インプレッション

ランボルギーニ「ウラカン LP 610-4」(公道試乗)

低速で流してもワクワクするウラカン

 果たして市街地でのスーパーカーは無用の長物か? そんな素朴な疑問を解決するため、ランボルギーニ「ウラカン LP 610-4」の2015年モデルに神奈川県・湘南地区にある大磯町で試乗した。

 最初に結論! 車両本体価格の2970万円と筆者の経済状況からはとうてい支払いができる額面ではない(用立てすら不可能だ)が、その存在価値は十分にあると実感。もっとも、一般道を中心とした試乗であるからV型10気筒DOHC 5.2リッターエンジンが発する610PS/560Nmのうち、3分の1すら堪能できなかったものの、みっちりと力が詰まったパワーユニットは、たとえ40〜50km/hで流していてもワクワクさせてくれるものがあった……。

 現ランボルギーニファミリーのなかで最小のボディサイズとなるウラカン。前身はご存知「ガヤルド」だ。ガヤルドのエクステリアデザインは直線を基調としたデジタルチックなものであったが、ウラカンでは抑揚あるボディラインに生まれ変わった。同時にインテリアも兄貴分である「アヴェンタドール」のデザインテイストを受け継ぎながら、ウラカンのイメージどおりコンパクトにまとめられている。

今回撮影したのは「ウラカン LP 610-4」の2015年モデル。ボディサイズは4459×1924×1165mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2620mm。乾燥重量は1422kg。車両本体価格は2970万円で、撮影車は約390万円のオプションを装着
足下はチタンマットカラーの20インチホイールにピレリ「P ZERO」の組み合わせ。ブレーキシステムにはオレンジに塗装されたフロント6ピストン、リア4ピストンのアルミニウム製モノブロックキャリパーとカーボンセラミックディスクを採用する
オプションのスポーツエグゾースト・システムを装備
こちらは兄貴分の「アヴェンタドール」

 お膳立ても兄貴分を踏襲するウラカンは、ステアリング下部に配置されたドライブモードスイッチによって市街地向けの「ストラーダ」、その名のとおりスポーツ走行に適した「スポーツ」、サーキット向けの「コルサ」の3つの走行モードを選ぶことができる。エンジン出力特性や足まわりのセッティング(ダンパーの減衰特性変更)などをこのドライブモードスイッチで変更できるが、それと同時に7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の変速プログラムもモードに応じて切り替える。

 この7速DCTには自動的にシフトアップ&ダウンするオートモード(いわゆるDレンジ)がつくが、これがなかなか秀逸で、ドライブモードをストラーダにしておけば街中での発進停止を繰り返すような走行状況でもギクシャクすることがない。とはいえ、高出力エンジンを搭載したスーパーカーであることからアクセルワークには丁寧さが常に求められるが、そのツボさえ押さえておけばドライバーのみならず、同乗者からも文句は出ないハズ。また、丁寧なアクセルワークを受け付けることから、雨天など滑りやすい路面でもさほど気を使わずに済むし、高過給圧でドーピングしたターボエンジンではなく、大排気量の自然吸気エンジンという点も低回転域でのドライバビリティを向上させている。

レザーとアルカンターラを組み合わせたインテリア。スウェードを使うステアリング下部に配置されたドライブモードスイッチにより3つの走行モードを選択可能
メーターの表示例

 ちなみにDCTを搭載するスポーツモデルといえば、国産メーカーでは日産自動車「GT-R」、かつては三菱自動車工業「ランエボX」が挙げられ(ともにギヤ段は6速)、最近では国内デビューを控える本田技研工業の新型「NSX」も1/3/5/7速側シャフトに駆動モーターを内蔵した7速DCTを搭載する。このうち、2014年モデル以降のGT-Rは変速時のタイムラグやシフトショックをほぼ感じられなくなり、ラフなアクセルワークでもギクシャクすることがなくなっているが、ウラカンのそれは最新のGT-Rのレベルに肩を並べるほどに躾られていて、ここにも正直驚いた。

