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NASVA(自動車事故対策機構)、予防安全性能アセスメントのデモ試験を公開

将来的には「車線逸脱時のステアリング制御装置」の試験も実施予定

2014年10月23日発表

予防安全性能アセスメントの公開デモ試験を実施

 NASVA(自動車事故対策機構)と国土交通省は10月23日、2014年度から新たに実施した自動車の「予防安全性能アセスメント」の試験内容と、国内8メーカーの26車種について実施した試験結果を公表した。

 自動車アセスメントでは、1995年度から日本国内で販売されている自動車の各種衝突試験を実施して車両の安全性能を評価しているが、今年から近年装着車が増えている衝突防止・被害軽減のための「自動制動装置(AEBS)」や、「車線逸脱警報装置(LDWS)」などに関する試験を予防安全性能アセスメントとして追加。一定の計測方法に従って得点を算出し、40点満点で評価している。この結果、26車種全てについてNASVAが認定するASV(先進安全車)マークが付与可能になった。

 また、評価点が12点以上の「ASV+」認定車は15車種。そのうちレクサス(トヨタ自動車)「LS 460 F SPORT」、日産自動車「スカイライン 200GT-t Type P」、スバル(富士重工業)「レヴォーグ/WRX 1.6GT EyeSight」の3車種は、評価点が満点の40点になったことも明らかにした。

予防安全性能アセスメントで満点を達成したレクサス「LS」(左)、日産「スカイライン」(中央)、スバル「レヴォーグ」(右)

AEBSなどの試験では“自動操縦ロボット”を使用

 今回の予防安全性能評価試験では、大きく分けて2種類の試験が行われた。1つは衝突回避や被害軽減を目的に、前走車や障害物を検知して自動で制動制御(ブレーキング)を行う「AEBS(衝突被害軽減制動制御装置)」に関するもの。もう1つは、走行中の車線からはみ出たり、はみ出そうになったときにドライバーに警報音などで伝える「LDWS(車線逸脱警報装置)」に関するものだ。

 AEBS試験では、車両後部を模したターゲットバルーンを用意。このターゲットに対し、試験車両を一定速度で接近させ、アクセルオンのまま「静止しているターゲット」、もしくは「20km/hで先行するターゲット」を自動ブレーキで衝突回避できるかどうかをチェックした。

 また、異常接近したときに車両が発する警報音のあと、1秒後にアクセルをオフにし、さらに0.2秒後に急制動するといった、反応が遅くなりがちな高齢者を想定した「FCWS(衝突警報装置)試験」も合わせて実施している。

車両後部を模したターゲットバルーンと牽引車両
試験で衝突した場合、ターゲットバルーンがレール上を滑走して衝撃を吸収する仕組み

 AEBS、FCWSの両試験においては、試験車両と先行するターゲットバルーンを牽引する車両の両方に自動操縦ロボットを搭載。車両のGPSと別途付近に設置したGPS補正用の基地局を併用して、総合的に誤差約2cm以下の精度で半自動走行する方式としている。ターゲットバルーンについても単に車両の形状を模しただけでなく、試験車両が発する各種レーダーなどに対して実車と同等の被検出特性を発揮する設計で構成しているとのこと。

 試験車両の走行速度は、10〜60km/hの間で5km/h刻みに設定。試験の条件は1車種あたり計34種類となる。衝突を回避できたか、回避できなかった場合は衝突時の相対速度がどれくらいか、といったデータから「速度低減率」を算出し、現実の事故実態から国があらかじめ試算したASV技術による速度域ごとの事故低減効果のデータと突き合わせ、走行速度や機能などによって重み付けして配点する。

AEBS試験、FCWS試験の方法と評価の仕方
対定速車両 4分割
対停止車両 4分割

 例えば、ASV技術によって衝突が回避できた場合に最も死亡・重傷事故が減らせるであろうと国が試算しているのは35〜40km/h付近であり、この速度域での試験で十分な速度低減率を達成していれば高得点に繋がる。逆に、15〜20km/h付近や55km/h以上ではASV技術が動作しても、これまで以上に死亡・重傷事故を効果的に減らすことはできないとして、この速度域での配点は低めに設定されている、といった具合だ。

