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【短期連載】テインのサスペンション減衰力コントローラー「EDFC5」をストリート&サーキットで試す!!

第2回:ストリートをターゲットとした全長調整式サスペンション「FLEX Z」とのマッチングはいかに?

ストリートをターゲットとした全長調整式サスペンション「FLEX Z」とサスペンション減衰力コントローラー「EDFC5」を組み合わせ、さまざまなステージで走ってみた

「FLEX Z」の特徴点をおさらい

 サスペンションメーカーのテインが手掛けている「EDFC5(Electronic Damping Force Controller)」について前回お伝えしたこの短期連載。第2回はいよいよそのEDFC5を足まわりと組み合わせて取り付けを行ない、街乗りからサーキットまであらゆる状況を走ってみる。

 今回EDFC5と組み合わされることになった足まわりは「FLEX Z」というストリートをターゲットとした全長調整式サスペンションだ。ショックアブソーバーは複筒式となっていることが特徴的であるこの製品は、価格15万1800円とリーズナブル。全長調整式サスペンションのエントリーモデルといえる存在である。けれどもスプリングレートはフロント&リア共に12kgf/mmであり、車高ダウン量は純正車高比で-30mmが推奨値。調整範囲はフロント-73~1mm、リア-71~20mm(推奨車高調整範囲は-40~-20mm)を実現。強化アッパーマウントがセットとなっている。

筆者の愛車であるフェアレディZ(RZ34)。純正足まわりの状態
「FLEX Z」で推奨値である30mmローダウンした状態

「単筒式のほうが高価でありスペック的に優れると思われがちですが、実は複筒式には複筒式の良さが存在します。複筒式は単筒式のようにガス室がなく、その代わりにベースバルブが存在します。そのおかげでガス圧を低く設定することが可能になっています。結果としてストロークした際のガス反力が小さいので、路面のちょっとした凹凸などをいなしやすいです。また、ガス室がない分ストロークを長く取れますので、安定して減衰力を出しやすいというメリットもあります」と語るのは、前回に引き続きご登場いただくテイン開発課の渡邊宏尚氏。ストリートを考えたからこその複筒式という答えなのだろう。

前回に引き続き株式会社テイン 開発課の渡邊宏尚氏に協力を仰ぎ、街中からサーキットまでさまざまなステージでFLEX ZとEDFC5の組み合わせを試した

 フロントのショックアブソーバーを見ると、下に向かって絞り加工が施されていることが伺える特徴的な形状だ。容量やストロークを確保しつつ、サスペンションアームなどに干渉しないギリギリを狙っている。いっぽうのリアはショックアブソーバーとスプリングを同軸上にするコイルオーバーではなく、純正と同様に別々に配置したバネ別体にしたところもこだわりだ。「競技車両のようにボディやアームを強化してコイルオーバーにするならそれも手法の1つだと思います。ボディやアームを純正とするのであれば、やはり純正と同じ形状にするのが良いというのが当社の考えです」と渡邊氏は語る。

 今回のRZ34フェアレディZ用のショックにはバンプラバーが入れられているが、例えば前型のエルグランドや現行アルファードのようにショックアブソーバーにバンプラバーがなく、ボディ側にバンプラバーがついているものは、同じようにバンプラバーなしとしている。もしもショックアブソーバーにバンプラバーを与えてしまった場合、フルストロークしてバンプラバーに接した時、アッパーやアームに一気にストレスがかかってしまうことを嫌った結果なのだとか。ラリーをはじめ悪路で足まわりを鍛え上げてきたテインらしさが光る解答だ。

全長調整式サスペンションのエントリーモデルである「FLEX Z」。長いストロークと低反発・低フリクションが特徴となる複筒式を採用し、RZ34フェアレディZ用のスプリングレートはフロント&リア共に12kgf/mm。価格は15万1800円
フロントのショックアブソーバーは下に向かって絞り加工を施し、段面積を確保することで強度を高めた

