試乗レポート
新型「アウトランダーPHEV」に公道試乗 フラグシップとしての風格を感じさせるすばらしい仕上がり
2022年2月2日 10:00
公道での乗り味はいかに
プロトタイプの試乗から3か月、いよいよ市販モデルの「アウトランダーPHEV」を公道でドライブできる機会がやってきた。初期受注が三菱自動車の見込みをはるかに上まわる勢いというのも、いかにこのクルマへの関心が高いかがうかがえる。そのうち3列7人乗りの販売比率が87%にも達しているとのことで、関係者にとっても苦労した甲斐があったと言えそうだ。
あらためて見ても、内外装デザインは個人的にもなかなか好み。ダイナミックシールドもすっかり板についてきた印象で、フラグシップよろしく上質で高級感のあるインテリアの雰囲気も申し分ない。
まずは試乗会の開催された幕張周辺を走る。バッテリが3分の1程度残った状態から走り始めたので、最初のうちはEV状態での走行となったが、これまでにも増してアクセル操作にリニアに応答するレスポンスと力強い加速や、より静かで滑らかになった走りもフラグシップとしてふさわしい味わいがある。
ターマックモードにするとパワーメーターの針の動き方がノーマルモードとは全然違ってアクセルレスポンスがさらに鋭くなり、ハンドリングの正確性も高まって走りの一体感が増す。進化した「S-AWC」の恩恵は公道を普通にドライブしてもしっかり感じられる。ノーマルモードのほうが操舵に対する反応が穏やかで操舵力も軽く乗りやすいものの、ターマックモードのこの意のまま感を常時味わっていたいと思うのは筆者だけでないだろう。
公道で試乗するにあたり気になっていたのは、乗り心地がどうなのか。クローズドコースで乗った限りではストローク感があり、とてもしなやかなだと感じていたのだが、その印象からすると路面への感度がやや高いように感じたのは正直なところ。やはり、これほど重量もあれば重心の高いクルマで姿勢変化を抑え安定して走らせるには、それなりに固める必要もあるのだろうし、OEMタイヤの特性も影響していそうだ。
気持ちのよいモータードライブ
ところが高速道路を巡行すると、若干見受けられたコツコツとした感覚は気にならなくなる。たっぷり確保されたサスペンションストロークによりうまくバウンシングさせることでフラットな姿勢を実現している。締めるべきところを締めて緩めるべきところを緩めている印象で、その案配が実にちょうどよい。
気持ちのよいモータードライブ感は高速道路でも変わらず。電動駆動車は車速域が高くなると頭打ちになるものが少なくないが、アウトランダーの新世代PHEVシステムは高速域でも伸びやかな加速フィールを楽しませてくれる。思わず踏みたくなってしまうような味付けだ。加えてエンジンかかっても全然気にならないぐらい静かで振動も小さい。エネルギーフローの表示を見ていないと分からないぐらいだ。
新設のパワーモードは、車速のすでに高い状態からだとあまりありがたみを感じないのだが、低い車速域からの瞬発力はなかなかインパクトがある。普段はエコドライブでも、たまにはパワーモードにして走りを楽しむのもよいんじゃないかと思う。
チャージモードでは常時エンジンがまわるので、信号待ちや低速走行時などではさすがにエンジンの存在は感じるが、走り出して車速がある程度高まれば前述のとおり気にならなくなる。基本性能として静粛性にもかなり配慮されていることがうかがえる。
いわゆるワンペダルドライブを提供する「イノベーティブペダル」も、いろいろな要素が複雑に絡むPHEVでは違和感なく仕上げるのは難しいであろうところを、かなり自然な特性を実現できていることにも感心した。
意外だったのは、先代から60mmもワイドになったのだから、もっと大きさを感じるものと思っていたのに、実際に運転してみるとそうでもなかったことだ。それだけクルマの動き方やパッケージングがうまくまとめられているということだろう。
運転を代わってもらい後席にも乗ってみると、前席でも感じた上質さと高級感は後席でも変わらず。後方から侵入してくる音も比較的よく抑えられている。目線が前席よりもだいぶ高いところにありながらも、筆者が座っても頭上空間には余裕があり、全幅の拡大も効いて身体の横方向にも余裕がある。ヒール段差は十分だが、フロア下にいろいろ内蔵されているせいか前席の座面を下げた状態だと後席の足入れ性はあまりよろしくないので、状況によっては座面を上げたほうがよい。広大で開閉可能なサンルーフ(オプション)の開放感や、リアサイドウィンドウにサンシェード(上級グレードに標準装備)があるのもありがたい。
オフロードもなんのその
さらに今回の試乗会ではオフロードコースを走らせてもらうこともできて、タイヤが標準装備のエコピアなのに、こうしたコースでここまで走れてしまうのかということにまずは驚いた。ドライブモードの選択によって走りが変化し、ノーマルでも走破性としては十分すぎるほどのところ、グラベルモードではリアを振り出しながら攻めた走りを楽しめるのに対し、マッドモードではトラクションが増して、リアから押し出しながらフロントで引っ張って前へ前へ進もうとする感覚が強まり、より安定して速く走ることができる。
全体として、フラグシップとしての風格を感じさせるすばらしい仕上がりであった。PHEVシステムについても、2.4リッターエンジンにツインモーターという基本構成こそ踏襲するが、もはや「改良」というレベルではなく、「新世代」とうたっているとおり別物に進化していることがよく分かった。次は件の新世代PHEVシステムのもう1つのウリである航続距離の大幅な伸長を確認するとともに、今回はあまり試せなかった運転支援機能やインフォテイメント系の利便性と、お伝えした洗練された走りをより深く味わうべく、コロナ禍が落ち着いたらぜひどこか遠くまで走ってみたいと思う。