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世界一の“猛牛使い”を決する「ランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオ・ワールドファイナル 2016」レポート
2016年はスペイン バレンシアサーキットで開催
2016年12月26日 16:16
- 2016年12月2日~4日(現地時間)開催
イタリアの自動車メーカーAutomobili Lamborghini S.p.A(ランボルギーニ)は、12月2日~4日(現地時間)の3日間にわたってスペイン・バレンシアにあるバレンシアサーキットにおいて、スーパーカー「ウラカン」のワンメイクレース「ランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオ」の世界一決定戦となるワールドファイナルを開催した。
ランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオは、ランボルギーニが同社の顧客である富裕層、レース業界の言葉で言えば“ジェントルマン・ドライバー”を対象にしたワンメイクレースで、サーキットで思いっきり走らせたい、しかもレースもしたいというニーズを満たす狙いで行なわれている。
今年はバレンシアサーキットで行なわれたワールドファイナル
ランボルギーニが行なっているランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオは、同社のモータースポーツ部門であるスクアドラ・コルセが行なっている、同社が販売するスーパーカー「ウラカン」を用いたワンメイクレースだ。欧州、北米、そして日本を含む3つの地域でそれぞれシリーズが行なわれており、それぞれのシリーズで選手権が争われる。そして、ワールドファイナルはそれら3つのシリーズの上位ランカーが一堂に会してレースを行ない、ウラカン乗りの世界チャンピオンを決めるというコンセプトで行なわれているレース。2015年は米国のセブリングで行なわれたが、3つのシリーズのうち最も参加台数が多い欧州のシリーズの参加者が多数米国に向かうことになり、ロジスティックの観点から大変なことになったという。それを受けて、2014年まで行なわれていたヨーロッパでワールドファイナルを実施することになり、今回はスペインのバレンシアサーキットで開催されることになった。
バレンシアサーキットは、スペイン東部の沿海部に位置するバレンシア市の近郊にあるサーキット。F1が開催されているバルセロナサーキットほどは大きくないコンパクトなサーキットで、グランドスタンドからサーキットの全域が見渡せるので、観客にとっても楽しいサーキットだ。F1の冬のテストがここで行なわれていることからも分かるように、常に温暖な気候で知られており、昼間は長袖のシャツがあれば十分に寒くなく、逆に日が出ていると暑いと感じるぐらいの気候だった。レースが行なわれた日中はだいたい曇りが多く、レースをやるには絶好の環境だった。
ランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオで使われる車両は、ウラカン LP620-2 スーパートロフェオというランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオ専用車両となる。ウラカンはランボルギーニが現在発売している2つのスーパーカー(アヴェンタドール、ウラカン)のうち、比較的低価格(といっても2000万円オーバー)に位置づけられる車両だ。ウラカン LP620-2 スーパートロフェオは、5.2リッター直噴V10エンジン(620HP)とXトラック製シーケンシャルギヤボックスをミッドシップに搭載しており、シャシーはアルミニウムとカーボンのハイブリッドで製造。重量は1270kgと軽量に抑えられている。
新たにランボルギーニカップクラスが追加され4クラスで開催
ランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオは一般的なモータースポーツとは異なり、いわゆる一般来場者は存在せず、グランドスタンドなどにいる観客のほとんどは関係者というイベントになっている。と言うのも、ランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオは、ランボルギーニのスーパーカーを購入した顧客が思いっきり走らせたい、しかもレースの場でというコンセプトから始まったレースであり、主役はあくまでドライバー、つまりはランボルギーニオーナーなのだ。
こうした性格のレースであるため、パドックやグランドスタンド裏といった普通のレースならメーカーがマーケティングのために出すテントなどもこのレースではない。しかしランボルギーニが設置しているVIP用のテントはあり、ここにはランボルギーニのゲストや、各チームのゲストなどがくつろげるようになっている。なかではイタリアのメーカーらしく、イタリア料理やジェラートなど食にもこだわったおもてなしがされていた。