 FLEX Zのもう1つの特徴がスプリングまわりにあった。まず目についたのがリアのスプリングシート部に樹脂製のスラストワッシャーを与えていたことだ。スプリングの音対策、そして車高調整時のやりやすさも考慮した結果がそこにある(ちなみにネジ部はテフロン加工を施し錆や固着を防止して回しやすい)。「スプリングってつぶれる時に捻りながらつぶれていくんですよ。このクルマの場合アッパーはバネが固定されてしまうので、捻りをキャンセルするために樹脂製のスラストワッシャーをココに入れたんです。これによりバネが戻る時に発生する弾くような音がなくなります」とのこと。スプリングは遊びがないように自由長をかせぐためにバリアブルとしてレートの低い部分を作っているが、不等ピッチ部を中央にしているところがポイントの1つ。このバネは樽型なのだが、不等ピッチ部が端にあるとそれもまた異音の原因となるためにこのような形状としたそうだ。また、バネの金属線間密着による異音を取り除くために樹脂を巻いている。ストリートを考えてこのようにさまざまな対策が行なわれているのだ。

スプリングについては素材にSAE9254(引っ張り強度200kgf/mm2以上)を使用し冷間成形を行ない、優れた耐へたり性と高い品質安定性を実現したという。リアのスプリングシート部には樹脂製のスラストワッシャーが備わる

 さらに特徴といえるのがEDFC5のモーター部を取り付けるため、アッパーマウントには窪みが設けられている。車両側に空間の余裕がある車両にはこのような対策はないが、RZ34フェアレディZはこのような形状となる。ストローク長としては不利となるが、ショックのケース長を詰め、代わりに径を大きくすることで対応。複筒式でガス室がないことも幸いし容量不足には陥らない。ちなみにリア側のアッパーの窪みには両側に穴とグロメットが備えられ、そこには指が入るようにも設計されている。もしもEDFC5をつけなかったとしても、ショックを外すことなく減衰力調整が可能。日産のリアアッパーは袋状になっており、アフター品を取り付けた場合はボディ加工の必要がある場合が多いが、この作りであればそんな心配はなくなる。EDFC5を取り付けた場合はそのグロメットから配線を取り出して車内に引き込めばOK。いずれにしてもボディ加工する必要がないところはうれしい。

アッパーマウントに窪みを設け、EDFC5のモーターを取り付けられるようになっている。リア側のアッパーの窪み(写真右)には両側に穴とグロメットを備え、そこに指が入るように設計。これによりEDFC5が付けられなかったとしてもショックを外すことなく減衰力調整が可能
RZ34フェアレディZに「FLEX Z」を装着したところ。ショックにはブラスト処理した下地の上に防錆塗料を用いた特許取得済の2コート1べーク粉体塗装を用いた鮮やかなテイングリーンを採用

街中での「FLEX Z」とEDFC5のベストセッティングは?

まずは街中での印象を確かめる

 装着が完了し街中からまずは走ってみる。EDFC5の設定は減衰力最弱となる96段(数字が小さいほうが硬い)とし、Gとジャーク制御を入れた状態がオススメだと言われたのでそれを試すことにした。走り出してまず感じたのは、スプリングレートがアップされたにもかかわらず、路面の凹凸がそれほど気にならないことだった。アタリはこの手のサスペンションにしては柔らかく感じる。これぞ複筒式の良さの1つなのだろう。それでいて加減速や旋回を行なってみると瞬時に減衰力が引き締まり、ピッチもロールも少なくフラットに動いている。減衰力最弱ではステアリングを切った時に操舵感が出ないなどの違和感があるものだが、スカスカにならずあまり気にならないところがおもしろい。

 ただし、96段がデフォルトだとストレートを走る時、路面が荒れてくるとボディの収まりがわるいようにも感じる。そこで今度は前後を中心値の48段にセットして走ってみる。すると、ペースが上がるような状況であってもフラットな感覚は高まり、クルマとの一体感も出てくるようになった。乗り心地としてはハードな方向に行くが、ペースの速いワインディングに行くと操りやすくなってきた。その際、EDFC5は常に前後左右の減衰力を見事なまでに変化させていき、とにかくフラットな姿勢をキープしていることに気づく。

