日産、新型「ノート」生産の地・九州で発表披露会を開催 社内でも議論があったが、九州で生産することを決断 |
日産自動車は8月28日、グローバルコンパクトカー新型「ノート」を9月3日に発売すると発表した。
新型ノートは、新開発の直列3気筒 DOHC 1.2リッター直噴
スーパーチャージャー「HR12DDR」型エンジン搭載車をラインアップ。1.2リッターの排気量でありながら、1.5リッタークラスの動力性能(最高出力72kW[98PS]/5600rpm、最大トルク142Nm[14.5kgm]/4400rpm)と、JC08モード燃費25.2km/Lという燃費性能を実現している。
価格やグレード構成、搭載エンジンの詳細については関連記事を参照してほしい。
日産の新型車の発表会は都内もしくは神奈川県の日産本社で開催されることが通例だが、グローバルコンパクトカーであるこの新型ノートの発表会は、製造を担当する日産自動車九州(福岡県京都郡苅田町新浜町)で開催。報道陣に加え、日産自動車九州の従業員、地元サプライヤー代表、日産販売店代表などを招き、工場内で発表披露会が行われた。
■日本のもの作りを維持するための国内生産を決断
生産工場内での発表会のためか、自動車生産のラインオフを模した形で、新型ノートが登場した。ドライバーは生産スタッフ、同乗者は開発スタッフという形で、全8色のボディーカラーのノートをお披露目。最後に登場したソニックブルーのノートには、日産自動車九州社長の児玉幸信氏と、日産自動車 COOの志賀俊之氏が同乗していた。
生産工場である日産自動車九州内に設けられた発表会場。「Kyushu NOTE collection」と記されており、ファッションショーを意識した作り | 新型ノートの登場 |
新型ノートが次々に登場。ドライバーは生産スタッフが担当した。ソニックブルーのノートの後席から、日産自動車九州社長の児玉幸信氏(写真右下、右)、日産自動車 COOの志賀俊之氏(写真右下、左)が登場 |
志賀COOは、今年4月まで自工会(自動車工業会)の会長も務め、定例会見では日本で自動車を生産し続けることの難しさを業界を代表して発言。「円高」「自由貿易協定」「法人税」「CO2排出削減」「労務環境」に加え、震災後に加わった「電力需給」の6重苦により、日本でのもの作りが徐々に厳しくなっているとの認識を示していた。その中で、この新型ノートに関して、国内での生産を決断。日産が国内100万台生産を維持していく上での重要な車種となり、コスト競争力に厳しいコンパクトカーを日本で作っていくことが、日本のもの作りを高めていくとの思いを語った。以下にその発言を紹介する。
新型「ノート」の発表披露会を、もの作りの現場である九州という地で、日産自動車九州のみなさんとともに迎えることができ、大変嬉しく思っています。また、九州地域のサプライヤーのみなさん、そして日産販売会社の皆さんとともにこの発表イベントを実施できますことを、感無量の思いで一杯です。
新型「ノート」の生産を日産自動車九州で立ち上げるにあたり、ご尽力いただいたすべての方々に、まずはこの場をお借りして心よりお礼申し上げる次第です。
初代「ノート」は、2005年1月の発売以来、爽快な走りと使い勝手のよさをウリに、国内でこれまで累計で約50万台を販売してきました。2代目となる新型「ノート」では、従来車の特長にさらに磨きをかけ、スタイリッシュなデザインに加え、取り回しのよさと広い室内空間を同時に実現しています。
それだけではありません。新開発の直噴スーパーチャージャー搭載の1.2リッターエンジンにより、25.2km/Lと、同クラスのガソリン車でNo.1の低燃費としながら、1.5リッター車並のトルクで、力強く気持ちのよい走りを楽しむことを可能としました。
国内における小型ハッチバック市場は、100万台規模で推移するコンパクトカー市場の約7割を占めています。詳しくはこの後、チーフ・プロダクト・スペシャリストの水口よりご説明しますが、新型「ノート」は、低燃費によるコストパフォーマンスのよさと、乗る人すべてが快適に過ごせるストレスフリーな室内空間の両立によって、「ティーダ」のお客様にも受け入れていただけるクルマに仕上がっており、小型ハッチバックの熾烈な販売競争に十分に伍していけるものと、確信しています。
先月横浜で開催いたしましたワールドプレミアで、私はこのクルマをグローバルで年間35万台以上販売し、その内12万台を国内で販売すると申し上げました。
新型「ノート」の販売開始は9月3日を予定しておりますが、販売初年度となる今年度は、国内で10万台以上を販売していきたいと思っております。
ご覧ください。新型「ノート」のボディーカラー全8色が揃いました。ここ日産自動車九州でオフラインされた「ノート」が日本中のいたるところで走る姿を想像するとワクワクします。
国内市場は、日産にとってのホームマーケットです。日産はこれまでも、世界で最も厳しい目を持つ日本のお客様に鍛えていただき、育ってまいりました。
その日本で、これからも日産がお客様に支持され、日産車に喜んで乗っていただけることが、日本のみならずグローバル市場でさらに成長していく重要なカギとなります。
ご承知のとおり、いま、国内でのもの作りは大変厳しい環境下にあります。そうした中、新型「ノート」をどこで生産するかについては、社内でもさまざまな議論がありましたが、私たちはこの日産自動車九州で生産する決断をしたのです。
