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JAL、空港でのサービスの質を競う「Airport Service Professional Contest 2014」開催

約5000名のスタッフからソウル 金浦空港のイ・ダヘさんが優勝に輝く

2014年11月13日開催

コンテスト出場者など全員で記念撮影

 JAL(日本航空)は11月13日、JAL 第1テクニカルセンター(東京都大田区)で「Airport Service Professional Contest 2014(空港サービスのプロフェッショナルコンテスト)」を実施した。

 このコンテストは「お客さまが常に新鮮な感動を得られるような高品質なヒューマンサービスの提供を目指し、お客様に“寄り添い”JALフィソロフィーを価値観として体現できる“安全とサービスのプロフェッショナル”の選出」を目的としたもので、一昨年、昨年に続き今年で3回目の開催となる。

 これまでは国内のみを対象としたものだったが「日本の“おもてなし”を感じてほしい」と、今年からは海外空港のスタッフも参加可能となった。コンテストはまず、国内および海外の全スタッフ約5000名のなかから、各施設がそれぞれの方法で代表を選び、合計58名を出場者として選出。本戦前日に「アナウンス審査」「カウンターチェックイン審査」による予選を行い、この予選を通過した上位13名がこの日行われた本選に駒を進めることになった。

 本選の審査は日本航空 代表取締役社長 植木義晴氏をはじめ、帝国ホテル ディレクタープロトコール 室谷廣二郎氏、オリエンタルランド CS推進部長 樗木邦夫氏、アメリカン航空 上席副社長 Suzann Boda氏といった社外ゲストのほか、同社の執行役員など16名で審査員を構成。また、前日の予選出場者にも投票権が与えられ、「お客様視点」での投票が可能となっていた。

 審査内容は予選と同様に「アナウンス審査」「カウンターチェックイン審査」となるが、より現実的なシチュエーションを想定したものとなった。

本選を前に緊張の色が隠せない13名の出場者
アナウンス審査の概要
各出場者の持ち時間は3分間

 午前中に実施されたアナウンス審査は、別室で審査開始10分前にお題を発表。これをベースに参加者が3分間の原稿を日本語と英語でそれぞれに作成。全員が会場に移ってアナウンスを行う。このレギュレーションでは後半の出場者が有利になるため、順番はくじ引きによって決定された。

 お題となった状況は「JAL XXX便 XX行 XX時XX分発 搭乗間際に目的地空港が雪により滑走路閉鎖となりました。そのため、今から1時間後の天候調査により運航可否を決定することになりました」という内容。この基本情報を使いつつ、乗客に不安や不満を感じさせず、どれだけ的確に状況を説明できるかがカギとなる。

 1番手となった高知空港の安藝友紀子さんはさすがに緊張が隠せないようすだったが、ソツなくお題をクリア。多少の時間オーバーはあったものの、すべての出場者が大きな問題もなく審査を終了した。ただ、アナウンス審査の総評を求められた審査員から「“申し訳ありません”というフレーズが多すぎて内容が分かりづらい」と指摘されていた。しかし、まったく事務的に済ませてしまうとそれをよしとしない場合もあり、明確な正解があるわけではないためなかなかに難しいところだと感じられた。

多くの審査員を前にアナウンスを行う
納得のいくアナウンスができなかったのか、出場者が涙ぐんでしまう場面も見られた

 休憩を挟んでカウンターチェックイン審査が行われた。これは実際のカウンター業務をシミュレーションし、並んでいる5人の乗客に対応するというもの。乗客は「出張などで旅慣れたサラリーマン」「旅行慣れしていない女性客」「身軽だが英語しか話せない旅行者」「単身赴任の夫に会いに行く女性客」に加え、「出発時刻を気にして割り込む女性客」と、それぞれ異なるキャラクター付けとなっている。これらの個性ある乗客が、破損していたり小物が付いている荷物、機内持ち込みサイズを超える荷物を預けようとするなど、変化に富んだ内容となっていた。制限時間は8分とされていたが、国際線を担当する参加者の場合はパスポートや荷物のチェックが加わるため、シチュエーションによってはやり取りに時間がかかることもある。このため、制限時間をオーバーしても審査には影響しないとされた。

 不特定多数の乗客を相手にするアナウンス審査と違い、個人対個人での対応となるため、英語しか話せない乗客に「英語が苦手なもので……」と対応して会場の笑いを誘う出場者が現れるなど、それぞれに個性が感じられる内容となった。

 また、この本選に残った参加者には「サービスアドバイザー」の資格が与えられ、アルメリアの花をデザインしたバッヂが手渡された。これはアルメリアの花言葉が「おもてなし」であることに由来するもので、今後は後任の育成を担当する立場となる。

