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【インタビュー】新型「アウディ Q2」エクステリアデザイナー マティアス・フィンク氏に聞く

「マスキュリン(男性的)なQ2は男女どちらにも受け入れられる」とフィンク氏

2017年4月26日 開催

独アウディAG エクステリアデザイナー マティアス・フィンク氏

 アウディ ジャパンは4月26日、6月中旬に発売する新型コンパクトSUV「Q2」の発表会を都内で開催した。

マティアス・フィンク氏と記者によるグループインタビューの様子

 発表されたQ2の製品アウトラインについては「アウディ、新型コンパクトSUV『Q2』を6月中旬発売。299万円から」、発表会については「アウディ、“#型破る”新型SUV『Q2』発表会」といった関連記事でそれぞれ紹介しているが、同日の発表会でも登壇してプレゼンテーションを行なった独アウディAG エクステリアデザイナーのマティアス・フィンク氏により、発表会後に集まった記者とのグループインタビューが実施された。本稿では以下でグループインタビューの内容を紹介する。


マティアス・フィンク氏

――アウディはとてもデザインのイメージがはっきりしたブランドだと思います。そこで新しいQ2を造るとき、従来からのデザインと新しいもののバランスの取り方に苦労されたと思います。その点をどのように考えて決めましたか?

フィンク氏:確かに難しかったですが、今回は新しい、若いお客さまにアピールしたいということで、これまでのアウディの“控えめなデザイン”というボーダーを少しだけ越えるということにチャレンジしてみました。とはいえ、アウディが持っているバリューはすべて入っていますので、見ていただいて「アウディだ」と分かっていただけるようになっています。それと同時に、昔のアウディモデルの特徴なども一部に取り込んでいて、例えばアイコン的な存在である初代「TT」の、キャビンとボディがソフトコネクションするCピラーになっているところですとか、あとはCピラー自体が1980年代の初代「クワトロ」をオマージュとしてデザインに取り入れています。そのように、いろいろなアウディモデルの要素を持っているのですが、それらをフレッシュな、新しい形で取り入れているので、今までと違うデザインに見えるのですが、100%アウディモデルと言えます。

――プレゼンテーションで若い人たちをイメージしてデザインしたと言っていましたが、具体的に若い人のどんなライフスタイルをイメージしているのか教えてください。

フィンク氏:若い世代の人のなかで、すごくポジティブでエネルギーあふれる、元気な人たちを想像しました。仕事も趣味も1台でまかないたい。なにかに制約されることなく自由に生きたいという人を想定しています。そんなQ2なので、非常に個性があって強いデザインに仕上がっていると思います。まさにこの世代を表わすキャラクターになっているのではないかと。キビキビとした印象でスポーティ、だけど使いやすくてスタイリッシュなデザインにしたつもりです。

Q2の実車を前にデザインエッセンスを解説するフィンク氏
Q2の鋭角なショルダーラインは「鋭いナイフで斜めに削り取ったようなラインで、自然で幾何学的な面を与えている」という

――デザイン要素として使っている「ポリゴン」という言葉に込めたデザイン的な意味を教えてください。敢えてこの言葉を選んだことにどんな意味があるでしょうか。

フィンク氏:プレゼンテーションでも「河原の石」を例に出して説明しましたが、この「ポリゴン」という言葉は、もともとは古代ギリシャ語で「ポリ」が多い、「ゴン」が角があるという意味になります。ですので、幾何学的なたくさんの角があるものという意味です。河原の石を例に出したのは、川というのはよく人生に例えられると思います。最初があって終わりがある。石は人間そのものです。川の源流に近い上流では石にもゴツゴツと角がありますが、川に流される時間が長くなるほど、石も人間も丸くなっていきます。逆に最初のころの若い石は、個性が強くて尖っている。そういったイメージで、角がたくさんある形をQ2で表現しました。

――Q2のデザインを考えるにあたり、あのボディサイズが若者向けのデザインをするためにベストだと考えていたのか、または小さいクルマを造るにあたりこのような形状になったのか、もしくは本来ならもっと大きくしたいと思っていていたのか。そのあたりを教えてください。

