ホンダ、新型パーソナルモビリティ「U3-X」発表会を開催 世界初の全方位駆動車輪機構を搭載。「第41回東京モーターショー2009」にも出展 |
新型パーソナルモビリティ「U3-X」の発表会に参加した株式会社 本田技術研究所 研究員の小橋慎一郎氏(左)と同社取締役の新井康久氏(右)、本田技研工業株式会社 代表取締役社長 伊東孝紳氏(中央) |
2009年9月24日開催
本田技研工業は9月24日、新型パーソナルモビリティ「U3-X」の発表会を開催した。まだ試作機としながらも、10月24日より開催される「第41回東京モーターショー2009」にも出展すると言う。
U3-Xは二足歩行ロボット「ASIMO」のロボティクス研究で培ったバランス制御技術と前後移動に加え、真横や斜めにも移動できる世界初となる全方位駆動車輪機構(Honda Omni Traction Drive System)を搭載した。これにより身体を傾けながら体重移動するだけで速度や方向の調整が可能で、様々な方向に動いたり曲がったりすることが可能。
発表会では、まず同社取締役社長 伊東孝紳氏が挨拶を行った。U3-Xは、人と自然に共存できるモビリティを作ろうと、独自のアイデアで技術者が挑戦した結果だと述べ、「ホンダは創業以来、独自の技術でさまざまなモビリティを提案・提供してきたが、最近では、その夢は大空を飛ぶところまできた。それと同時に、移動する最小単位である人の歩行の研究も積極的に進めており、その成果としてASIMOや歩行アシストなどを生み出してきた」と、これまでのホンダの取り組みについて紹介した。今回は、この成果を応用して、さらに人に近い存在として、人との調和を実現する新たなモビリティの技術として紹介するに至ったと言い、「ASIMOなどで培ったバランスをとる技術を応用した新たなモビリティとして、人が移動する楽しさや、喜びの無限の広がりへの第一歩となるものと確信している」と述べた。
今回発表したU3-Xは、あくまで技術の可能性としての提案であり、具体的な商品化などについては決まっていないと言うが、「この技術を応用し、新たなモビリティの可能性を模索していきたい」とし、「今回の技術の、移動することの原点に帰ってこのU3-Xは生まれた。今後の基礎技術研究の分野でも、こうしたホンダの良さを発揮して、お客様や社会に新価値を提案してし続け、さらなる挑戦をしていきたい」と、今後の抱負を述べた。
次に、本田技術研究所の研究員 小橋慎一郎氏よりU3-Xについて具体的な説明が行われた。「ホンダは1986年からロボットの研究開発をスタートし、人の中で役立つことを考えてきた。二足歩行技術をはじめ、さまざまなロボティクス技術を研究してきており、U3-Xはこれらの技術を応用した成果の1つ。同社では移動する喜びを広げる、人と調和するパーソナルモビリティを形にできないか考えた」と言う。それにはまず、歩くような感覚で前後左右に動けることが求められると考え、そのため体重移動もでき、自然な感覚で移動できる制御とメカニズムを開発した。大きさについては人混みで邪魔にならないミニマムなサイズであることが重要だと述べた。
U3-Xは、シートとステップが可倒式で本体に収納でき、上部にバッテリー、下部に傾斜センサーや制御コンピュータなどのコントロールユニットと全方向車輪機構を搭載する。カーボン製モノコックボディーとし、サイズは持ち運びが可能な315×160×650mm(全長×全幅×全高)で、重量は10kg以下。バッテリーはリチウムイオン電池を採用し、満充電で約1時間の走行が可能。人混みでの使用も考えているため、最高速度は6km/h。これは同社の電動カート「モンパル」のそれと同じで、将来的に商品化における法的なハードルをクリアするためにこの速度を上限にしているが、まだ試作機のため最高速度については今後さらに煮詰めていきたいと言う。乗員の体重上限はおよそ100kgとしている。
バランスの取り方については、「竹ぼうきを使って腕や身体でバランスをとる感覚」(小橋氏)だと述べ、これはASIMOで培われた技術の応用だと言う。具体的には、傾斜センサーの情報を元に、ホイールの動きをフィードバックし、さらに、使用者の重心移動に応じてどの方向に、どのくらいの速度で移動したいのかをU3-X側が判断し、違和感のない自然な操作性を実現したと話す。この違和感のない自然な操作性というのは人によって感じ方はさまざまで、開発の段階でも苦労したと言う。想定される使用場所は屋内空間で、段差がなければ床面の材質は問わない。
人は生活空間において、車と違い横や斜め方向に自由に移動ができる。この動きをモビリティで実現するために、同社は全方位に移動できるメカニズム「全方位駆動車輪機構」を開発した。全方位駆動車輪機構は、多数の車輪をリング状につなぎ合わせて大きな車輪を構成している。車輪をモーターで制御し、前後に動くときは大きな車輪で全体を動かし、左右に動くときはそれぞれのモーターを反転させることで個々の小さな車輪を回転させる。さらに大小の車輪それぞれの動きを組み合わせることで、斜め移動も可能としている。
パッケージについては、「日常の生活空間で使うためには人混みの中で邪魔にならないサイズであることが重要」(小橋氏)だとし、本体をミニマムにすることで、人のサイズに収まる大きさにした。周囲に威圧感を与えず、乗っている人も自然な目線の高さとなり、普段と変わらずに会話などが可能だと言う。さらに、両手が自由に使えるため、荷物を持ったり、手をつなぐといったこともできる。また、着座スタイルとしたことで、いつでもすぐに足をつけることができるという、安心感があるのも特徴。
今後、日常生活のさまざまな分野で気軽に使えることや、更なる進化を目指して研究開発を行っていきたいとしている。
具体的な乗り方については、まずU3-Xを背にして立ち、ゆっくりとシートに腰掛ける。その際のポイントとしては、両足を浮かさずに床につけたままにすることと、両手はシートをつかまずに添える程度にすること。次に身体を前後左右に動かして座りやすい位置に調整する。この状態で前後左右に足で漕いで移動し、乗車感覚に慣れる。最後にステップに両足を乗せたら乗車完了となる。
以下、プレゼン画面で紹介されたU3-Xと、同社の説明員の方が試乗した様子を動画で紹介する。
プレゼン画面上でのU3-Xの動き(左)と説明員の方の試乗の様子(右)
(編集部:小林 隆)
2009年 9月 24日