午後からはカウンターチェックイン審査が行われた
会場となったのは第1テクニカルセンター4階にある空港旅客サービスモックアップ。通常は実技講習などに使われる施設
カウンター前に並ぶ4人の乗客と、割り込んでくる乗客を相手に実技を行う
カウンターチェックイン審査も事前のくじ引きで順番を決定。1番手は福岡空港の佐藤さん
2番手は伊丹空港の佐竹さん。白いスーツケースを持ち込んだ乗客に「ビニールのカバーをおかけしましょうか?」と気遣う
英語しか話せない乗客にも的確な案内を行う東京国際空港(羽田空港)の井上さん
成田国際空港の大見さんはキャリーケースの取っ手が壊れていることを発見し、テープによる補強を提案するとともに確認のサインを求めるなど、ソツのないサービスを提供
羽田空港の廣嶋さん。国際線には100mL以上の液体を持ち込めないため、その確認と小さなボトルへの移し替えを提案
機内持ち込みサイズを超えるキャリーバッグを持参した乗客に対応する高知空港の安藝さん。「持ち込めません」と言い切るのではなく、オーバーヘッドストレージに収納できないサイズであることを告げ、受託手荷物として預ける同意を求めた
徳島空港の内村さん。スムーズに乗客の案内を行っていくが……
英語しか話せない乗客を前に舞い上がってしまい、会場を和ませる場面も
中部国際空港の伊藤さんも白いスーツケースに気づき、ビニールカバーを掛けることを提案
ほぼ完璧な発音で日本語の案内を行うソウル 金浦空港のイさん。英語での案内は圧倒的にスマートだった
笑顔で乗客に対応する秋田空港の佐藤さん。しかし、その後方で並ぶ乗客は待つ時間が長くなってくるとイライラしたようすを表すなど、細かな演技で出場者にプレッシャーを与える。普段は教官や教育を担当するスタッフだが、芸が細かい
割り込んできた乗客に対応する熊本空港の前方さん。まず話を聞き、時間に余裕があることを伝えてから列に並ぶよう伝える。後方の乗客にも「お待たせいたしました」とサポートの言葉を忘れない
カバン内にお酒の瓶があることを聞き「割れることもあるので手荷物として機内に持ち込んでは?」と提案
持ち込めないサイズのキャリーバッグを持つ乗客が機内でパソコンを使う要望があることを聞き出し、持ち込み用の紙バッグを手渡す福岡空港の佐藤さん
小松空港の塩梅さんも「英語がダメで」と言いつつも、ボディーランゲージを交えつつなんとか対応
コンテスト後に優勝者の名前が入る予定のプレート
本選出場者には「サービスアドバイザー」の資格と、アルメリアの花をデザインした通し番号入りのバッヂが与えられる。ちなみに教官は同デザインでゴールドカラーのバッヂを付けている

 見事に優勝に輝いたのは、海外勢で唯一本選に残ったソウル 金浦空港のイ・ダヘさん。準優勝は熊本空港の前方真季さん、3位は成田国際空港の大見怜加さんが選ばれた。また、植木社長たっての願いとのことで特別賞として「社長賞」が急きょ追加され、徳島空港の内村瀬里奈さん、小松空港の塩梅麻依子さんに贈られた。

 3位の大見さんは「素晴らしい賞をいただき光栄に思っておりますが、国際線として初優勝を目指していたので少し悔しいです。これからは後輩をたくさん指導して、次こそ優勝できる人材を育てられるように頑張りたい」と、笑顔でスピーチ。

 準優勝となった前方さんは「この場に立たせていただいたことをビックリしていますし、今日、みなさまの前で私の普段の接客ができたことをとても嬉しく思っております」と語った。

 優勝したイさんは「優勝できたことを誇りに思う。これから仕事をもっともっと頑張れる」と笑顔で語り、優勝のポイントについては「英語ができたことがプラスに働いたのではないか」と分析。また、日本のスタッフの接客について「自然に身につけた動きや丁寧な接客に感動した。みなさんの接客を見ることができて勉強になった」と話した。

 社長賞を受賞した内村さんは「プロフェッショナルコンテストで、英語ができない私がこんな賞をいただいていいのか」と言葉を詰まらせつつ、明日からこの賞にふさわしい人になるように努力するとした。次いで「やっぱり呼ばれると思ったでしょう」と、植木社長から声をかけられた塩梅さんは「とても光栄な賞をいただいて本当に嬉しく思います。今日はお上品な接客を心がけていたのですが、緊張するといつもの私が出てしまいます」と語り、会場を和ませた。

優勝したソウル金浦空港のイ・ダヘさん。かなり驚いたようすで涙ぐむ場面もあったが、最後には喜びのガッツポーズ
準優勝は熊本空港の前方真季さん。前勤務地が福岡空港だったことを挙げ「大きい空港と小さな空港で学んだ知識を生かしていきたい」という
3位となった成田国際空港の大見怜加さん。優勝できなかったことが少し悔しいと言いつつも終始笑顔だった
英語が得意ではないと言っていた徳島空港の内村瀬里奈さんと小松空港の塩梅麻依子さん。そのハンデをカバーし「おもてなし」の心がこもったサービスをしたことで社長賞が贈られた
コンテスト終了後に総評を語る日本航空 代表取締役社長 植木義晴氏

 表彰式のあと、取材陣の囲み会見に応じた植木社長は、今回の結果について「凄く安定していて安心して見ることができた。我々は“お客様に寄り添うサービス”と“常にお客様に新鮮な感動を覚えていただけるようなサービス”を目指しているが、アナウンスにしてもカウンターでの接客にしても、実は1分か2分でしかない。この短いなかでどれだけ自分の個性を出すか、心を伝えられるかという観点で見て、全員一致でイさんの優勝に決まった」とした。また、このコンテストについては、「顧客満足ナンバー1」を目指すなかで3年前に初めて大会を実施。今では「このコンテストに出場すること、本選に残ること、1位になることを目指してみんなが努力をしていく流れになった。そういう意味で凄く価値のあるコンテストになっていると思っている」とした。

高知空港の安藝友紀子さん
徳島空港の内村瀬里奈さん
秋田空港の佐藤眞美子さん
福岡空港の松藤友希さん
小松空港の塩梅麻依子さん
福岡空港の佐藤好さん
中部国際空港の伊藤佳奈さん
成田国際空港の大見怜加さん
熊本空港の前方真季さん
伊丹空港の佐竹由衣さん
羽田空港の井上恵さん
羽田空港の廣嶋めぐみさん
ソウル 金浦空港のイ・ダヘさん

(安田 剛)