長期レビュー

高橋敏也のトヨタ「86(ハチロク)」繁盛記

その19:「小ネタでアップグレード! 初期型ハチロク」

 ハチロクに乗り始めてから早3年。そろそろ車検のことを考えなくてはならない時期となった。思えばあっという間の3年、スポーツカーに一度は乗りたいと思い、実際に乗って3年が過ぎた訳だ。

 当たり前の話だけれども、3年あればいろいろ体験する。ハチロクで北海道に渡ったし、生まれて初めてサーキットでスポーツ走行を体験した。生まれて半世紀を過ぎたおっさんとしては、充分に楽しませてもらったと思っている。あくまで個人的な感想だが、ことハチロクに関しては「元をとった」と思っているのだ。

 そんなハチロク。マイナーチェンジもあったし、「86“style Cb”」などというお洒落なモデルも登場した。ことハチロクに関しては「3年経ったことだし、そろそろニューモデルで活を入れるか」ということではなく、初期型からの流れを継承しつつ進化する道を進むようだ。初期型ハチロク(いや、豆腐屋さんのではなくて)乗りとしてはホッとするやら、今後の動向がさらに気になるやら。

 それでも時は流れている。本連載としては大きな区切りとなる車検の前に、是非とも消化したい小ネタがいくつかある。そんな訳で今回は、ハチロク車検前の小ネタ集となりました。私と同じ初期型ハチロクを、いじらず乗っている人、必見です。

スロコンで最高燃費を記録!

写真が分かりづらくて申し訳ないのだが、これが「3drive・REMOTE」のコントローラー。「nor」はノーマルモード(何もしない)を意味する

 という訳で小ネタその1。本連載で取り上げた通り(http://car.watch.impress.co.jp/docs/longtermreview/86/20141125_677205.html)、私のハチロクはピボットのスロットル・コントローラー(スロコン)兼オートクルーズ、「3drive・REMOTE」を搭載している。スロットル(アクセル)の特性を変化させるスロコン、そしてアクセル操作なしで一定速度を保ちつつ走行できるオートクルーズ。この2つの機能を手に入れた後、たまたま大阪へ出張する機会があった。

 実にいいタイミングだ。大阪出張、いつもは新幹線を使うのだが、我がハチロクは「3drive・REMOTE」を装備している。ならばハチロクで大阪を目指し、「3drive・REMOTE」の効果を再確認してやろうじゃないか! そんな訳でハチロクは大阪を目指したのである。ではその、私が期待した「効果」というのはいったい何か?

 我が家から大阪までの距離は約500km、そのうちの大半が高速道路である。しかも走るのは夜なので、一定速度を楽にキープできるオートクルーズ機能は確実に役立ってくれるだろう。これが効果その1だが、こちらは結果はなんとなく見えている。ではスロコンの方はどうかというと、実はこちらの方にも大きな期待を持っていたのである。そう、エコモードでどれぐらい燃費が向上するかだ。そしてこれが期待した効果その2。

 皆さんもご存じの通り、高速道路で一定速度を保って走行すると燃費はぐっと向上する。そんな環境に加えてスロコン、「3drive・REMOTE」のエコモードを活用すれば、さらなる燃費向上が期待できる。ちなみに「3drive・REMOTE」のエコモードは、スロットルの低中域レスポンスを抑制するモードで、エコ運転にピッタリなのだという。確かにこのモードに入れると、アクセルのレスポンスが緩慢になる。なお、このモードは雪道を走るのにも適していたりする(アクセル操作に対してレスポンスがマイルドになるので、滑りにくくなる。実証済み)。

このエコモード、レベル5で大阪まで走ったところ、高橋調べ最高燃費を叩き出した! スゴいぞ「3drive・REMOTE」!

 結果、大成功! 期待通りというか、期待以上の結果が得られた。私の運転だとハチロクは通常、街乗りで1Lあたり9km前後を走っている。これが高速道路では12~13kmまで伸びる(いずれも満タン計算)。それが「3drive・REMOTE」のエコモード(5段階の最大設定、レベル5)を使って高速道路を走ったところ、なんと1Lあたり約15kmを叩き出したのだ! もちろんこれは、3年間ハチロクに乗ってきて最高の燃費である。ちなみに「3drive・REMOTE」のエコモード、そしてオートクルーズを活用しただけで、私自身は運転方法を変えていない。いつも通りの運転をしていただけだ。

 オートクルーズで運転は楽だし、エコモードの活用で燃費も向上した。もちろん「3drive・REMOTE」のスロコンでは、スポーツ走行に適したレスポンスを向上させるモードもある。しかし、街乗りが多い私にとって、もっとも役立つのはエコモードだと思う。普段はエコモードのレベル3あたりに設定しておいて、ちょっと気合いを入れたい時はスポーツモードにして加速を楽しんでもいい。いずれにしても「3drive・REMOTE」はハチロクと相性のいいパーツだと思う。

ボルト6本、ナット2つで本当に……効果がありました!