前後の中心値を48段にセットすると、乗り心地はハードな方向に行くものの、ペースの速いワインディングなどに行くと操りやすくなった

 試しにEDFC5をマニュアルモードにし、Gやジャークに反応しないFLEX Z本来の状態で走ってみると、先ほどまで感じていたフラットさはなくなり、一般的なサスペンションに様変わり。フラットな路面ではこれもわるくはないのだが、路面の継ぎ目や轍などを通った際、乗り味はやや荒っぽくなることは事実だった。また、ステアリングの操舵角も増えている。まるでクルマが大きく重くなってしまったかに思える動きが本来の姿だったということ。逆に言えばEDFC5はクルマの性格を激変させてしまうくらいの能力があるということなのだろう。

EDFC5をマニュアルモードにしてGやジャークに反応しない状態で走ってみたが、乗り味はやや荒っぽくなった印象

 その後、数週間に渡ってさまざまなセットで1000kmほど走ってみた。そこで行き着いたセットはフロント30段、リア60段。これが個人的にはオールマイティで好感触。スポーティさもあるし、乗り心地も確保。上質さもあると思えるほどだ。試しに運転してもらって助手席も体験してみたが、これなら純正以上の快適さがあると感じる。ペースを上げてスポーティに走りたくなったらリアを45段にするとより一体感が増す感覚が得られるが、EDFC5らしいアクティブダンパーフィーリングは影を潜めていく。細かな話ばかりだが、こんなリクエストを車内のダイヤル1つで次々に受け入れてくれるのだから楽しいし爽快だ。

1000km走ってみて行き着いたフロント30段、リア60段がオールマイティで好感触だった

サーキットを走って分かったEDFC5がもたらす恩恵とは

サーキットテストも実施

 自分的には仕上がったと思える仕様で、続いてはサーキットテストを行なった。走り出してまず感じるのは、グリップの範囲内で走っていれば違和感なく旋回していくということだった。ステアリングの操舵角は相変わらず少なく、かなり思い通りの動きを展開してくれる。ただ、さすがにフル加速&フル制動が連続するサーキットでは、ストリートのようにフラットに動いているという感覚は薄くなる。

 また、旋回Gが高くなるシーンにおいて、EDFC5が示す減衰力の設定段が0に到達してしまうことがあった。速く走ろうとなるともっと踏ん張ってほしい。もう少しスプリングレートを高め、ショックアブソーバーの受け持ち分担をスプリングで吸収する必要が出てくるように思える。そんな向きには次回お伝えする「MONO RACING」のほうがオススメかもしれない。

旋回Gが高くなるシーンではEDFC5が示す減衰力の設定段が0に到達することも

 最後はEDFC5が行なっている制御を理解するため、マニュアル、G制御のみ、ジャーク制御のみという3つの状態を作り走ってみる。まずはマニュアル状態、つまりは減衰力固定で走ると、明らかにステアリングの操舵角が大きくなり、さらに荷重移動もしっかりと行なわなければ曲がらないことが理解できる。今まではEDFC5のおかげで曲がれていたということがイヤというほど分かる。逆にメリットとして挙げられるのはスライドコントロールのしやすさだった。足まわりが固定されたことでインフォメーションが一定しているところがそんな印象をもたらすのだろう。

 G制御のみの場合は旋回初期の動きはマニュアル状態と同じだが、旋回が始まるとしっかり感が増していくところが特徴的。コーナーへのアプローチを今まで通りに行ないたい人には良いかもしれない。最後にジャーク制御のみで走ると、コーナー進入からステアする瞬間までの動きは良いが、コーナーのクリップ付近では耐えきれずに一気にロールし曲がらなくなってくる。はじめは何でこんなに制御を独立させたのかと疑問だったが、このように1つひとつの制御を独立して味わうと、EDFC5が何をやっていたかをきちんと学べる。そこが実におもしろかった。

EDFC5では多岐にわたるセッティングを行なえ、自分好みの足を追求することができるのが大きな魅力。これはスポーツカーだけが対象のものではなく、街中をより快適に走りたい、たとえばミニバンのようなモデルでも有効なパーツと言えるだろう

 このようにEDFC5がもたらす恩恵は乗り心地から限界走行まで多岐に渡ることが理解できた。それを支えていたFLEX ZがADVANCE ニードルを採用し、幅広い減衰力調整を持っていたこともまたそれを支えていたのだろう。この組み合わせはストリート用のサスペンションとしてかなり高いレベルにあることは間違いない。

Photo:安田 剛