なお、ランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオのシリーズスポンサーは、シリーズ名称の一部になっている高級時計メーカー「ブランパン」で、同社はランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオだけでなく、SRO(SUPER GT/GT300でのFIA GT3の性能調整も担当しているレースオーガナイザー)が主催するブランパンGT選手権のシリーズスポンサーも務めている。なお、タイヤはイタリアのピレリが使われている。
ランボルギーニ・ブランパン・スーパー・トロフェオは、以下の4つのクラスに分かれて戦われる。
PRO:プロドライバーのクラス
PRO-AM:プロドライバーとジェントルマンドライバーの組み合わせのクラス
AM:ジェントルマンドライバーのみのクラス
LC:ジェントルマンドライバーの入門クラス
2015年まではPRO、PRO-AM、AMの3つのクラスで運用されていたが、2016年からLC(ランボルギーニカップ)クラスが追加されている。走行はPROとPRO-AM、AMとLCの混走となる。このLCは、これからジェントルマンドライバーになって本格的なレース参戦を目指す“新米”ジェントルマンドライバー向けに作られたクラスで、ランボルギーニが行なっている入門スクール「ランボルギーニアカデミア」のステップアップ先として作られたクラスになる。いきなりプロドライバーも走る中に混じって本格的なレースは難しいので、まずは経験を積みたいという人向けに用意された入門カテゴリーになる。
PROに関しては説明の必要はないと思うが、PRO-AMに関しては若干解説が必要になるだろう。PRO-AMはプロドライバーとジェントルマン・ドライバーが一緒に走るカテゴリーで、2人のドライバーがクルマをシェアする。このため、ランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオでは必ず1回のピットインが義務づけられており、ドライバー交代がないチームでも一定時間ピットに停止する必要がある(PROクラスなどではドライバーは1人でもいいのだが、そうするとドライバー交代がないチームが有利になり、ドライバー交代がないチームが不利になることを防ぐため)。
このため、レース中盤には各チームがピットインし、そのまま規定の時間が過ぎるまでピットに停止するという不思議な光景が見られる。こうした仕組みを導入しているのは、ジェントルマンドライバーがプロと一緒に走ることで勉強になるという側面が強く、何よりジェントルマンドライバーがそれを強く望んでいるからなのだそうだ。
ランボルギーニ育成プログラムの若手ドライバーがPROクラスのワールドチャンピオンに
レースはPROとPRO-AMの混走、AMとLCの混走という2つのレースが土日それぞれ行なわれ、それぞれのクラスのワールドチャンピオンを決定するという形でレースが実施された。
土曜日の天候は晴れのち曇りで、午前中は太陽が顔を出す絶好の天候でフリー走行、午後に2つのレースが行なわれた。レースの形式は通常のレースと同じで、まずはグリッドに各車が整列し、その状態でVIPによるグリッドウォークが行なわれる。その後、セーフティカーの先導によりフォーメーションラップ、その後ローリングスタートで行なわれた。
日曜日は残念ながら、朝から降り続く雨によりウェットレースが宣告。各車ともウェットタイヤを装着してレースに望むことになった。筆者は1コーナーで見ていたが、数十台のウラカンが水煙の中から現れて1コーナーに飛び込んでいく様子はかなりの迫力だった。
なお、注目のワールドタイトルは第2レースを優勝したデニス・リンド選手がPROクラスのワールドチャンピオンとなった。リンド選手は23歳の若手ドライバーで、今年の欧州シリーズのチャンピオンでもある。リンド選手は、ランボルギーニのモータースポーツ部門であるスクアドラ・コルセが行なっている若手ドライバー育成プログラムに参加するドライバーで、ランボルギーニ使いとして将来を嘱望されている1人だ。
なお、2017年のワールドファイナルはランボルギーニの本社があるボロネーゼからほど近い場所にあるイモラ・サーキットで11月16日~19日の日程で行なわれる予定。
イモラ・サーキットとは、1990年代半ばまでサンマリノGP(当時同じイタリアで2レースを行なうために、モンツァで行なわれるレースをイタリアGP、イモラで行なわれるレースをサンマリノGPと呼称していたが、イモラはイタリアにある)の会場として知られており、2017年に予定されるランボルギーニの新社屋公開と合わせてセレモニーなども行なわれる予定だ。