今日というこの日を迎えることができましたのは、まさにここにおられる従業員をはじめ、協力いただいたサプライヤーのみなさん全員が「九州ビクトリー」という厳しいチャレンジに取り組んでいただいたからこそであります。
グローバルマザーとしての日本の工場で、高い品質と徹底したもの作り革新によって生産されるこの新型「ノート」は、まさに我々日産の自信作と言えるでしょう。
「ノート」の車名には、毎日をリズミカルに楽しくする「音符(Note)」と、そんな毎日を記憶にとどめておくための「筆記帳(Note)」という意味が込められています。
新型「ノート」で日産自動車、および日産自動車九州の真新しいページを開くときが、今まさに来ました。日産は、国内生産100万台を維持していくことを目指しています。新型「ノート」は、必ずやこのコミットメント達成に貢献してくれるでしょう。
私どもは今年度、5月に「シーマ」、6月に「NV350キャラバン」、そして今月1日には「セレナ S-HYBRID」を発売いたしました。おかげさまをもちまして、いずれの車種も極めて順調な立ち上がりとなっております。今後、小型セダン「ラティオ」、そして「シルフィ」のフルモデルチェンジも予定しています。
このように新型車を続々と国内市場に投入してまいりますが、既存のラインアップもあわせて大幅に強化していく予定です。
日産は赤い卵を使い、「今までになかったワクワクを。今までになかったエコ技術で。」というテレビコマーシャル放映しています。新しいPURE DRIVE(ピュアドライブ)である「S-HYBRID」「エコスーパーチャージャー」など、新しいイノベーションを通じて、今までになかったワクワクを、これからもお客様にお届けしてまいります。どうぞご期待ください。
■1人1人の力を結集し量産・販売目標達成を
新型ノートの商品概要については、日産自動車 商品企画本部 商品企画室 チーフ・プロダクト・スペシャリストの水口美絵氏が解説。新型ノートは、「低燃費」「ストレスフリー」「スタイリッシュ」というみんなの思いを叶える新世代のスタンダードカーであり、それを実現するためのスマートテクノロジーが注ぎ込まれていると言う。
日産自動車 商品企画本部 商品企画室 チーフ・プロダクト・スペシャリスト 水口美絵氏 | 新型ノートで目指したこと | 新型ノートの商品コンセプト |
ガソリン登録車クラスNo.1低燃費 | 1.2リッターダウンサイジングエンジンを搭載する | 広さや快適性を犠牲にしないスタイリッシュなデザインを実現 |
ティアナクラスの快適な室内空間を確保 | 外観デザイン | 室内デザイン |
グレード構成と価格 | ボディーカラーは全8色 |
概要説明の後は、日産自動車北九州の生産スタッフによる決意表明が行われた。この決意表明についても全発言を以下に掲載する。
追浜工場から引き継いだ新型「ノート」を、高品質の車両を市場に送り出し、小型車ナンバーワンを獲得するを合い言葉にこれまで培ってきたノウハウのすべてを注ぎ込み高い目標達成のため、ファミリーが一丸となり、日夜にわたる検討を繰り返してまいりました。今までの苦労と達成感を、すべての方々が味わいながら今日という日の喜びに浸っていると思います。
しかしながら私たちには大切な使命が残っています。この新型「ノート」をNo.1の品質で継続して市場に送り届けなければならないという使命です。このことを成し遂げるために私たちは誓います。
1つ、私たちは高品質の新型ノートを市場に送り込み「九州ビクトリー」を勝ち取る。
1つ、私たちはもの作りのプロとして技能と技術をさらに高め、グローバルNo.1の工場を目指す。
1つ、私たちは体力と気力の限界に挑み、あきらめることなく、高い目標にチャレンジする。
日産自動車 生産担当常務 櫻井亮氏(右奥)、日産自動車九州社長 児玉幸信氏に向け、生産の決意を表明 |
この、決意表明の後、掛け合いコールを実施。最初に、神奈川日産、カルソニックカンセイ九州、日産プリンス福岡という、販売、地元サプライヤーのビデオによる「がんばろう」の掛け合いコールがビデオ上映された後、日産自動車九州のスタッフが発声。「日産九州初の新型車であるこのノートを1人1人の力を結集し、全員の力で量産・販売の目標達成をするとともに、日産パワー88目標達成に向けてがんばろう」「がんばろう」「がんばろう」と、工場内で開催された発表披露会を締めくくった。
神奈川日産の「がんばろう」 | カルソニックカンセイ九州の「がんばろう」 | 日産プリンス福岡の「がんばろう」 |
発表会場での「がんばろう」 |
掛け合いコールを行う志賀COO | 終わった後はスタッフと次々に握手 |
新型ノートの開発スタッフが集まって行われた工場内での発表会は、生産を担当する日産自動車九州にとって、発表会に招かれた地元サプライヤー代表などにとって、なによりも嬉しいものに違いない。逆に言えば、それだけ日本のもの作りがギリギリの状況に追い込まれていることを表しており、円高をはじめとする6重苦の中で生産を行っていく。
9月3日に発売される国内向けの新型ノートは、全量が日産自動車九州で生産される。新搭載のガソリンエンジンで達成した、低燃費と高出力をディーラーなどで体感してみてほしい。
工場内で行われた記念撮影 | すべてのボディーカラーが揃ったノート | 本社スタッフも揃いのポロシャツでノートの誕生を祝う |
(編集部:谷川 潔)
2012年 8月 30日