フィンク氏:若者は2台目、3台目といったクルマを所有することを望んではいなくて、1台でなにもかもカバーできるようにしたいと考えていると想定しています。もっと上の世代なら、スポーツカーやオープンカー、SUVがあるといったように目的別に乗り分けることを考えると思いますが、若い世代は1台だけにするということで、その点で少し制約がありました。例えば、街乗りをするなら駐車スペースを考えて、少し短めで幅もあまりあってはダメです。でも、スポーティにキビキビと走らせたいならある程度ワイドでなければいけません。ハイキングに行くなら車内のスペースも必要になるでしょう。そのような前提がありました。実際にQ2はQ3と比べて全長は少し短めで、でもグランドクリアランスは大きくしっかり備えています。車内のスペースもあります。言ってみれば、Q2はいろいろなクルマのいいところを凝縮したクルマで、若い人にぴったりの完璧なクルマだと思っています。

「川というのはよく人生に例えられる」と語るフィンク氏。長い時間を掛けて川を流されてきた石が角がなくなっていることに対し、まだ上流にある石は尖って角張っていることから、エッジを効かせたデザインでQ2に若々しさを与えているという

――今回のプロジェクトでは「まさに自分の世代のクルマとしてデザインした」とプレゼンテーションで言っていましたが、ご自身で今興味があること、趣味などを教えてください。

フィンク氏:先ほども述べているように、私はプロジェクトが始まった当時は30歳で、現在は35歳ということで、まさにターゲットの世代です。私は釣りが好きなので、休日には釣りに出かけることが多いので、ラゲッジスペースの容量がある程度大きいことが必要です。また、グランドクリアランスもある程度の高さがあったほうがよくて、ただ、クルマを使うほとんどの時間は市街地になります。仕事が終わって自分のアパートに帰ると、駐車するスペースを見つける時間が要ります。自分のクルマを駐車するために十分なスペースを探すのは簡単ではないので、そんなときは車体の短さが求められます。

一方でスタイルもとても大切です。クルマとは自分自身を表現するものだと考えているので、つまらないクルマには乗りたくない。ちゃんとしたスタイルのクルマに乗りたいという思いがあります。

1つエピソードを紹介すると、私が最初にこのQ2をほかの部門に対してプレゼンテーションしたときに、ツーリング(機械加工)部門のスタッフから「こんな薄いシートメタルの組み合わせは作れない」と反発されてしまったのですが、そこにいたほかの若いスタッフが「そこで“できない”と言わず、とにかくやってみましょう」と言ってくれました。実際に数週間経ったときには、問題として指摘されたドアパネルもしっかりと作り上げてプロトタイプにしてくれて、これはやればできるという面白いエピソードだと、今でも覚えています。若者が熱意を持って取り組んでくれた成果ですね。

新しいシングルフレームグリルなど、Q2から今後のQモデルにつながっているデザインエッセンスを紹介
フィンク氏自身もQ2の想定ユーザーである「30歳~40歳」にあてはまる35歳。都市に住み、休日に釣りに出かけるというライフスタイルにQ2はぴったりだと口にする

――(プレゼンテーションで)Qモデルの新しいデザインと口にしていましたが、例えばQモデルで大きな車両と小さな車両を造るのでは苦労が違うのでしょうか。また、このQ2のデザインがもっと大きなQモデルに今後影響を与えるのでしょうか。

フィンク氏:ポリゴンデザイン自体は若い世代を表わしており、Q2独自のものです。これはほかのQモデルに採用されることはありません。ですが、Q2のなかにある新しいデザイン要素で、これから出てくるQモデルにも採用されるところはいくつかあります。例えばシングルフレームグリルは、今回のQ2で下の部分に角を付けていますが、これが今後のQモデルに採用されていきます。シングルフレームグリルの材質も、クロームではなくアルミになっています。これによってより力強く、迫力ある雰囲気を出しています。また、Cピラーの形状で、幅広のCピラーが後輪のすぐ上にあって、どっしりとタイヤの上に座っているようなデザイン。こういった要素が、多少形は変わってもQ2よりも大きなQモデルに採用されていきます。

――今、自分で次に買うクルマを悩んでいるところなのですが、このQ2を買ったら女性にもてると思いますか?

フィンク氏:オフコース(笑)。Q2は「マスキュリン(男性的な)」というテーマを反映してデザインしていますから。ただ、Q2は男性らしさを色濃くしているクルマですが、聞けば購入しているのは男性50%、女性50%ということで、男女どちらにも受け入れられている状況です。