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ヤマハ製スーパーカー「OX99-11」も走った! 「ヤマハ歴史車両デモ走行・見学会」レポート

歴史的なヤマハの2輪車30モデル、4輪車3モデルを全車紹介

2016年11月5日 開催

 ヤマハ発動機は11月5日、静岡県袋井市にあるヤマハ袋井テストコースで「ヤマハ歴史車両デモ走行・見学会」を開催した。

 このイベントは、ヤマハの企業ミュージアムである「ヤマハコミュニケーションプラザ」が収蔵するヤマハ製2輪車と、ヤマハが開発に携わった4輪車の計64台展示に加えて、テストコースを使ったデモ走行を披露するというもの。本稿では展示車両とデモ走行を行なった全車の写真を掲載する。

11月ながら暑いと思えるほどの晴天に恵まれた8年ぶりの「ヤマハ歴史車両デモ走行・見学会」。歴史的価値のあるヤマハ製2輪、4輪マシンがテストコースに集められた

 今回同様のイベントは8年前の2008年に開催されたことがあり、そのときも約1500名が訪れ好評だった。しばらく開催されずにきたが、2015年に7年ぶりの開催が決定したものの、雨天により中止となっていた。それだけに、今回は関係者やファンが「今年こそ!」という思いで当日を迎えた。そんな強い願いのおかげか、今年は朝から快晴。11月に入ったというのに半袖でも過ごせるほどの暖かい日になった。

 会場になったヤマハ袋井テストコースは、コースの性格上、多数の来場者が訪れることを想定した作りではない。そのため、クルマで来る人は近隣にあるヤマハグローバルセンター駐車場にクルマを停め、そこから無料シャトルバスで会場入りするという段取り。駐車スペースをあまり取らないバイクは直接会場入りして、テストコース脇に用意された特設駐輪場に停めるというアクセス方式が設定されていたので、来場者はスムーズに会場入りできるはずだった。

 ところが、ゲートオープンの1時間前にはヤマハ側が想定した以上にたくさんのバイクがテストコース周辺に集まったため、ゲートオープンを30分ほど早めてこれに対応。その後も続々とバイクが到着し、あっという間にコースサイドの駐輪スペースが埋まったため、当初予定していなかった場所も臨時で駐輪スペースになるほどだった。

 さらにクルマの駐車場になっていたグローバルパーツセンターも入場待ちのクルマで渋滞が発生。シャトルバスも渋滞に巻き込まれて予定時間どおりの運行ができないほどの事態となった。会場入りしてくるシャトルバスの車内は都内の通勤バス並みの満員状態で、このイベントに対するファンの期待度の高さが感じられた。

 ヤマハ側でも8年前より多くの来場者が訪れることは想定していたと言うが、予想を遙かに上まわる人数が同じ時間に集中して来たため、このような状態になったようだ。それだけ「イベントを見たい」と思った人が多かったと言うことで、この点はうれしいことだが、混雑にストレスを感じた人が少なからずいることも事実。これについて、イベント終了後にヤマハのコミュニケーションプラザページで「感謝とお詫び」という文章が掲載されている。

受け付けを済ませると記念ステッカーがプレゼントされ、受け付けテントの横ではヤマハのウェアやグッズ類が特価販売されていた
予想のおおよそ2倍という来場者が来た今回のイベント。タイムスケジュールはオンタイムで進んだが、最後の「コース上での記念撮影」は人数が多すぎたためキャンセル。ただ、渋滞で到着が遅れた人のために、夕方から「YZR500」や「OX99-11」を含む一部車種のデモ走行を再度行なった

 そんなハプニングもあった「ヤマハ歴史車両デモ走行・見学会」だが、スケジュールはオンタイムで開始された。開始から1時間30分は展示車の見学時間となっていて展示スペースは賑わっていたが、なかでも1955年製の2輪車「YA-1」には常に人だかりができていた。

 このバイクはヤマハの製品第1号であり、当時のバイクは黒一色で重厚なデザインばかりだったところに、栗茶色のスリムな車体デザインでデビュー。「赤トンボ」の愛称で人気になったとのこと。エンジンは空冷2ストローク単気筒で排気量は123cc。最高出力は5.6PS/5000rpm。最大トルクは0.96kgm/3300rpm。大卒初任給が平均1万円だった時代に13万8000円という価格設定になっていたが、それでも3年間で約1万1000台が販売された名車である。

 今回のイベントでは計30台の2輪車が展示されているので、このほかの展示車は最後にまとめて写真でご紹介する。

通称「赤トンボ」のYA-1。ヤマハが初めて発売したバイクで1955年製というかなりの年代物だが、今でもきちんと走れる状態をキープ
こちらはYA-1をベースに排気量をアップさせた「YB-1」

