリアの仕立てのよさにも感動したという。ただ、最後までPHEVであることはそれほど意識していなかったという。しかし、購入後はPHEVのメリットを満喫されていた。豊田さんは集合住宅にお住まいなので駐車場に充電器がないものの、自分で発電するPHEVであるため普段乗りでのEV走行は十分できているという。
また、大型ショッピングモールに行くと充電設備付きの駐車スペースがあるので買い物中に充電ができるのだが、買い物を終えて戻ってくる時間で約100円の料金で済むし、その充電量で自宅からモールの往復が走れるので、買い物のどこかで「100円節約する」と燃料費はかかっていないという計算になる。そんなことからガソリンスタンドへ行く機会は減り、自宅の電気も使わないので電気代に影響もないのだ。
現行型アウトランダーPHEVにお乗りの曽我さん。クルマは2022年6月に納車となった。以前は他メーカーのSUVハイブリッド車に乗っていたそうで、そのころから「ハイブリッド以上の機能を持ったSUVがほしい」と思っていたという。そこに登場したのがアウトランダーPHEVだった。普段は週末の買い物や家族を駅まで送るなどに使用しているとのこと。
また、自宅にはクルマの購入にあわせてパナソニック製の6kW充電設備を導入しており、充電は自宅で行なっている。そしてガソリンのほうだが、走行距離が伸びるような乗り方をしていないこともあって全然減らないという。アウトランダーPHEVには劣化したガソリンの使用を予防するため、2か月ほど給油されていない場合、メーターにメッセージが出る機能があるそうで、曽我さんもそのメッセージを見たことがあるくらいガソリンスタンドには行ってないそうだ。
なお、蘇我さんはテストコース同乗試乗に参加されたが、そこでの体験から「普段はクルマの持っている性能をほとんど使ってない」と感じたという。そして改めてアウトランダーPHEVが気に入ったそうだ。
オーナー同士が選ぶ「オーナーズPHEVいいね!コンテスト」
最後にイベント参加者の投票による「オーナーズPHEVいいね!コンテスト」を紹介しよう。
こちらは参加者にあらかじめ答えてもらった愛車のアピールポイントなどを出力したPR用紙を駐車中のクルマのウィンドウに飾り、それを読んだ参加者が「いいな」と思ったクルマのエントリー番号を投票するというもの。こだわりのポイントや特徴あるエピソードなど伝えることができるので、用紙の文言を考えるのも楽しいコンテンツだ。当日は得票数によって順位がついたが、駐車場をまわりながら読ませてもらったPR用紙はおもしろいものが多かった。
晴天のなかで開催された「PHEVオーナーズミーティング in 岡崎製作所」。愛車を生産する工場や愛車が開発されたテストコースでコンテンツから開発者トークライブなどオーナーには刺激的かつ有意義なものだったに違いない。実際、参加者からも次回開催を望む声も聞けたし、応募に漏れた方からの「次回は出たい」という投稿も目にした。ぜひ継続開催を期待したい。