 AEBSの試験結果では、前述のとおりレクサス LS、スカイライン、レヴォーグ/WRXが満点となる32点だったが、スバル「フォレスター 2.0i-L EyeSight」(31.9点)、スバル「インプレッサ XV HIBRID 2.0i-L EyeSight」(31.3点)の2台もほぼ満点に近い得点を達成している。

自動操縦ロボットを搭載したダイハツ「タント」
車両内部の様子
ステアリング、アクセル、ブレーキを、あらかじめ設定したプログラムを使って操縦する
後部座席には制御装置が積載されていた
テストコース近くに設置されたGPS受信装置
車両内にある基地局装置を介し、ルーフに設置されたアンテナで試験車両などに位置情報を無線送信する
試験車両に取り付けられたGPS装置
ちなみに自動操縦ロボット×2とGPSの基地局の導入費用は、合計でおよそ5000万円とのこと
ターゲットバルーンを20km/hで先行させながら試験車両を接近させるデモンストレーション
衝突防止・被害軽減装置が働かない場合はこのように衝突してしまう
制御装置が正しく動作していると安全に減速、停止する

AEBSやLDWSは「あくまでもドライバーを支援するもの」

LDWS試験の方法と評価の仕方
自動車事故対策機構 自動車アセスメント部長 猪股博之氏

 LDWS試験は、試験車両を一定の速度、一定の進入角度で車線に近づけ、あらかじめ設定した判定領域内で警報が作動すれば得点になるというシンプルな内容。車両の仕様に合わせて60km/hと70km/hのいずれかの走行試験が実施され、こちらも死亡・重傷事故低減効果の試算に基づき、60km/hで作動すれば8点、70km/hで作動すれば4点が付与される。

 結果は、試験車両のうち車線逸脱警報装置を搭載しているトヨタ(レクサス)、日産、スバル、マツダ、三菱自動車工業の計14車種が満点の8点。スズキ、ダイハツ(一部にマツダ、三菱へのOEM車あり)、ホンダの計12車種は同装置を搭載していないため0点となっている。

 AEBS試験とLDWS試験を総合した結果、前述の満点3車種に加え、トヨタ「カムリ G Package」、日産「エクストレイル 20X エマージェンシーブレーキパッケージ」、ホンダ「オデッセイ ABSOLUTE EX」、マツダ「アクセラ XD」、三菱自動車「アウトランダー(アウトランダーPHEV)G Navi Package」など、計15車種が12点以上を獲得してASV+に認定。26車種全てがASVとして認定されている。

車線逸脱警報 4分割

 ただし、AEBSやLDWSのような予防安全装置・技術は、「あくまでもドライバーを支援するもの」と自動車事故対策機構 自動車アセスメント部長の猪股博之氏は釘を刺す。降雪や汚れなどによって装置の動作に必要なセンサーやカメラが正常に稼働しない可能性もゼロではないため、「装置が十分に機能を発揮しない状況もあることについて、ドライバーが理解しておく必要がある」と注意をうながした。

鳥のフンを想定して、カメラセンサーの視界を遮るようにフロントガラスを汚したところ
センサー異常を検知し、運転席のメーターパネルにAEBSとLDWSが2つとも機能しなくなったことを知らせる警告が表示された
予防安全性能評価試験について「国内初で、世界でもほとんど例のない取り組み」と胸を張る国土交通省 自動車局次長 和迩健二氏

 なお、予防安全性能アセスメントの内容は今後も技術の進化に合わせて継続的に拡充する計画。2015年度には車両周辺を映像化してドライバーに情報提供し、巻き込み事故などを低減する「車両周辺視界情報提供装置」の試験を開始し、歩行者に対しての被害軽減を目的とした衝突被害軽減制動制御装置に関する試験も2016年度に開始予定。さらに国土交通省 自動車局次長の和迩健二氏によれば、現在一部の車種で搭載している「車線逸脱時のステアリング制御装置」などに関する試験についても、市場での普及具合を見ながら実施を検討していくと説明された。

予防安全性能評価試験の結果一覧

(日沼諭史)