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三菱自動車、岡崎技術センターの新R&Dオフィスビル公開。2019年に新車種2モデルの登場、既存車種5モデルの刷新を予告

増岡浩氏ドライブの新型「デリカD:5」にもプチ試乗

2018年11月27日 開催

10月に利用を開始した岡崎技術センター内の新R&Dオフィスビル

 三菱自動車工業は11月27日、愛知県岡崎市にある岡崎技術センターにおいて新R&Dオフィスビルを報道陣に公開。同ビルの概要などについて副社長執行役員の山下光彦氏、執行役員 開発マネージメント本部長の三浦順氏、車両技術開発本部長の原徹氏が登壇して概要を説明した。

 新R&Dオフィスビルは10月に稼働を開始したばかりの開発拠点。これまで同じ岡崎地区、同じビルで仕事をしていながら連絡事項のやり取りをメールで行なうなど、顔を突き合わせて仕事を進めていなかったことが多くあったという。そのため、新R&Dオフィスビルではフロア内に柱を設けないといったことをはじめ、フロア間を容易に移動できる吹き抜けダブル階段の採用、各フロアに多目的で使用できるコミュニケーションスペース(100人規模の集会が可能)やリラクゼーションを目的にしたオープンテラスなどを設置。従業員同士でコミュニケーションをより図りやすくするとともに、休憩をしっかり取れる場所を用意するといった働きやすい環境を提供することで、業務の効率向上や新しい価値の創造を目指している。

 延床面積は約3万4719m2(地上8階)で、サプライヤーからの出向社員などを除く三菱自動車の社員として約2000人が働いている。

新R&Dオフィスビルのエントランス。1階には会議室、応接室、食堂、コンビニなどがある
ビルにはカーリフトも用意され、当日は4階のオフィスエリア中央に車両が展示されていた。コミュニケーションスペースもあり、他フロアの社員同士で会議などができるようになっている
休憩エリア。外のテラスでもWiFiの利用が可能という
吹き抜けダブル階段。フロア間の移動が容易なほか、空調としての役割も担う吹き抜けの形状によって高い換気機能を有する
少人数で会議ができるスペース。周囲の喧騒から離れて集中して作業ができる「多目的集中ブース」と呼ばれている
大人数で会議ができるスペース。会議室を容易に予約できる会議室予約システム付
リフレッシュしたいときに持ってこいの屋上庭園は4階にある
2階の食堂では食事する人数に合わせてさまざまな形状のテーブルが用意される。モニターにはメニューとともに残数の表示も。ユニークなのはフロアに書かれた英数文字。この日はAメニューが「カレー」(300円)だったが、「A/56」と書かれたところは「カレーに56人が並んでいます」という意味。ひと目で何のメニューにどれくらいの人が並んでいるかが分かるようになっている

2019年に新車種2モデルの登場、既存車種5モデルの刷新を予告

副社長執行役員の山下光彦氏

 説明会でははじめに山下副社長が登壇して挨拶を行ない、「岡崎工場は製作所と開発部門が併設される施設で、総面積約100万m2のうち開発部門が半分以上(58.5万m2)の面積を有しています。ここ岡崎が三菱自動車R&Dの中心拠点になるのですが、国内では開発拠点が4か所(十勝、東京、岡崎、京都)に分散しています。世界を入れますと欧米、東南アジア、中国を含めて計13か所のオペレーションを有しています」と、開発拠点の概要について紹介するとともに、2016年の燃費不正問題以降、社内改革の陣頭指揮を執ってきた山下副社長が掲げた「PRev(Performance Revolution)」について紹介。「三菱自動車に着任以降、PRevという名前で開発部門を中心とした改革に着手しました。この構造は会社の将来像を描き、それを実現するための方策を積み上げていくというもので、(ピラミッド構造の)一番底辺は会社で働く人たちの文化や就労環境になります。今回の新R&Dオフィスビルは就労環境を変える一環でもあります」とコメントした。