どう見ても普通のボルトとナット。値段もまあ、自動車部品と言われれば納得できる範囲だし

 小ネタその2。実はこのネタ、早くやろう早くやろうと思っていたのだが、機会がなくて紹介できなかったもの。簡単に言ってしまえば初期型ハチロクを、マイナーチェンジ後のハチロクに近づけてしまうというものなのだ。といっても長期間暖めすぎたため、今年のマイナーチェンジに対応するものではない。昨年、2014年のマイナーチェンジに対応したネタなので注意してほしい。

 その2014年に行われたハチロクのマイナーチェンジ。細部の見直しもあったのだろうが、素人目には大きく分けて2つのポイントがあった。1つは構造的なもの、そしてもう1つは外観的なものである。そしてこの2つのマイナーチェンジ、どちらも初期型ハチロクに取り込めるものだったのだ(注:初期型ハチロクに適用しても、マイナーチェンジモデルとまったく同じになる訳ではないので注意してほしい)。

 まず構造的なマイナーチェンジだが、実はボルト6本とナット2つで構成されているのである。このボルト6本は、サスペンションとボディーを固定しているものなのだが、これを交換することでボディー剛性がアップして操縦安定性と乗り心地が向上するのだという。そしてもちろん、このボルト6本、ナット2つは普通に購入することができ、初期型ハチロクに取り付けることができるのだ。ボルト6本、ナット2つで性能が向上するなら、それを交換するのは当然の流れ。という訳でさっそくチャレンジ。

 ちなみに、このマイナーチェンジではショックアブソーバー、ダンパーも変更されているという。そちらも性能向上に貢献しているのだから、本来であればボルトなどと一緒に交換してしまえばいい。しかし私はサスペンションユニットを丸ごと市販品と交換していたため、あえてボルト6本とナット2つの交換に留めた。もしまったくいじっていないというなら、ダンパーも交換するといいと思う。

 が、しかし。本当にボルト6本、ナット2つを交換するだけで操縦安定性が向上したり、乗り心地がよくなるものかね? 中年おっさんのわるいところは、シンプルかつストレートに物事を見られなくなるところだ(私だけか?)。正直、疑いつつもディーラーである東京トヨタ井草店に連絡を入れ、パーツの入手と交換作業の手配をしてもらう。

入手したボルト6本とナット2つ。なんとなく漂う不安感
いつも通り東京トヨタ井草店さんに到着

 さすがにフロントサスメンバー(というらしい)、そしてリヤアブソーバー部分の取り付けボルト交換作業。私にできるはずもなく、東京トヨタのメカニックさんにお願いする。かなりのスキルと設備があれば交換も自分でできるのだろうが、まあそんなものはどちらも持ち合わせていない私は、清々しい気持ちで作業が終わるのを待つだけだ。途中で作業風景を撮影させてもらったりしてご迷惑をかけた訳だが、想像以上に早く作業は終了した。ボルト6本、ナット2つで2308円(作業工賃は別途必要)で「ボルトとナットはマイナーチェンジモデルと一緒」になった。

フロント側、これが交換するボルトの頭なのだが……狭くて写真が撮りづらいこと
リア側は写真が撮りやすかった。ショックを固定しているボルトを交換する
取り外したところで比較してみる。左側が新フロント用ボルト、その右隣が旧フロント用ボルト。明らかにフランジ(ボルト頭のツバのような部分)の厚さが異なる
右の2本がリア用。こちらもフランジの厚みがまったく異なっている。もちろん厚い方が新ボルト
フロント側、交換終了(しかしこの写真だと、どこのボルトかまったく不明)
リア側、交換終了
こんなに違うフランジの厚み

 問題はこれで何が変わるかである。実はボルト交換後、86S(ハチロックス、ハチロク愛好家のファンミーティング)に参加するため北海道は十勝へと向かった。その道中、交換したボルトとナットは、驚くべき効果を発揮したのであった! ということはもちろんない。だが、確かに効果はあった。というかしっかり感じることができた。クルマに詳しくない私がなんとかそれを言葉にするとしたら「剛性がアップした」となる。そう、以前と比較してなんというか、ボディー剛性がアップしたように感じたのである。

 もちろんそれはハンドリングにも影響をおよぼす。安定した走りは、特に高速走行時の直線で、そしてやはり高速走行時のレーンチェンジで感じ取ることができた(私でも!)。別のクルマなったなどと言うつもりはさらさらないが「お値段以上、ボルトとナット」という言い方はできるだろう。幸いというか当然のことかも知れないが、私が交換したコンフォートタイプのサスペンションとも良好なマッチングを見せ、北海道 十勝へのロングドライブで快適な走りを提供してくれた。

走り出して、さっそくフィーリングの違いを感じたおっさん。後のロングドライブでさらに効果を実感した

 なのでもしあなたが初期型ハチロク乗りで、愛車であるハチロクをいじってないなら、ボルトとナットをマイナーチェンジ品に交換すべきだ。それだけでも効果はあるが、可能ならショックアブソーバーもマイナーチェンジ品に交換することをお勧めしたい。あるいは私のように市販品のサスペンションユニット、もしくはスプリングに交換するかである。スポーツ志向の人はハードなものでいいだろうし、私のように通勤やドライブメインというならコンフォートタイプでいいだろう。

 ボルト6本とナット2つ、これをチューニングとかカスタムと言っていいものかどうかは分からないが、少なくとも初期型ハチロク乗りには是非とも検討してもらいたい「チューニング」だ。

無理矢理笑うおっさんの手には、新旧2本のボルトが……
今回、作業を担当してくれた後藤さんと記念撮影

アンテナ1つで見栄えが変わる!

