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TOYOTA GAZOO Racing、2016年のモータースポーツ活動計画発表会リポート
WRCチームの指揮を執るトミ・マキネン氏「成功のために一番必要なことは、高い志を持った人を集めること」
(2016/2/5 16:07)
- 2016年2月4日開催
トヨタ自動車は2月4日、東京 お台場にあるアミューズメント施設「メガウェブ」で2016年シーズンのTOYOTA GAZOO Racing活動計画を発表した。
当初予定されていた豊田章男社長は体調不良のため欠席となったが、今シーズンにTOYOTA GAZOO Racingより参戦するドライバーが各カテゴリー毎に紹介されるとともに、2017年から参戦を予定しているWRCチームの代表を務めるトミ・マキネン氏も参加した。
発表会冒頭、トヨタ自動車の創業者 豊田喜一郎氏が亡くなる直前の1952年3月に書いた「オートレースと国産自動車工業」と題された文章を紹介し、同社 専務役員の伊勢清貴氏が「人を鍛え、クルマを鍛え、もっといいクルマを作るトヨタでありたい。そして人々にもっともっとクルマを好きになってもらいたい。この思いがあるからこそ我々は継続的にモータースポーツに取り組んでいかなければならないと思っている」と述べた。
「オートレースと国産自動車工業」(1952年3月)
「オートレースに於いて その自動車の性能のありったけを発揮してきてみて その優劣を争う所に改良進歩が行われ モーターファンの興味を沸かすのである。」「オートレースは、唯単なる興味本位ではなく、日本の乗用車製造事業の発達に必要欠くべからざるものである。」
また、伊勢氏は昨シーズンにアメリカのNASCARシリーズにおいて参戦9年目で初めてトヨタにドライバータイトルをもたらしたカイル・ブッシュ選手、スーパーフォーミュラでのチームタイトル獲得、そしてドライバータイトルを獲得した石浦宏明選手、今年のダカールラリー3連覇の参加選手に対し「ありがとうございました」と感謝の意を述べた。
伊勢氏のスピーチの後、2017年より参戦を予定しているWRC(世界ラリー選手権)についての対談が予定されていたが、豊田章男社長の欠席により社長からのメッセージの紹介と登壇者のスピーチが行なわれた。登壇者はトヨタ自動車から専務役員の嵯峨宏英氏、WRC参戦マシンのエンジンを担当するTMG(Toyota Motorsport GmbH)の社長 佐藤俊男氏、そしてWRCチームの代表を務めるトミ・マキネン氏の3人。
なお、当初の予定では豊田章男氏とトミ・マキネン氏の対談という形が予定されていたとのことだが、このWRCのプロジェクトがトミ・マキネン氏に丸投げしているのではないかとの噂があることを耳にした豊田章男氏が、自分を含めた4人が壇上で話す姿を見てもらえれば、噂は決して事実ではないことを感じてもらえるのではないかとの想いから予定を変更したとのこと。豊田章男社長はTMGについて以下のようにメッセージに記した。
トヨタ自動車 社長 豊田章男氏(TOYOTA GAZOO Racing チーム総代表)のメッセージ
「もっといいクルマ作りのためにWRCに参戦するということは今まで何度も話してまいりました。でも、それとは別にTMGへの想い、これがあったから本日はそのことをお伝えしたかった。私が社長に就任していくつもの決断をしてきました。その大きな1つがF1の撤退です。F1撤退後、TMGはクルマを作りたくても作れない人たちばかりになってしまいました。中にはTMGを去る人もいました。また、その去る人に中には設備にサインをしてTMGを去った人もいると聞いてます。その時のTMGは本当に無念の塊だったと思います。その中で、やっぱりクルマが好きでトヨタが好きで、TMGに残ってくれたメンバーもいました。その彼らがWRC参戦を夢見ながら時間外の活動でクルマを作り続けてくれました。そんなTMGの仲間たちに本当に感謝しています。そういうクルマ好きの仲間がトヨタにいたからこそTMGとともにもう一度WRCに参戦したいと思います」
TMG社長 佐藤俊男氏
TMG社長の佐藤俊男氏は、「今回TMGはエンジンを担当いたしますが、F1以来エンジンのメンバーは技術と開発力を培い磨いてきています。その技術とマキネンさんのクルマ作りを融合させて戦闘力の高いエンジンを作っていきたいと思っています」と語るとともに、「かつてトヨタはWRCのチャンピオンだった。昔から応援してくださる方は、その世界一だったトヨタがラリーに戻ってきてくれると笑顔で言っていただけているそうです。だからこそ我々は勝つチームを作っていかなければならない。その勝つためには戦い方を知っているマキネンさんの力が必要だと(豊田社長は常々)言っています。クルマを作ってきたTMGとマキネンさんの戦い方が融合した時に、新しい大きな力が生まれるのではないかと豊田は熱く語っています」と、WRCについて豊田社長が佐藤氏に語った内容を紹介した。
