インプレッション

マツダ「アクセラ プロトタイプ」

フルスカイアクティブ第3弾

 「スカイアクティブ」の魅力はすでに多くの人に浸透しているようで、これがマツダ自体のイメージを引き上げ、ひいては今のマツダに世界的に好調な業績をもたらしている。2013年4月〜6月期の営業利益が前年同月比の実に20倍を達成したとのニュースに驚かされたばかりだが、たしかに今のマツダは、そうなってしかるべき実力を身につけていると思う。まさにすべてが“好循環”である。

 そんなマツダから、スカイアクティブテクノロジーをフルに採用した第3弾モデルとしてまもなく登場する次期アクセラのプロトタイプを、貸し切りのTOYOタイヤ箱根ターンパイクで試乗できた。

 実車を目にするのはもちろん初めてのことで、まずはスタイリッシュなエクステリアデザインに目を奪われる。フォルムはアテンザと“相似”に近い印象で、こうして同じテイストのデザインでサイズの大小の違いがある場合、小さいほうはどことなく物足りなさを感じるケースが少なくないところだが、アクセラにはそれがまったくない。僭越ながら、デザイナーの頑張りに大いに敬意を表したい。

 とくにセダンがそうだ。過去2世代のセダンは、個人的にもあまり好みのスタイリングではなかったし、アクセラの本流はやはりハッチバックだと思っていたのだが、今回、ハッチバックもさることながら、セダンのスタイリッシュさには大いに心惹かれた。

 ちなみに、セダンとハッチバックでは、フロントだけでなくリアドアについてもガラスウインドーをふくめて共通だと聞いて驚いた。てっきりBピラーまでが共通で、それ以降は作り分けていると思っていたが、そうではないらしい。

次期アクセラ プロトタイプに箱根ターンパイクで試乗

 インテリアについても、乗った瞬間から目を見張る気分で、触ってみてさらに驚かされた。各部のクオリティ感が一足飛びに上がっていたからだ。そういえば、最近登場したB〜Cセグ車の品質が予想以上にアップしていることにたびたび驚かされているが、アクセラもかなりインパクトがある。

 ダッシュ中央のディスプレイや、新しいタイプのメーターなども新鮮で好印象だ。スマホやインターネットラジオなどとの連携強化も図られており、これらがユーザーにもたらすメリットは小さくないように思う。

走行安全性を最優先に考えた新しいHMI(ヒューマンマシンインターフェース)を装備するインテリア
見た目の印象以上に包まれ感の強いシート

 シートに収まると、ベストなドライビングポジションを取りやすいことも印象的。従来モデルに対して60mmのホイールベースの延長分は、大半が前席のために配分されていて、フットペダルの位置が最適化されているというパッケージング面の進化も小さくない。これだけAピラーが寝ていながら不快な圧迫感もなく、視界もおおむね良好だ。

今回はガソリンエンジンのみ試乗

 ラインアップのバリエーションは豊富で、セダンとハッチバックで差別化されている。詳しくは別記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/20130910_614727.html)をご覧いただくとして、ガソリンエンジンのMTが選べることが大きな特徴だと思う。

 今回の試乗ではハッチバックのガソリンエンジン車だけが用意されており、そのなかから1.5リッターのAT車、2リッターのMT車&AT車という3モデルに試乗した。ただし、2番目の2リッターのMT車は日本への導入が来春となる見込み。当初は、ガソリンエンジン車のMTは1.5リッターのみに設定となる。ハイブリッドはセダンのみ、ディーゼルはハッチバックのみという設定になっており、それらに試乗するのは今後のお楽しみだ。

 ドライブした第一印象としては、すでに高く評価されているCX-5やアテンザに続いて、アクセラも本当によいクルマになるのだなと痛感した次第。ルックスが魅力的なだけでなく、中身も大きな上がり幅ですべてが向上している。以下、よいと感じた部分についてそれぞれ述べていきたい。

 まず、走り出して最初に感じたのは静粛性の高さだ。最近では静粛性についても世界的にレベルが上昇しているところだが、アクセラも彼らに追いつき、そのトップランナーの一角を占める1台となる。

 そして、スカイアクティブの真骨頂であるパワートレーンも、1.5リッターと2リッターが用意されたガソリンエンジンの味付けの方向性はおおむね共通で、どちらも印象は上々。どの回転域でも応答の遅れなく素直にトルクが出ており、どちらかというとあまり回して楽しむ性格ではないが、非常に乗りやすい。