 また、会場に持ち込まれた4輪の展示車は3車種5台。まずはトヨタ自動車と共同開発を行ない、ヤマハの磐田工場で生産された「トヨタ 2000GT」。DOHC直列6気筒エンジン、ダブルウイッシュボーンサスペンション、4輪ディスクブレーキ、マグネシウムホイールなどに加え、ボディの一部にはFRPを用いるなど、当時の先端技術が総動員されたクルマだった。発売当時の価格は238万円で、職人のハンドメイドで生産していたことから月産台数はわずか8台のみ。1970年10月までに約340台が生産された。展示&デモ走行車は1967年式の車両。

1967年式のトヨタ 2000GT
トヨタ製SOHCエンジンにヤマハが開発したDOHCヘッドを組み合わせた「3M」型エンジンを搭載する

 次はレクサス(トヨタ自動車)「LFA」。日本が世界に誇るスーパースポーツカーで、エンジンはヤマハ製のV型10気筒40バルブ、排気量は4.8リッターである。エンジンは専門のエンジニアが手作業で組み上げていて、エンジンルームのカバーにはエンジニアの署名が入っている。シャシーはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製を採用。エンジンだけでなく車体も熟練した職人の手によって組まれていて、500台のみが限定生産された。展示&デモ走行車は2010年式。

2010年式のレクサス「LFA」。LFAは500台だけの限定生産車
エンジンはヤマハ製4.8リッター V型10気筒40バルブ。エンジンを組んだエンジニアの署名が入っている

 そして4輪車の目玉は、ヤマハが市販を目指して製作したスーパーカーである「OX99-11(オーエックスナインナインイレブン)」だ。シャシーはCFRPモノコックを採用し、サスペンション形式などを含めて“フォーミュラカーそのもの”という構造。そこにFRPや金属などを使う複合素材のボディを被せている。エンジンも当時F1用に作っていた3.5リッターのV型12気筒エンジンを、セッティングから補機類まで含めて公道向けに作り直して搭載した。

 市販車として設計されているので、ヘッドライトはもちろん、ウインカーやサイドミラーといった公道を走るために必要な装備も完備。室内に目を移せばエアコンのスイッチもある。乗車定員は2名だが、ドライバーがキャビンのセンターに乗り、もう1人はドライバーズシートの左後方に設けてあるオフセットされたシートに座るというスタイル。今回展示されているのはプロトタイプ車両だが、発売寸前までいったクルマだけに価格が決まっていて、なんと1億円オーバーというものだった。

ヤマハが市販を目指して製作したスーパーカー「OX99-11」。当時のF1エンジンを公道用にリメイクして搭載する
F1エンジン「OX99」のストリートバージョンを搭載。バブル期に作られたクルマだけにかなり思い切った仕様だ。パイピングなどは、色を見るとアルミではなくチタンを使っているように感じる。リアカバーの裏側を見ると、スチールとカーボンを場所ごとに使い分けていることが分かる

 ちなみに、今回のイベントでは3台のOX99-11が登場したが、よく見るとホイールとブレーキキャリパーの仕様が異なっていた。展示車のとなりに立っていたヤマハのスタッフに尋ねてみると、丸みを帯びたグレーの5本スポークホイールが当初のデザインとのこと。このホイールを装着したクルマだけがブレーキキャリパーに「YAMAHA」のロゴが入っていたので、この車両が市販モデルに一番近い仕様なのかもしれない。

OX99-11のキャビン
2つめのシートが運転席後方左側にオフセットして設置されている
シフトレバーは運転席の右側にレイアウト。6速であることが分かる
黒いOX99-11だけホイールとブレーキキャリパーの仕様が異なっていた。スタッフに尋ねてみると、黒の車両で装着しているホイールが元々のデザインだと説明された

 デモ走行の実施方法は、2輪市販車はテストコースのストレートを2往復、2輪レーサーと4輪車はアウト&インラップを入れてテストコースを4周する(ショートカット区間利用の短縮バージョン。ストレートは2回通過)というメニューを用意。各車のスタート前には場内アナウンスでそれぞれの車両について説明が行なわれていた。

 2輪市販車を走らせるライダーはヤマハのスタッフが担当し、2輪レーサーについては2名のゲストライダーが起用された。1人は本橋明奏さん。本橋さんは1962年からヤマハの契約ライダーとして国内外で活躍。世界GPでも1966年の日本GP 125ccクラスで3位、1967年のマン島TTレースで125ccクラス3位、同年の日本GP 250クラスで2位を獲得。1977年に引退するまで、ファクトリーマシンの開発なども行なっていた。

 2人目は河崎裕之さん。1968年~1976年、1983年~1988年にヤマハに在籍し、1970年に全日本選手権 251cc以上クラスのチャンピオンを獲得。さらに世界GPでも500ccクラスにおいて1979年のオーストラリアGPで5位、1981年に3位、1987年の日本GPでは7位を獲得。その後、「YZR500」の開発ライダーも務めた人物だ。