トミ・マキネン氏(チーム代表)
「私はこのような一大プロジェクトの一員になれたことを非常に嬉しく思っております。成功のために一番必要なことは、高い志を持った人を集めることだと思っております。私のキャリアを振り返りましても、きちんとしたいいチームが強い(絆で結ばれた)ファミリーとなって努力をし、高い意識を持ってやっていってこそ最良の結果が出ることを身をもって経験してきました。ですから、私が現在一番力を入れているのがそういうチーム作りをするということです。そういうチームを作ることによってトヨタのWRCチームは勝てる状態になっていくと思います」
トヨタ自動車 専務役員 嵯峨宏英氏
「目指すのは勝つことだけではなく、トヨタがこういう想いでラリーに挑戦するという意義に共鳴してくれる人でなければならないと思うんです。彼(トミ・マキネン)は純粋で、彼のクルマ作りへの情熱にも感激しています。だから(豊田)社長はマキネンさんにお願いしたんだと理解しております。マキネンさんとともに戦うからこそ意味があるし、ここで勝っていくことが我々の仕事だと思っております。一緒に勝てると思います。もちろんすぐに勝てるかどうか分かりません。ですが、勝つためにやります。勝つことでトヨタを示したい。何よりも日本車の実力を示したい。やるからには日本を背負って頑張りたいという想いでやっていきます。王者が戻ってきたね、と心からいってもらえるようにマキネンやTMGの仲間達と一緒に戦っていくつもりであります。もちろんTMGは、ラリー以外にももう1つの頂点であるWECでも勝利を目指し活動を強化していきます。これも期待していただきたい。(TMG社長の)佐藤はWEC(世界耐久選手権)の代表としても全力投球しています。今年は勝てるパワーが備わっていると思っているので、ぜひ期待して欲しいと思います。WRC、WECともに応援していただきたいと思います」
国内外各カテゴリーの参戦選手を紹介
発表会の大半がトヨタのWRC参戦に関するプログラムであったが、トークセッション終了後にはWEC、ニュルブルクリンク24時間耐久レースといった2016年にTOYOTA GAZOO Racingが参戦する国内外各カテゴリーの参戦選手が紹介された。
また、紹介終了後にはSUPER GT GT500クラスで長年トヨタの顔としてステアリングを託されてきた脇坂寿一選手が現役を引退し、今シーズンよりレクサス チーム ルマン ワコーズの監督に就任することを本人が発表。会場では豊田章男社長よりSUPER GTでの3度のチャンピオン獲得の功績とともに、テレビやイベント等でクルマの楽しさを伝える広報部長的な役割でモリゾーの想いを代弁し続けてくれたことに感謝の意をこめたメッセージが伝えられた。
なお発表された2016年のTOYOTA GAZOO Racing、チーム、ドライバーラインアップは以下の通り。
FIA世界ラリー選手権(WRC)
チーム名 | TOYOTA GAZOO Racing |
---|---|
チーム総代表 | 豊田章男 |
チーム代表 | トミ・マキネン |
車両 | Yaris WRC(全長 3,910mm、全幅 1,820mm) |
エンジン | トヨタ エンジン(TMGにて開発中)1.6L直噴ターボ(グローバルレースエンジン規定に準ずる) |
タイヤ | ミシュラン製 |
FIA世界耐久選手権(WEC)
チーム名 | 車両 | No. | ドライバー |
---|---|---|---|
TOYOTA GAZOO Racing | TS050 HYBRID | TBD | アンソニー・デビッドソン |
セバスチャン・ブエミ | |||
中嶋一貴 | |||
TBD | ステファン・サラザン | ||
マイク・コンウェイ | |||
小林可夢偉 |
ニュルブルクリンク24時間耐久レース
チーム名 | 車両 | No. | ドライバー |
---|---|---|---|
TOYOTA GAZOO Racing | TOYOTA C-HR Racing | TBD | 影山正彦 |
佐藤久実 | |||
吉田広樹 | |||
LEXUS RC | TBD | 木下隆之 | |
松井孝允 | |||
蒲生尚弥 | |||
TOYOTA GAZOO Racing With TOM'S | LEXUS RC F | TBD | 土屋武士 |
