フォルクスワーゲン、新型「ポロGTI」説明会開催
MTは全世界で設定無し、DSGで勝負のGTI

2010年9月21日開催



 フォルクスワーゲン グループ ジャパンは9月21日、都内で同日発売となった新型「ポロ GTI」の報道関係者向け説明会を開催した。

 ポロ GTIは、5代目ポロのスポーツモデル。3月のジュネーブ・モーターショーで発表され、欧州ではこの夏に発売された。

 ポロGTIは、1986年に登場した2代目ポロのスポーツモデル「G40」をその起源とする。G40は「Gラーダー」と呼ばれるフォルクスワーゲン独自の機械式スーパーチャージャーで1.3リッターエンジンを過給し、113PSの最高出力を得たモデルで、今日のTSIエンジンの先祖とも言える。1998年には3代目ポロをベースに、限定車ながらGTIが初登場。こちらは1.6リッターの自然吸気エンジンを搭載していた。日本にはこのモデルが、1999年に初導入となった。新型ポロGTIは、ポロのGTIモデルとしては、G40から数えて3世代目ということになる。

ポロGTIと正本部長

パワフルだけどサステイナブルなスポーツモデル
 スペックなどの詳細は関連記事を参照されたいが、同社マーケティング本部の正本嘉宏部長によれば、新型ポロGTIのポイントは「動力性能だけでなく、積極的に燃費対策を施した」ことであり、「単なるスポーツモデルではない、今後の自動車社会の持続可能性を考えて作られたクルマ」とした。

 ポロGTIのエンジンは直列4気筒DOHC1.4リッターに、スーパーチャージャーとターボチャージャーで過給するツインチャージャーエンジン。ゴルフ、シロッコにも搭載されており、評価の高いエンジンだが、ゴルフ、シロッコのそれが118kW(160PS)/5800rpm、240Nm(24.5kgm)/1500-4500rpmという性能であるのに対し、ポロGTIは132kW(179PS)/6200rpm、250Nm(25.5kgm)/2000-4500rpmと大幅に出力が高められている。

 この大出力を受け止める足まわりには、専用のスポーツサスペンションや通常モデルより23mm径が大きいフロントブレーキディスクローター、215/40 R17タイヤが与えられ、車高が15mm低くなっている。

 また、「ゴルフGTI」や「シロッコR」同様に電子制御ディファレンシャルロック「XDS」を搭載。これはディファレンシャルギア自体をロックする通常のLSDとは異なり、コーナーリング時に内側の駆動輪のトラクション抜けを検知すると、そのタイヤに軽くブレーキをかけてトラクションを確保し、アンダーステアを抑制するもの。横滑り防止装置「ESP」を応用したもので、安価ながら通常のLSD同様の効果が期待できる。

 このほか、通常のポロではエンジンルームにあるバッテリーをラゲッジルーム床下に移して、重量配分にも配慮している。

1.4リッターツインチャージャーエンジンはスポーツユニットとしてチューンされているバッテリーはラゲッジルーム床下に。バッテリーの上にテンパータイヤが乗る径が拡大されたフロントブレーキローター。キャリパーは赤に塗装される
LEDのポジションランプはバイキセノンヘッドライト、スタティックコーナーリングライト、ヘッドライトウォッシャーとセットのオプションだが、標準のハロゲンヘッドライトモデルは受注生産になる左デュアルテールパイプもGTIの証しG40に端を発するポロのスポーツモデルの歴史
最高出力は高められているが、トルクは依然としてフラットボディーカラーは4色エコカー減税対象にはならない

 ところでゴルフやシロッコのツインチャージャー搭載車は先頃、ECU(エンジン制御ユニット)の改良によりエコカー減税の対象となったが、ポロGTIのそれは、チューンドエンジンのため、対象にはならない。とは言うものの、ポロGTIの10・15モード燃費は16.6km/Lであり、スポーツモデルとしては十分によい燃費を得ている。

 この燃費には、同社ではすでにおなじみとなった高効率デュアルクラッチAT「DSG」の寄与するところも大きい。ポロGTIに採用されているのは乾式の7速DSGだが、日本はもとより、全世界で販売されるポロGTIのトランスミッションはこのDSGのみになると言う。スポーツモデルの象徴たるMTよりもDSGを選択したのは、燃費性能を重視しただけでなく、DSGの効率やダイレクト感がスポーツ走行にも適しているという自信の表れだろう。

 ポロGTIのターゲットユーザーは、30~40代の、「活動的でクルマを思いのままに操りたい男性」としている。

GTIならではのチェックのシートと赤いスティッチ
ペダルはアルミ調メーカーオプションとしてHDDカーナビ「RNS510」が用意されるメーターパネルには水温計と燃料計が付く

エコカーで好調、悩みはタマ不足
 同社広報部の丸田靖男部長は、2010年1月~8月のフォルクスワーゲンの販売が、前年比39%増の3万3632台の、好調であることをアピール。国産・輸入を合わせた全乗用車の23%増、輸入車の19%増を大幅に上まわる伸びを記録した。

 これに伴い、輸入車でのブランド別シェアも前年比4.9ポイント増の28.7%。6月、7月は月間で過去最高のシェアを得たと言う。

 この好調の理由を「ポロ、ゴルフなどのエコカー減税対象車が人気を得たこと、TSI、DSGなどで燃費がよく、高品質な製品が評価されたこと」と見る。

フォルクスワーゲンは39%増シェアも大幅拡大ポロは1.2TSIなどを契機に大幅に販売を伸ばした

 業績伸張の牽引役たるポロは、2009年11月の発売直後に1400台を販売、そこから時間を追って台数を落としてきたが、5月頃からエコカー補助金の駆け込み需要と、1.2リッターTSIエンジン搭載車、さらに「クロスポロ」の投入などで急激に台数を伸ばし、6~8月は2000台近い台数を登録したと言う。

 しかし、好調の裏には「タマ不足」という悩みもある。フォルクスワーゲンの販売は全世界で好調であり、2009年の年間販売台数630万台に対し、2010年は700万台を超える見込み。このため、全世界のインポーターで商品の取り合いになっており、供給がやや足りない状態と言う。

 事情はポロGTIでも同様で、もともとスポーツモデルは生産台数が少ないうえに、予約注文も好調と言う。早めにGTIオーナーになりたい向きは、急いだ方がよさそうだ。

(編集部:田中真一郎)
2010年 9月 21日