白と黒のツナギが本橋明奏さん、赤いツナギが河崎裕之さん

 4輪車のドライバーは、トヨタ 2000GTの走行を担当したのはヤマハ パフォーマンスダンパー開発で評価ドライバーを務め、トヨタ 2000GTの管理責任者でもある原田豊二さん。レクサス LFAは、LFAのエンジンである「1LR」開発時にエンジンの評価を担当していた名倉雅和さん。

 そして黒いOX99-11は、元国際A級ライダーで1996年の全日本GP250チャンピオン、1987年 全日本GP500のランキング3位となり、現在はヤマハ パフォーマンスダンパーの開発評価ドライバーである片山信二さん。緑色のOX99-11はヤマハ パフォーマンスダンパー開発評価ドライバーの三浦伸一郎さん、赤いOX99-11は、OX99-11に搭載されているエンジンのベースになったF1用V12エンジンであるOX99の設計者の1人で、現在OX99-11の管理責任者である飯倉雅彦さんが務めた。

4輪は社内スタッフが乗っているが、それぞれ開発者か評価ドライバーが務めていた

 このように、それぞれの車種のドライバーにふさわしい人選がされていたので、気難しいところもありそうな各マシンをスムーズに走らせていた。では、ここからは各車の写真を掲載していく。

4輪車のデモ走行

1967年式 トヨタ 2000GT 直列6気筒2.0リッター
2010年式 レクサス LFA V型10気筒4.8リッター
1992年 ヤマハ OX99-11 V型12気筒3.5リッター
1992年 ヤマハ OX99-11 V型12気筒3.5リッター

2輪車の展示とデモ走行

YA-1 1955年式/2ストローク空冷単気筒/125cc
YD-1 1957年式/2ストローク空冷単気筒/250cc
YDS-1 1959年式/2ストローク空冷2気筒/250cc
YDS-3 1964年式/2ストローク空冷2気筒/250cc
YM-1 1965年式/2ストローク空冷2気筒/305cc
R-1 1967年式/2ストローク空冷2気筒/350cc
DT-1 1968年式/2ストローク空冷単気筒/250cc
HT-1 1970年式/2ストローク空冷単気筒/90cc
XS-1 1970年式/4ストローク空冷2気筒/650cc
DX250 1970年式/2ストローク空冷2気筒/250cc
TX750 1972年式/4ストローク空冷2気筒/750cc
RD250 1973年式/2ストローク空冷2気筒/250cc
TX500 1973年式/4ストローク空冷2気筒/500cc
GX750 1976年式/4ストローク空冷3気筒/750cc
XS1100 1977年式/4ストローク空冷4気筒/1100cc
SR500 19478年式/4ストローク空冷単気筒/500cc
XT250 1980年式/4ストローク空冷単気筒/250cc
RZ250 1980年式/2ストローク水冷2気筒/250cc
XJ750E 1981年式/4ストローク空冷4気筒/750cc
XZ400 1982年式/4ストローク水冷V型2気筒/400cc
XVZ1200ベンチャーロイヤル 1982年式/4ストローク水冷V型4気筒/1200cc
CZ125トレイシー 1983年式/2ストローク水冷単気筒/125cc
RZ250R 1983年式/2ストローク水冷2気筒/250cc
FZ400R 1984年式9/4ストローク水冷4気筒/400cc
RZV500R 1984年式/2ストローク水冷V型4気筒/500cc
SRX600 1985年式/4ストローク空冷単気筒/600cc
SEROW225 1985年式/4ストローク空冷単気筒/225cc
SDR 1986年式/2ストローク水冷単気筒/200cc
R1-Z 1990年式/2ストローク水冷2気筒/250cc
V-MAX1200 1990年式/4ストローク水冷V型4気筒/1200cc
RD56 1965年式/2ストローク空冷2気筒/250cc
FZR750 OW74 1985年式/4ストローク水冷4気筒/750cc
YZR500 OW81 1985年式/2ストロークV型水冷4気筒/500cc
SC-1
YDS-2
HS1 1968年式
AT-1 1969年式
FT-1 1970年式
Zippy 1973年式
Chappy 1973年式
XT500 1976年式
GR50 1976年式
パッソル 1977年式
ベルーガ 1981年式
ポップギャル 1982年式
DT200R 1984年式
ビーウィズ 1988年式
RT-1 1970年式
YZM500 1988年式
YZ125M 1987年式
YZ250 1974年式
YZR500 OW35K 1978年式
YZR750 OW31 1978年式
YZR500 OW20 1974年式
TY250コンペティションスペック 1973年式
RF302 1969年式
RA97 1966年式
YDS-1浅間スペック 1959年式