 ここでクイズです。「初期型ハチロクと2014年マイナーチェンジ版ハチロクを外観で見分ける簡単な方法は?」。答えは「ルーフアンテナがポールタイプなら初期型ハチロク、シャークフィンタイプならマイナーチェンジ後のハチロク」である。そう、2014年のマイナーチェンジでハチロクのアンテナは、ポールタイプからシャークフィンタイプへと変更されたのだ。

 もちろん私は愛車である初期型ハチロクに誇りを持っている。「あ、初期型のハチロクですね」と言われたって、複雑な気持ちになることはない。断じてないっ! だけどね、最近のクルマって結構、シャークフィンタイプのアンテナを載せてるような気がするんだわ。いやいや、決してそれを羨ましいとか、自分も欲しいとか思っていた訳ではない。しかし、アンテナをシャークフィンタイプに変更することで空力特性が少しでも向上……、いや、もういい。正直、シャークフィンタイプのアンテナが欲しいと思いました。

これがオリジナルのポールアンテナ。充分格好いいじゃないか!
お辞儀だってできます!
入手したシャークフィンアンテナ。内装を固定するクリップも3つ注文した
ま、これだけ見ても何のことか意味不明だわな

 で、さっそく調べてみると、初期型のポールアンテナをシャークフィンアンテナへ交換できることが分かった。ちなみにシャークフィンタイプのアンテナ、正式名称は「アンプリファイア アンテナASSY」というらしい。ASSY、すなわち一式で1万3284円、ほかに「ルーフヘッドライニングクリップ」というのが3つ必要になるらしいのだが、こちらは3つで387円である。部品代はトータルで1万3671円、そして取り替え工賃が1万4990円となり、合計2万8661円でアンテナがマイナーチェンジ後と同等になる(価格はいずれも当時のもの)。

 ちなみに「ルーフヘッドライニングクリップ」というのは、ルーフ部分の内張りを固定するためのパーツ。アンテナを交換するためには内張りをいったん外す必要があり、丁寧かつ慎重にやれば再利用も可能らしいのだが、確実性を優先させて使い捨てるそうだ。もう1つ余談としてシャークフィンタイプのアンテナは、感度をポールタイプと同等にするのが難しいのだと聞いた。今回私が交換したものはトヨタ純正であり、もちろん感度が落ちたりすることはない。

まずはポールアンテナを取り外し……
ルーフにポッカリ穴が開く。車体汚くてごめんなさい
ルーフ内装の端、3つある穴でクリップを使用する

 こちらの交換作業も東京トヨタ井草店さんにお願いしたのだが、さほど時間はかからず作業は終了した。作業後に残されたポールアンテナは、記念にもらってきた。まあ、使い道はないんだけどね。これで私のハチロクは、外観的に2014年マイナーチェンジモデルと同等になった訳である。まあ、こちらの交換は気持ちの問題というか、見た目の好みの話なので、交換するしないはご自由に。

新旧アンテナ比較
さすが純正パーツ。色味もしっかり合っている(ただし私のハチロクは退色しているので、若干異なるのは仕方ない)
旧パーツは記念に保管しておこう

 さて、ボルトとアンテナの「改装」で2014年マイナーチェンジバージョンに限りなく近くなった我がハチロク、ついに初の車検を迎えることになった。機関は絶好調だし何事もなく今まで走ってきたので、恐らく消耗品の補充程度で済むだろう。問題は車検の先、ハチロクをどう進化させるかである。そんなことを考えつつ、昨年から貯まっていた小ネタを放出できて、ちょっとホッとしている高橋でありました。

高橋敏也

デザイナー、コピーライターを経て、パソコン関連のライターとして独立。SF小説なども上梓している。ライター歴は20年を超えるが、最近10年は真面目なレビュー記事というより、パソコンを面白おかしく改造する記事などを書いている。若い頃はオートバイをこよなく愛していたが、体力の衰えと共にクルマへの興味を持つ。このため自動車免許を取得したのは1998年。現在、クルマはトヨタのハチロク、オートバイはカワサキのNinja 1000とZ1300を所有、都内を縦横無尽に走っている。インプレスジャパン、DOS/V POWER REPORT誌に「高橋敏也の改造バカ一台」を連載中。ほかにImpress Watchでインターネット動画「パーツパラダイス」を配信中。