インプレッション

ランボルギーニ「ウラカン LP 580-2」(ドーハ試乗会)

4WDモデルに対して470万円も安い!?

 登場以来、ランボルギーニ史上ダントツに売れた「ガヤルド」をも圧倒的に上まわる勢いの売れ行きを見せているという「ウラカン」。そこに2015年11月、より刺激的なドライビングエクスペリエンスをもたらす後輪駆動の2WDモデル「ウラカン LP 580-2」が加わった。そしてデリバリーに先駆け、実車に触れる機会に恵まれた。

 試乗の舞台はなんとカタールの首都・ドーハ。オートバイの最高峰レース「MotoGP」のカタールグランプリも開催されている「ロサイル・インターナショナル・サーキット」で行なわれた国際試乗会だ。筆者にとっても初の中東遠征。イベントのタイトルもズバリ「DRIVER'S HIGH」と聞けば、ますます期待せずにはいられない。

 すでに4WDモデルには何度か触れる機会があり、これまでの一連のランボルギーニ車に見受けられた荒々しさとは異質の、洗練された走りが印象的だった。パフォーマンスはすこぶる高いながら快適性も確保されており、誰でも気軽に乗れてそのよさを味わえるスーパーカーへと進化を遂げていた。そのあたりが好調な販売につながっていることは想像に難くない。

 そこに加わった2WDモデルがLP 580-2。前身のガヤルドでは2WDモデルは特殊な位置付けという印象が強かったのに対し、ウラカンは当初から2WDのラインアップも想定して開発されたせいか、比較的早く設定されたようだ。

 4WDモデルと2WDモデルの違いでまず気がつくのは、フロントマスクの雰囲気が違うこと。2WDのほうがフロントバンパーの開口部が大きく、アグレッシブな印象を受ける。むろんこれは単なる見た目の差別化ではなく、2WD化に合わせた機能を与えたことによる。

ウラカン LP 580-2

 前輪を駆動させる機構のない2WDモデルでは前軸荷重が小さくなる。これに対し、新設計の巨大なフロントエアインテークはより多くの走行風を取り入れることで、フロントアクスルを空気の力で押さえつける。デザイナーとランボルギーニの空力専門家が緊密に連携を図って設計したものだ。

 リアもバンパーまわりのデザインが若干変わっている。また、より高いステアリングの正確性を追求した2WD専用設計となるOEMタイヤが装着されている。

拡大したフロントバンパー開口部から4WDモデルより多くの走行風を取り入れ、空気の力でフロントアクスルを押さえつける
日本仕様のタイヤサイズはフロントが245/35 R19、リアが305/35 R19となっているが、試乗車にはLP610-4などにも採用されているサイズの大きいZRタイヤが装着されていた

 エンジンスペックとしては、5.2リッターの排気量は同じだが、4WDモデルのLP610-4では最高出力610HP/8250rpm、最大トルク560Nm/6500rpmのところ、LP 580-2では最高出力580HP/8000rpm、最大トルク540Nm/6500rpmとなる。最高出力の発生回転数が若干低くなっているし、1000rpmで最大トルクの75%を発生するという。これは2WD化に合わせて、よりコントロール性重視の扱いやすい出力特性を与えたということだろう。

 車両重量については、乾燥重量で4WDの1422kgに対して33kg軽い1389sとなり、パワーウエイトレシオは4WDモデルよりも若干低い2.39kg/HPとなる。

V型10気筒の5.2リッター自然吸気エンジンをリアミッドにレイアウト。最高出力427kW(580HP)/8000rpm、最大トルク540Nm/6500rpmを発生。潤滑システムはドライサンプ式

 気になる価格は2280万円(税別)と、4WDモデルに対して実に470万円も安い。これはポルシェ「911」をはじめとするコンペティターに対して張り合うため、戦略的な意味もあっての設定だろうが、4WDモデルが2750万円(税別)に達していることを考えると、むろんどちらも高価には違いないが、内容を考えるとかなり割安感がある。