 また、PRevの成果として2016年以降の同社の動向についても触れ、「エクリプス クロス、エクスパンダー(インドネシアなどで展開する7人乗り新型ミニバン)を発表しましたが、エクリプス クロスは2019年次のRJCカーオブザイヤーを受賞し、エクスパンダーもインドネシアで9つの賞を受賞しました。また、岡崎地区は長い歴史がありまして、老朽化設備が増えてきているとともに、新しい技術開発に取り組む必要性もあり、この設備の更新と新設が急務だったことから昨年から投資額を増やしました。また、開発費についても2009年時と比べると現時点では倍以上を費やして新しい技術開発、商品開発に取り組んでいます。加えて品質改善にも力を入れており、お客さまに新車をお届けしたあと、3か月以内にどの程度の問題が発生するか調査していますが、この2年間で飛躍的に下がってまいりました」と報告を行なった。

岡崎地区の概要
開発は十勝、東京、岡崎、京都で行なわれている
「PRev(Performance Revolution)」について
PRevの活動内容
2016年以降の開発部門の成果
「楽しく仕事をするからこそ、人を魅了するクルマがつくれる」とのコンセプトのもと、新R&Dオフィスビルが作られた
執行役員 開発マネージメント本部長の三浦順氏

 そして新R&Dオフィスビルの概要については執行役員 開発マネージメント本部長の三浦順氏が説明を行ない、同ビルのコンセプトとして大きく「コミュニケーション(会議)」「コンセントレーション(ひらめき)」「リラクゼーション」の3点が重要であることが語られるとともに、1階と2階に食堂、会議室、カフェ、祈祷室などが備わり、4階から8階がシンメトリーデザインになって同じレイアウトであることなどが解説された。

 また、集中力を妨げる要因として「空調・室温」があったことから新R&Dオフィスビルの中央にレイアウトされる吹き抜けを利用した換気システムを採用するとともに、Skype機器の設置や情報共有ツールとしてディスプレイ・サイネージなども導入したとのこと。

新R&Dオフィスビル建設の背景と狙い
新R&Dオフィスビルの概要
新R&Dオフィスビルの7つのコンセプト。「コミュニケーション(会議)」「コンセントレーション(ひらめき)」「リラクゼーション」の3点が重要
コミュニケーションについて
コンセントレーションについて
リラクゼーションについて
フレキシビリティについて
スマート(IT)について
ダイバーシティについて
クール(デザイン)について
環境対応アイテムについて
車両技術開発本部長の原徹氏

 一方、車両技術開発本部長の原徹氏は同社の技術開発の取り組みについてのプレゼンテーションを行ない、2017年の東京モーターショーで発表した同社の新しいブランドメッセージ“Drive your Ambition”などを解説。Drive your Ambitionには大きな志を持つことで生まれる独創的で存在感のある商品・サービスを通じて、世界中の顧客とともに成長していきたいという同社の決意が込められており、開発部門として特にSUV、EV(電気自動車)、システム(電子制御サスペンションやAI[人工知能]、コネクテッド機能など)の3つの価値を高めていくことを紹介。

「SUVは力強い走りといったことに加え、SUVとしての新たな価値を生み出していきたい。EVはならではの力強い走り、内燃機関にはない静粛性といった特徴に加えて電動化という技術で新しい価値が生み出せるのではないか。システムについては、現代のクルマは“システムの塊”と見ることができ、さまざまなシステムを組み合わせることで新しい価値を生み出せるのではないかと考えています」とコメントした。

 また、原氏のプレゼンテーションでは2019年の展開についても触れられ、新車種(フルモデルチェンジ含む)2モデルの登場、既存車種の5モデルの刷新を予告するとともに、「今後も電動化に取り組んでいきます。PHEVのシステムを軸に、バッテリー式EVやシリーズハイブリッドといった電動化技術を幅広く搭載していきたいと思います。今後もDrive your Ambitionを実現するクルマづくりを進めていく予定です」と述べて締めくくった。

