まるも亜希子の「寄り道日和」

大成功だった、初代ロードスターのおもてなし

イタリア人の現行ロードスターオーナーが、先祖(初代ロードスター)を初ドライブ! ⼀緒に⾛っていたミニバンの助⼿席から⾒たら、遠⽬からでも楽しそうな2⼈で私たちまで興奮してしまいました。LORENZOは、シフト操作などもすごく的確で、本当に⾃分の⼿⾜のような感覚で運転できることに驚き、とても褒めていました

 イタリアはフィレンツェに住む大好きなカップルが、久しぶりに日本にやってきました。私の高校時代からの大切な親友・IZUMIと、生粋のイタリア人であるLORENZO。彼はとてもクルマが好きで、ドライブもさすがの腕前で、うちの夫ともよくIZUMIの通訳を介してクルマ談義で盛り上がっているんです。

 そんな2人はずっと愛車選びで迷っていました。本命はマツダ「ロードスター」(現地名・MX-5)だけど、価格も日本で買うよりずっと高額だし、フィレンツェの中心部ではオープンカーを駐車しておくとイタズラされたり、維持に気を使うことも懸念材料。あまりクルマに詳しくないIZUMIは、「2人しか乗れないし荷物もほとんど積めないクルマなんて」と現実的な弱点を指摘(笑)。なので、一時は実用的で走りの楽しいクルマを検討していたんですが、LORENZOがクルマ関係の仕事なので普段の足には困らないこともあり、ついに「やっぱり、本当に欲しいと思うクルマを買うのがいちばん」と決断! 一昨年に、広島から3か月かけて海を渡ってきたMX-5を購入して、今ではとても充実したオープンカーライフを送っています。IZUMIいわく、「めちゃめちゃ大切にしていて、私には絶対に運転させてくれない」とか(笑)。

 でも嬉しいですよね、イタリア人のLORENZOがそれほど日本のオープンカーを気に入って楽しんでくれるなんて! 私は以前、質問したことがあるんですが、イタリア人ならアバルト「124スパイダー」という選択肢もあると思うけど、なぜMX-5を選んでくれたのかと。そうしたら、「まず、デザインがMX-5の方が好きだし、スペックとしても車重が軽いなどオープンスポーツカーとして理想的だと思ったから」だと答えてくれました。いや~、ますます嬉しいじゃないですか!

 そして今回の来日で、2人は念願の広島へ。何より楽しみにしていたのがマツダの工場見学だったのですが、「素晴らしい体験だったし、勉強になった」と言ってくれました。1つだけ、最後に立ち寄るショップで、お会計にクレジットカードが使えなかったそうなんですが、マツダの皆さま、こうした旅行者のためにもカード決済をご検討いただけないでしょうか? まぁ本人たちは「おかげで散財しなくて済んだ」と胸を撫で下ろしていましたが(笑)。

 そうして東京へ移動してきた2人と新宿駅で待ち合わせた私たちは、サプライズを用意していました。LORENZOに、夫が2018年に購入した初代ロードスターでのドライブをプレゼントして、MX-5の先祖を味わってもらえたらと思ったのです。

 実はこの2週間前にわが家の初代ロードスターはオイル漏れが発覚して、修理しようにも部品が見つからず不動状態になっていたのですが、夫がなんとか部品屋さんを探し当て、徹夜で修理して乗れるようにしてくれました。よかった~。

イタリアはフィレンツェに暮らし、現行「ロードスター(現地名:MX-5)」を愛車とするLORENZO&IZUMIカップルと、日本で久しぶりに再会。私たちからのプレゼントは、わが家の初代ロードスターでのドライブです。これは代々木PAで乗り換え、いよいよ出発するところでパチリ。似合いますよね~

 初代ロードスターをひと目見て、LORENZOは大喜び! 現行モデルより少しタイトな運転席におさまると、似合いますね~。見慣れた初代ロードスターがちょっとグレードアップしたように見えるのは、なぜでしょう。外国映画のワンシーンにありそうな感じだからでしょうか? もうそれだけで、すでに夫も私も嬉しくなってしまったのですが、走り始めたらどうなるかなぁと、ちょっとドキドキ。LORENZOはとても丁寧に運転してくれるし、IZUMIの実家のクルマで日本でのドライブにも慣れているので、そのあたりの不安はまったくないのですが、なんというか、日本の郷土料理をふるまって美味しいと言ってもらえるかどうか、ドキドキして待っているような、そんな気持ち。

 すると、Bluetoothで繋ぎっぱなしにしている電話から、「最高~!」とテンション高い声が聞こえてきて、よっしゃ~! 私たちもついつい笑顔になっちゃいました。3車線の区間で横に並んでみると、IZUMIもLORENZOもとっても楽しそう~。初代ロードスターは現行MX-5より非力だし、ボディ剛性なんかも年式相応だし、人によっては物足りなさを感じるところなのですが、時代とともに増えてしまった“余計なもの”が付いていないシンプルさ、軽さ、ピュアなスポーツ魂といったものは、やっぱり初代ロードスターならではの魅力。LORENZOはちゃんとそこに気づいてくれたんじゃないかな、と感じました。

 横浜に到着して、みんなで食事をした時にあらためて感想を聞いてみると、「血が湧き踊る感じだった」と。もう、まさに! 初代ロードスターは、古くてもガタがきてても、なぜかそんな興奮をくれるクルマなんですよね。ちょうど2019年はロードスター30周年にあたりますが、大きさやパワートレーンや装備は変わっても、そんな初代からの思いは紡がれていると思います。きっとLORENZOはイタリアに帰って愛車に乗ったら、それをより深く感じてくれるはず。そしてもっともっとMX-5を好きになってくれたら、日本人として、クルマ好きとして、こんなに嬉しいことはないですよね。

 別れ際にLORENZOは、「今度はAKIKOとYOHEIがイタリアに来て、一緒にMX-5でドライブしよう!」と言ってくれました。その瞬間に私の頭には、美しいトスカーナの風景の中をロードスターで走る妄想が浮かんで、さぞや素晴らしい体験になるだろうとニヤニヤ。「イタリアの大地を日本のオープンスポーツカーで走る」という、大きな夢が生まれました。娘がフィレンツェまでの長いフライトに耐えられるようになったら、絶対に実現させたいなぁ~。

 そんなわけで、現行ロードスターを愛するイタリア人にその先祖を味わってもらうサプライズは、大成功でした!

日本とイタリア、国は違えどクルマ愛は同じな2人。IZUMIに通訳してもらいながら、いろんな話で盛り上がっていました。そういえば前回LORENZOが来日した時は、東京バーチャルサーキットに行って遊んだんでした。次は夫がイタリアへ行って、LORENZOのMX-5でドライブする番。クルマ好きは軽々と国境を越えますね

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。