【特別企画】トーヨータイヤのスタンダード低燃費タイヤ「ナノエナジー 3」(前編)
低燃費テクノロジーを、タイヤの“持ち”に配分


ずらりと揃った低燃費タイヤ「ナノエナジー」シリーズ

 低燃費タイヤの「ラベリング制度(低燃費タイヤ等普及促進に関する表示ガイドライン)」が2010年1月にスタートし、転がり抵抗とウェットグリップというタイヤの相反する性能が一目瞭然で分かるようになった。タイヤ性能の“見える化”が行われたことで、タイヤメーカーは開発競争に邁進。ここ数年タイヤは急速に進化し続けている。

 その中で存在感を増しているのがトーヨータイヤ(東洋ゴム工業)だ。ラベリング制度開始前の2009年10月に、「かるがる、ころがる、低燃費」をキャッチフレーズとしたスタンダードタイヤ「ECO WALKER(エコウォーカー)」を発売。このエコウォーカーは、ラベリング制度開始後、転がり抵抗性能「A」、ウェットグリップ性能「c」~「d」となり、同社の低燃費タイヤの1つの基準となった。

 2010年7月には、日本で初めて転がり抵抗性能最高グレードとなる「AAA」(ウェットグリップ性能「c」)の「SUPER ECO WALKER(スーパーエコウォーカー)」を発売。今年は、新たな低燃費タイヤブランド「NANOENERGY(ナノエナジー)」を立ち上げ、転がり抵抗性能「AAA」、ウェットグリップ性能「b」の「NANOENERGY 1(ナノエナジー・ワン)」と、AAA/cの「NANOENERGY 2(ナノエナジー・ツー)」をラインアップ。そして、7月にはラベリング制度のフルスペックと言える、転がり抵抗性能「AAA」、ウェットグリップ性能「a」を達成した「NANOENERGY 0(ナノエナジー ゼロ)」を発売。このナノエナジー 0は、同じくAAA/aを達成したブリヂストンの「ECOPIA EP001S(エコピア イーピーゼロゼロワンエス)」と発売日争いを繰り広げた。結果は本来8月1日発売だったEP001Sが発売日を前倒しし7月1日に一部地域で発売、ナノエナジー 0が予定どおり7月2日に全国発売。フルスペック低燃費タイヤの発売日争いは、日付ではブリヂストンが先行したものの、地域ではトーヨータイヤが広範囲に先行する結果となった。目に見えにくいものの、このような先行争いが行われる低燃費タイヤは、会社の総合力をかけて争われる製品であることを示しているのだろう。

AAA/aのナノエナジー 0ナノエナジー 0の特徴ナノエナジー 0の性能チャート
AAA/bのナノエナジー 1ナノエナジー 1の特徴ナノエナジー 1の性能チャート
AAA/cのナノエナジー 2ナノエナジー 2の特徴ナノエナジー 2の性能チャート
左からナノエナジー 0、ナノエナジー 1、ナノエナジー 2。0と1はトレッドパターンは同じで、コンパウンドや溝深さが異なっている。0では、よりグリップの高いコンパウンドを使い、剛性を確保するために高剛性ベルトの使用や、浅溝化が図られている

 同社がこのように低燃費タイヤの開発に積極的に取り組むのは、時代の要請ももちろんあるが、技術力の確かさを世に知らしめていくため。各社が開発競争を繰り広げる分野において、転がり抵抗性能とウェットグリップ性能を両立したタイヤをいち早く世に出していくことで、トーヨータイヤの技術力の高さ、生産能力の確かさなどを訴え続けていく。

ナノエナジーシリーズに加わった「ナノエナジー 3」
 これまでのナノエナジーシリーズの最後の数字は、ウェットグリップ性能の差を表しており、いずれも転がり抵抗性能「AAA」ながら、AAA/aのナノエナジー ゼロ、AAA/bのナノエナジー ワン、AAA/cのナノエナジー ツーとなっていた。

 新たに加わった「NANOENERGY 3(ナノエナジー・スリー)」は、転がり抵抗性能「A」、ウェットグリップ性能「c」のスタンダード低燃費タイヤで、全46サイズを用意。詳細なサイズラインアップについては関連記事を見ていただきたいが、これまでトーヨータイヤのスタンダード低燃費タイヤを担ってきたエコウォーカー(A/c~d)を置き換えていくものになる。

ナノエナジーシリーズのラインアップ各製品の特徴
12月から発売されるナノエナジー 3商品特徴低燃費性能は「A」に抑えることで、タイヤライフや剛性の向上などが図られている
摩耗性能と転がり抵抗低減性能に優れるアクティブポリマーを増量しているタイヤパターンは、3本溝と4本溝を用意。ナノエナジー 0と比べると顕著だが、ブロック剛性が高いのが見てとれるコンパウンドは低燃費と摩耗性能に優れたものに、内部構造はそれをしっかり支えるものにした

 最大の特徴は、転がり抵抗性能を「A」に抑えることで摩耗性能を向上(摩耗ライフを伸ばした)させたこと。転がり抵抗性能はほどほどでよいから、タイヤの摩耗ライフを伸ばすエコの方向性を目指したものだ。これにより、転がり抵抗性能はエコウォーカーから若干の改善、摩耗ライフは51%向上と大幅に進化している。また、タイヤの高剛性化によりドライ、ウェットの制動距離も短縮することになった。

エコウォーカーなどとの性能比較。同じ転がり抵抗性能「A」のエコウォーカーより、若干の改善が行われている大きく違うのが摩耗性能。50%以上のロングライフ化が図られているナノエナジー 3では、転がり抵抗性能が同等のエコウォーカーよりブレーキ性能が向上しており、摩耗性能とあわせ、低燃費タイヤ開発競争がタイヤを進化させていく

 発売は12月1日。この時期はスタッドレスタイヤ商戦の1つのピークにあたるが、九州や四国など降雪の可能性が高くない地域ではスタッドレスタイヤはそれほど売れないため、ボーナス商戦期に発売することとなった。また、新車は12月~3月にかけて売れていることが多いため、車検時期を迎える母数が多い。長持ちをウリにしたスタンダード低燃費タイヤとして、その交換需要に応えていくものと思われる。

ナノエナジー 3ナノエナジー 3の3本溝トレッドパターン4本溝トレッドパターン

 トーヨータイヤでは、新製品のナノエナジー 3などナノエナジーシリーズの試乗会を袖ヶ浦フォレストレースウェイをベースとして開催。後編では、モータージャーナリストの岡本幸一郎氏によるタイヤインプレッションをお届けする。


(編集部:谷川 潔)
2012年 11月 20日