同社の新しいブランドメッセージ“Drive your Ambition”
開発部門として特にSUV、EV(電気自動車)、システムの3つの価値を高めていく
EVの欠点と利点
新しいコンセプトとして「Patissier Concept」を掲げて技術開発に取り組んでいる
2019年の動向について
新R&Dオフィスビルとともに新しく作られた地上4階建ての「環境試験棟」も公開
環境試験棟ではシャーシダイナモが設定され、車両をシャーシダイナモの上で走らせながら温度、湿度、風速のコントロールとともに雨や雪を実際に降らせることができる。室内で車両にとって過酷な状態を作り出し、不具合が出ないかをチェックするというものだ。フロントまわりに雪が溜まった状態であることが写真でもお分かりいただけると思うが、これによって例えばラジエターに走行風が当たらず、オーバーヒートにならないかといったことを確認していた。これまでは開発サイドが希望する気候条件の地へ実際に赴き、条件が揃うまで待つという時間も予算もかかっていたというから、この環境試験棟が完成したことのメリットは大きい
こちらは「電波試験棟」(第二電波試験棟)
TV、FMラジオ、携帯電話といったさまざまな電波に対して正常にクルマが作動するかどうかを確認する電波試験棟。一方で車両側も若干ではあるものの電波を発しているといい、その電波が周囲のTVやラジオ、同乗者のペースメーカーといったものに影響を及ぼさないかも確認しているという。メインフロアとなる「電波暗室」は中の電波を外に出さない、外の電波を中に入れないように作られており、クルマから出る電波を確実に計測できるという

新型「デリカD:5」にプチ試乗

増岡浩氏がドライブする新型「デリカD:5」に試乗できた

 なお、当日は11月21日に予約受け付けを開始したばかりの新型「デリカD:5」や「エクリプス クロス」をテストコースでプチ試乗できた。

 新型デリカD:5のドライバーは、長年に渡ってダカールラリーに参戦したラリードライバーであり、現在は三菱自動車の広報部に所属する増岡浩氏が担当。テストコース内にある登坂路や砂利道で、新型デリカD:5の実力を(助手席で)体感した。

新型「デリカD:5」と「エクリプス クロス」にテストコースで乗った

 26.3度という登坂路では上る途中で一時停止し、ヒルスタートアシストを効かせながら後方に下がることなくトルクフルなエンジンによって難なくクリア。そして砂利道では高速走行(メーター読みで120km/h前後は出ていた)しながら笑顔でドリフト走行のきっかけ作りをする増岡氏。しかしながら新型デリカD:5は破綻することなく、スムーズに正しい姿勢に戻っていく。これは独自のAWC(All Wheel Control)思想に基づいた4WDシステムや、危険を回避するために4輪のブレーキを独立制御しながらエンジン出力も最適に制御し、車両を安定させるASC(アクティブスタビリティコントロール)のおかげ。

 増岡氏も「こんなことできるミニバン、デリカD:5だけですよ」とコメントしたほか、従来型から最大トルクを5%向上させた直列4気筒DOHC 2.2リッター直噴ディーゼルターボ「4N14」型エンジン(最高出力107kW[145PS]/3500rpm、最大トルク380Nm[38.7kgfm]/2000rpmを発生)や新開発の8速スポーツモードATのフィーリングについては「トルクが上がったし8速に多段化された(従来型は6速)ことでスムーズに走れるし、燃費もよくなりますよね」とその性能についてアピール。

 さらに新型デリカD:5ではフロントウィンドシールドに遮音ガラスの採用、フロアカーペットに遮音材を追加しており、静粛性が高まったことが体感できた。これは家族で乗る機会が多いであろうミニバンでは嬉しい話だと感じた。レーダークルーズコントロールシステム(ACC)や衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)といった最新の安全装備も標準装備するなど、魅力を大幅に高めた新型デリカD:5。まだ予約受付を開始した段階で正式な発売日はアナウンスされていないが(2018年度内に発売する計画)、発売された暁にはその魅力をディーラーでぜひ体感してみてほしい。

新型デリカD:5
エクリプス クロス