 排気量に0.5リッターの差があれば性能にも差があって当然で、ときおり長い上り勾配が訪れる箱根ターンパイクでは、それなりに印象の違いはなくはない。とはいえ、期待値に対してリニアにトルクが得られるという意味では、1.5リッターも不満を感じることはなく、とても人間の感性に合ったトルクの出方をしている。むしろ、振動が小さくスムーズな回転フィールや静粛性においては、本来的に排気量が小さいほうが有利なだけに、1.5リッターのほうが上まわると感じたほどだ。

直列4気筒DOHC 2.0リッターガソリン「PE-VPR」
直列4気筒DOHC 1.5リッターガソリン「P5-VPS」

 トランスミッションの「スカイアクティブドライブ」は、トルコンを必要最小限しか使わないATであり、走りはMTとそん色ないほどのダイレクト感があって好印象。今回は箱根のワインディングロードを占有しての試乗なので、それなりに攻めた走り方も試したのだが、おおむねシフトチェンジの歯切れもよく、不満を感じることはなかった。

 マツダの関係者が「メカ」と呼ぶマニュアル=「スカイアクティブMT」のシフトフィーリングも小気味よい。従来よりストロークとシフトレバーシャフトを短縮し、操作荷重の最適化といった機構面の改善が図られており、MTを選んだユーザーの期待に応える仕上がりとなっている。

電子制御6速ATの「スカイアクティブドライブ」
操作荷重を最適化した「スカイアクティブMT」

 一部モデルについてのみだが、すでに公表されているJC08モード燃費については、1.5リッターと2.0リッターでほとんど差がないことが印象的。実燃費はどのくらいなのか、気になるところだ。

自然な「ため」を作り込んだ

 足まわりも、フルスカイアクティブ第3弾となるアクセラでは、よりこなれた印象を受けた。日本向けとして専用のセッティングが施されており、アテンザではやや硬さが感じられた路面への当たりもマイルドになって、不快に感じられることがなくなった。

 アクセラの過去モデルでも走りの素性はわるくなかったと思っているが、そこからより洗練度を深め、レベルがひとつ上の一体感とドライビングプレジャーを手に入れたように感じられた。

 ハンドリングにおいて開発関係者が強調していたのは、「ため」のある動きをするよう作り込んだということだ。これを言葉で表現するのが難しいのだが、いわば次の瞬間をイメージしながら、今とるべきアクションにさかのぼり、それが自然に繋がっていくという感じ。一昔前までマツダが好んでいたような、初期応答を高めることで俊敏さを追求するスタイルではなく、そうした適度な「ため」があったほうが、より一体感が高まることを筆者も経験的に感じていたが、今回試乗した車両は、まさにそのような仕上がりになっている。

 また、路面からのインフォメーションが全体的に増しているので、クルマの動きが把握しやすく、修正舵を要する状況が起こりにくくなる。今回はタイヤの銘柄も異なる16インチ仕様と18インチ仕様をドライブしたのだが、マッチングは16インチのほうがだいぶよかった。

 絶対的なコーナリング性能よりも、いわば人間味のある走りを追求している印象で、限界付近のシビアな挙動をただ抑え込むのではなく、それをドライバーにわかりやすく伝えながら、コントロールできる余地を十分に残している。ドライバーにとっては、「乗せられている」のではなく、常に自らが積極的に操って「走らせている」感覚を与えてくれる。だから運転していて楽しいのだ。

2.0リッター車に装着される215/45 R18タイヤ
1.5リッター車に装着される205/60 R16タイヤ

 また、今回はシートについても「人とクルマが心まで通じ合うための重要なインターフェース」と位置づけて大いに注力したという。実際、それほど極端な形状をしていないのに、座るととても包まれ感がある。強めにGがかかる運転を試しても、身体がぶれる感じが小さく済んで好印象だ。振動絶縁性にも力を入れたとのことで、快適な乗り心地と運転する楽しさには、このシートが少なからず寄与していることに違いない。

 現行モデルとそれほどかけ離れた価格にならないことを前提として、このクラスでこれほどバリューの高いクルマなどちょっとほかに思い当たらない。アクセラのような身近なクルマに乗って、これほど心打たれた記憶もない。いったいマツダに何が起こっているのか? 発売を前に、すでに大きなインパクトを与えた今回のプロトタイプ試乗。まもなく訪れる、この感覚を多くの人と共有できるアクセラ発売の日を楽しみに待ちたい。

【お詫びと訂正】記事初出時、2.0リッターガソリンのMT車の設定はない予定としておりましたが、正しくは導入遅れとなります。来春導入の予定となっています。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