片岡龍也 | |||
大嶋和也 | |||
井口卓人 |
NASCAR
チーム名 | No. | ドライバー |
---|---|---|
ジョー・ギブス・レーシング(Joe Gibbs Racing) | 11 | デニー・ハムリン |
18 | カイル・ブッシュ | |
19 | カール・エドワーズ | |
20 | マット・ケンゼス | |
ファニチャー・ロー・レーシング(Furniture Row Racing) | 78 | マーティン・トゥルーエクス・Jr. |
SUPER GT GT500クラス
クラス | チーム名 | 車両名 | No. | ドライバー | タイヤ |
---|---|---|---|---|---|
GT500 | レクサス チーム ルマン ワコーズ(LEXUS TEAM LEMANS WAKO'S) | WAKO'S 4CR RC F | 6 | 大嶋和也 | BS |
アンドレア・カルダレッリ | |||||
レクサス チーム ウェッズスポーツ バンドウ(LEXUS TEAM WedsSport BANDOH) | WedsSport ADVAN RC F | 19 | 関口雄飛 | YH | |
国本雄資 | |||||
レクサス チーム トムス(LEXUS TEAM TOM'S) | TBD | 36 | 伊藤大輔 | BS | |
ニック・キャシディ | |||||
KeePer TOM'S RC F | 37 | ジェームス・ロシター | BS | ||
平川亮 | |||||
レクサス チーム ゼント セルモ(LEXUS TEAM ZENT CERUMO) | ZENT CERUMO RC F | 38 | 立川祐路 | BS | |
石浦宏明 | |||||
レクサス チーム サード(LEXUS TEAM SARD) | DENSO KOBELCO SARD RC F | 39 | 平手晃平 | BS | |
ヘイキ・コバライネン |
SUPER GT GT300クラス
クラス | チーム名 | 車両名 | No. | ドライバー | タイヤ |
---|---|---|---|---|---|
GT300 | エー・ピー・アール (apr) | TOYOTA PRIUS apr GT | 30 | 永井宏明 | YH |
佐々木孝太 | |||||
TOYOTA PRIUS apr GT | 31 | 嵯峨宏紀 | BS | ||
中山雄一 | |||||
エルエム コルサ (LM corsa) | SYNTIUM LM corsa RC F | 60 | 飯田章 | YH | |
吉本大樹 |
全日本スーパーフォーミュラ選手権
チーム名 | No. | ドライバー |
---|---|---|
プロミュー/セルモ インギング(P.MU/CERUMO・INGING) | 1 | 石浦宏明 |
2 | 国本雄資 | |
コンドー レーシング(KONDO RACING) | 3 | TBD |
4 | TBD | |
スノコ チーム ルマン(SUNOCO TEAM LEMANS) | 7 | 小林可夢偉 |
8 | ナレイン・カーティケアン | |
ケーシーエムジー(KCMG) | 18 | 中山雄一 |
チーム インパル(TEAM IMPUL) | 19 | ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ |
20 | TBD | |
チーム トムス(TEAM TOM'S) | 36 | アンドレ・ロッテラー |
37 | 中嶋一貴 |
スーパー耐久
チーム名 | 参戦車両 | ドライバー |
---|---|---|
TOYOTA Team TOM'S SPIRIT | TOYOTA Team TOM'S SPIRIT 86 | 井口卓人/松井孝允/蒲生尚弥 |
ドライバー育成TDP(トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム)
ドライバー | カテゴリー | チーム名 |
---|---|---|
平川亮 | SUPER GT | レクサスチーム トムス(LEXUS TEAM TOM'S) |
European Le Mansシリーズ | TBD | |
中山雄一 | 全日本スーパーフォーミュラ選手権 | ケーシーエムジー(KCMG) |
SUPER GT(GT300) | エー・ピー・アール(apr) | |
山下健太 | 全日本F3選手権 | チーム トムス(TEAM TOM'S) |
坪井翔 | 全日本F3選手権 | チーム トムス(TEAM TOM'S) |