 一方で、ガツンガツンとした変速ショックを伴なうアグレッシブな変速プログラムが欲しければコルサモードに変更し、パドルシフトを駆使すれば状況は一変。このコルサモードでは可変式の排気デバイスモードも同時に変更され、一層V10エンジンの咆哮を堪能できるようになるのでスポーツ走行時の高揚感は格段にアップする。

V型10気筒DOHC 5.2リッターエンジンは最高出力449kW(610PS)/8250rpm、最大トルク560Nm/6500rpmを発生

 パワーユニットであるV10エンジンには気筒休止機構が用いられており、一定速度で高出力を必要としない状況では自動的に10気筒のうち半分の5気筒を停止させることが可能。このシステムのマナーもよく、復帰にはアクセルを踏み込むだけでとくに操作がいらないばかりか、よっぽど神経質になっていなければ10→5→10気筒への切り替えを体感できないほどだ。V型10気筒4.8リッターを搭載しているレクサス(トヨタ自動車)「LFA」にも気筒休止機構がついているが、こちらはアイドリング時に片側5気筒を休止させるもの。このモードに入ると振動特性が変わることから微振動が増えるため、気筒休止モードに入ったことはすぐに体感できる。

 駆動方式は「電子制御式4WDシステム」とだけしか日本向けには公式発表はないが、前:後輪の駆動力配分は30:70が基本だ。この駆動力配分は運転状況に加えてドライブモードにも割り当てがあり、モードによって配分も変更される。μの低い路面でどんな回頭性を見せるのか興味津々だが、ドライ路面でも安全に速く走るためには4WDは欠かせない。昨今のハイパワースポーツモデルのほとんどが4WDモデルを用意している点はここにある。

路面からの強い衝撃などを一発で減衰させる気持ちよさ

ロールス・ロイス「ファントム」

 最後に肝心の乗り心地などの使い勝手だが、「ストラーダモードを使用する」という条件をつければ、市街地でも十分イケることが判明! 低速域でもしっかりと動くダンパーに、ハイブリッドアルミニウム/カーボンファイバーの複合フレームが織りなす減衰特性は、たとえばロールス・ロイス「ファントム」の重厚さとは180度違ったガチッとしたもの。しかし一世代前、具体的には5〜6年前に“スーパーカー”と評されていたモデルとはまるで違い、路面からの強い衝撃などを一発で減衰させる気持ちよさがある。これは単に「ボディ剛性の高さからくる強靱さで立ち向かう」というよりも、「一気に受け止めて、一発でいなす」という柔軟性を伴った感覚に近い。

 さらにサイドサポート性能に優れるドライビングシートは、その形状だけでなく減衰特性も優れていて、平均的な日本の成人男性の体重(筆者は68kg)であってもしっかりとその恩恵を受けられた。加えてこのシート(主に座面)は、雑味と評されるザラザラとしたアスファルトからの微振動もほどよく吸収してくれるため、一層上質な運転環境をもたらしてくれる。

 HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)にしてもよく考えられていて、アヴェンタドールでも採用されるステアリング内蔵型のウインカースイッチは、ステアリングから手を放す時間が明らかに減少することから安全性が高まるし、絶望的に思える後方視界もメーター内のTFT液晶に映し出されるバックカメラの映像によってネガティブな印象はかなり薄らぐ。

 実際、試乗会のベース基地となっていた大磯プリンスホテルの駐車場(駐車スペースが狭いことで有名)で、撮影のために10回以上車庫入れを繰り返したのだが、バックカメラの効果に加えて比較的コンパクトなボディサイズ(全幅は1924mmだが、全長は4459mmとプリウスより短い)であるため苦にならなかった。これにはドライビングポジションからの死角が思いのほか少ないことも好影響をもたらしているようだ。

 現実離れした試乗だったが、スーパースポーツカーとは縁のない生活を送っている筆者にとって、この体験は得がたいものとなった。

西村直人:NAC

1972年東京生まれ。交通コメンテーター。得意分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためWRカーやF1、さらには2輪界のF1であるMotoGPマシンの試乗をこなしつつ、4&2輪の草レースにも参戦。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)理事、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員

Photo:安田 剛