大排気量自然吸気エンジンならではの味わい

 新しくて広々としたコースのピットレーンにズラリと並べられたウラカンを目の前にして、まさしく胸躍る思い。そしてシートに収まっていざコースイン! ひさびさに触れたウラカンのパフォーマンスに、まずは感心しきりである。

 カーボンとアルミニウム素材を統合したハイブリッドシャシーは極めて高い剛性感を持ち、磁性流体を用いた先進的なダンパーがしなやかにタイヤを路面に追従させる。そして2WDモデルのほうが、実際の車両重量差よりもずっと軽く感じられるというのが第一印象だ。

 4WDモデルでも軽やかなステアリングフィールはガヤルドからの大きな進化点だと感じていたが、前後重量配分が43:57から40:60となり、フロントアクスルの慣性が低減した影響があるのか、より軽快に感じられた。

 相変わらずどこから踏んでもついてくる俊敏なレスポンスと痛快な吹け上がりが身上の5.2リッターV型10気筒エンジンは、このカテゴリーにおいても昨今は過給機付きエンジンを積むモデルが増えつつある中で、大排気量の自然吸気エンジンならではのドラビングプレジャーを味わわせてくれる。ランボルギーニらしい猛々しく轟くエキゾーストサウンドもたまらない。また、7速DCTの「ランボルギーニ・ドッピア・フリッツィオーネ(LDF)」が組み合わされることで電光石火のシフトチェンジを実現しているのもウラカンの美点である。

岡本幸一郎氏によるウラカン LP 580-2の試乗シーン(6分15秒)

後輪駆動ならではのハンドリング

 そして後輪駆動ならではのハンドリングこそ、このクルマの真骨頂だ。イタリア語で「魂」を意味する「ANIMA(アニマ)」と名付けられたドライビングモードも、4WDモデルに対してよりドライビングプレジャーが実感できるよう補正されている。推奨とされた「SPORT(スポーツ)」はエモーショナルな走りを楽しめるよう若干オーバーステアに味付けされており、その走りはまさしく「DRIVER'S HIGH」であった。

 コーナー立ち上がりでアクセルを踏み込むと、ありあまるパワーによりリアタイヤが簡単にスライドし始める。ただし流れ方は穏やかで、唐突に挙動が乱れることはない。スライドしている最中のコントロール性にも優れるので、ドリフト状態を維持しやすい。少しウデに覚えのある人なら誰でも簡単に、かつ安全にドリフト走行が楽しめる味付けだ。

 この日はESC(横滑り防止装置)をOFFにしないよう指示されていたのでもちろん従ったのだが、ESCをOFFにすればもっと深いアングルで飛距離の長いドリフト走行を楽しむことができるはずだ。僭越ながら、この味付けは敢えて後輪駆動の2WDモデルを選ぶドライバーがなにを求めているのかを本当によく理解していると感じた次第である。

 さらに試乗中にアニマを設定変更して、トラクション志向でアンダーステア気味となる「STRADA(ストラーダ)」、ニュートラルなステアリング特性となりレーストラックで最大パフォーマンスを発揮する「CORSA(コルサ)」の各モードも試したが、4WDモデルよりもそれぞれのキャラクターの違いがハッキリ分かるように感じられた。

ウラカン LP 580-2のインテリア。ステアリングの下側スポークに、「ANIMA(アニマ)」の3つのモードを切り替えるスイッチを備える
特徴的なデザインのスイッチ類をレイアウトしたセンターコンソール。エンジンのスタータースイッチには赤く塗装したカバーを用意。誤操作を防ぐとともに、カバーを開ける手順を儀式的に演出している

 ランボルギーニとしてはあくまで4WDモデルをメインに据えているので、こうして2WDモデルを少し遅れて登場させたと説明しているが、むしろこちらがメインでもいいのではないかと思うほど完成度も高く、本当にドライビングプレジャーに満ちていた。もちろん4WDには4WDのよさがあるわけだが、筆者がどちらかを選ぶなら、仮に4WDモデルを買える予算があったとしても、こちらを選んでしまいそうだ。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。