2015フランクフルトショー

【インタビュー】新型「プリウス」開発責任者の豊島氏に聞く

乗って楽しいのが第一。全ての情報は東京で開示

2015年9月19日~27日(一般公開)

独フランクフルト Messe Frankfurt

トヨタ自動車の新型「プリウス」を欧州初公開

 フランクフルトショーで正式なワールドプレミアを行った新型プリウス。現地を訪れていた開発責任者の豊島浩二氏に、プレスカンファレンス直後の心境と開発の経緯について伺った。

──フランクフルトショーのプレスカンファレンスでのワールドプレミアが終了しましたが、今の気持ちを教えてください

新型プリウス開発責任者の豊島浩二氏。3代目プリウスとプリウスPHVの開発責任者を務め、4代目となる新型も担当する

豊島氏:長い開発期間を経ての公開だったので、ようやくここまでたどり着けたという思いです。開発中にはメディアの注目が高く、デザインを含めてすっぱ抜かれたこともありましたし、開発が順調でないところもあったので、やはり安堵はあります。ですが、まだお客さんに乗ってもらっていません。ステアリングを握ってもらってからがスタートだと思っています。乗ってもらって価値が出るクルマですので、リリースされてからも気を引き締めていくつもりです。

──ワールドプレミアの前にラスベガスで初公開を実施したのですが、どのような経緯だったのでしょうか?

豊島氏:基本的には、日米欧でほぼ同時に公開するというイメージです。多少のタイミングは異なりますが、欧州はこのフランクフルトショーで、日本は10月の東京モーターショーでの公開になります。欧州のみでの公開だとアメリカの全域まで情報が行き届かないとも思うので、ラスベガスでの発表を選びました。ただ、欧米ともに車両の詳細はお知らせしていません。全ての情報は東京での開示になります。

──4代目プリウスは、どのような性能や性格を持ったクルマなのでしょうか?

豊島氏:詳細な情報はお話しできませんが、新型は、ハイブリッド技術の底上げが使命だと思っています。よく例える話ですが、100m走の世界記録を持っているウサイン・ボルト選手が10秒の壁を切るのは比較的に簡単だったはずです。そこから9.8、9.7、9.6とタイムアップしていくには相当な努力があったはずです。どんどん乗り越える壁も高くなっていくはずで、同じように新型プリウスは、高い壁を乗り越えていくクルマだと思っています。

 ハイブリッド以外にも、ダウンサイジングターボやディーゼルなど燃費の競争相手は多いです。競争も重要ですが、ハイブリッドも含めてすべての技術が壁を越えることで、グローバルで地球環境に貢献していく、それこそが初代プリウスから積み重ねてきたDNAになります。

 加えて新型は、外部給電を通じて社会貢献ができるようなアピールも行っていくつもりです。3代目も100Vでの出力機能は装備していたのですが、プリウスはバッテリーとジェネレーターを装備しています。ですので、万が一の災害時などにも電源を供給できます。「格好よい」「燃費がよい」「走りがよい」「社会によい」の4つを大事にしてきました。

──車両の技術で注目なのは、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)を採用した点だと思いますが?

豊島氏:そうです。TNGAの技術を導入した初の車両が新型プリウスになります。TNGAは、豊田社長の“よいクルマ作りをしていく”という考えを体現したものです。シャシーやボディーなどを共有化して効率を上げながら、さらにクルマ作りの概念も変えていきたいという思いが込められています。

 TNGAを多くのモデルが利用することで、他の車種で鍛えられた技術や機能が、すぐに採用できるメリットがあります。TNGAは常にレベルが上がっていくもので、これまでのようにマイナーチェンジやフルモデルチェンジを行わなくても、すぐに最新の技術が組み込めるようになります。

 TNGAとは車両側の構造改革がベースですが、生産工程やそれに携わるスタッフが常に創意工夫を行ったうえで成り立ちます。機械の性能のみが向上するのではなく、人がレベルアップしていくのがキーです。TNGAを通して人が鍛えられることで、よりよいクルマが生まれてくると思っています。

真鍋裕行

1980年生まれ。大学在学中から自動車雑誌の編集に携わり、その後チューニングやカスタマイズ誌の編集者になる。2008年にフリーランスのライター・エディターとして独立。現在は、編集者時代に培ったアフターマーケットの情報から各国のモーターショーで得た最新事情まで、幅広くリポートしている。また、雑誌、Webサイトのプロデュースにも力を入れていて、誌面を通してクルマの「走る」「触れる」「イジる」楽しさをユーザーの側面から分かりやすく提供中。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。