日下部保雄の悠悠閑閑

スタッドレスタイヤのシーズン

北国から雪の便りが聞こえてきた

 今年の冬(つまり2019年の12月頃から2020年の3月頃のことだが)は例年になく暖かった。そのおかげで雪が降らず、残念ながら各地の雪まつりも縮小か中止になってしまったのは記憶に新しい。わがことでいえば毎年恒例の氷上イベント、長野県で開催する女神湖ドライビングパークもあろうことか湖が凍結せずに開催できなくなってしまった。自分が知る限り女神湖が完全に凍結しなかったのは初めてのことだと思う。

 来年の女神湖は早々に開催する方向で決めていたけど、やはりこの先の気温が心配。季節予報を気にしていたがどうやら今年の冬は寒いらしい。女神湖にもしっかり氷が張るといいなぁ、と思っていたところに北国から雪の便りが聞こえてきた。

 そうなるとクルマもスタッドレスタイヤに履き替える時期になる。仕事柄、初冬にも路面凍結が起こる地域にも行くことが多いので、臆病な自分は早めにスタッドレスタイヤの準備をするのが毎年のならわしだ。

スノードライブは楽しい。雪が降ると意味もなく出かけていたモンです

 一昨年から使っているスタッドレスタイヤを引っ張り出すが、スタッドレスタイヤは適正な保管方法を取っていれば性能がそれほど落ちない。摩耗も履いている期間が短いのと降雪地帯を走ることが多いので普通の使い方をしていれば極端に磨耗が進行することはない。

 保管は直射日光を浴びない冷暗所に立てておいておければベストだが、タイヤの天敵、紫外線を避ける便利なタイヤカバーもあるのでそれを掛けるだけでも随分違う。

 ゴムは生ものとはよく言ったもので、コンパウンドの貢献比率の高いスタッドレスタイヤでは、紫外線で物性が変わってしまうと本来の性能が発揮できなくなる。これまでは、去年はグリップしていたのに今年はあれあれ……ということはよくあった話だ。最新のスタッドレスタイヤは紫外線による物性の変化に強くなっており、長持ちするようになったものの、やはり保管には気を付けたい。

3シーズン目を迎えたスタッドレスタイヤ、実力は全く変わらないが、サイプに走ってきた道の記憶が残る
ショルダーのアップ。エッジが削れているのが分かる。偏磨耗の状態でどこに履いたタイヤか見当がつくでしょうか?

 その昔のスパイクタイヤの時代、紫外線の降り注ぐところに保管してあった2シーズン目のタイヤを履いて、ルンルンと雪の中走りに行ったが、完全に昨シーズンと感触が違う。納得のいかないまま走り続けて、なんと直線で半分コースアウトしてしまった。その後は借りてきたネコ状態でシズシズと帰ってきたことは言うまでもない。たいして磨耗しているわけでなく、スパイクのホールドも悪化していなかったので、残りがゴム。保管状態に問題があったと思いついたのはもう少し時間がたってことだった。

 スタッドレスタイヤにはサイプと呼ばれる細い溝があり、これで氷を掻いたり、水はけにも使う。シーズンが終わる頃にはこのサイプが偏磨耗して少し開いてくる。冬の札幌でもドライ路面を走るのは80%以上と言われているので、乾いた高速道路などの走行で少しずつダメージを受けてくる。サイプが開くとタイヤにもよるが高周波のパターンノイズが出ることもあってそれとなく分かる。コーナーでの踏ん張りは弱くなってくる傾向にあるので、あまり磨耗しているようなら注意したい。

スタッドレスタイヤなら圧雪路面は走りやすく快適だ

 どのくらい耐久性があるかはメーカーによっても違うし、走行距離や走り方などもあるので一概に言えないが、普通の使い方なら4シーズンぐらいではなかろうか。例えば横浜ゴムの主力商品、「iceGUARD 6」ではコンパウンドの劣化は小さく、4年後も氷上制動は新品時から少し落ちる程度だとしている。

 おおよそスタッドレスタイヤのモデルライフは4~5年なので、新製品を購入したら次のモデルが発表される時期にあたることになる。

 安価な海外製スタッドレスタイヤも販売されているが、各メーカーで氷上性能や経年劣化、ノイズなど差がある。スタッドレスタイヤとしての基準は明確ではないので、氷上性能はそれほどでも、というのもあるので慎重に選んでほしい。長い付き合いになるのだから。

 国内のタイヤメーカーも最新の技術を駆使した上級スタッドレスタイヤ以外に、材料や工法などを工夫してそれに合ったパターンを開発した廉価ゾーン、また型落ちモデルなどもラインアップされているので、コストや使い方に応じて選ぶこともできる。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。