まるも亜希子の「寄り道日和」

ホンダの新型「レジェンド」でレベル3自動運転を体験しました

レベル3自動運転の渋滞運転機能「トラフィックジャムパイロット」などを実現し世界初の技術を手にした「Honda SENSING Elite」を搭載した、改良新型のホンダ「レジェンド」。ど~んと爆発的に売るのかと思いきや、限定100台のリース専用販売で、価格は1100万円。ホンダとしては、このレジェンドはあくまで第一歩としての通過点で、はやくほかの量産モデルに広げることが目的とのこと。今後も大注目です!

 アイサイトXが搭載された新型「レヴォーグ」が納車されて5か月が経過しまして、今や高速道路での渋滞が以前ほど苦痛ではなくなっている自分に気がつきます。

 約50km/h以下ならハンズオフでの走行ができるので、先日も東名高速道路で27kmの渋滞に遭遇してしまったのですが、すぐさまアイサイトXを作動させて、手はだら~んと自由に。これが日常となってから、「ステアリングを握っていた腕って、こんなに疲労の原因となっていたんだ!」ということを思い知った感じです。

 たまに、ものすごく西日が強い時など、高速道路で渋滞という条件に合致していても、「ステアリングを操作してください」という警告が出て、ハンズオフができないこともあるんですが、私の感覚では9割くらいは作動してくれています。

 で、ハンズオフの状況となると、確かに手をステアリングから離していられるというのはラク。ものすごくラク。にもかかわらず、手持ち無沙汰とはまさにこのことで、途端に「ヒマだなー」と思ってしまうのです。せっかく手が自由なので、何かこの状況を安全に、有意義に使うことができないのかなと、今のところは第三の心臓とも呼ばれている手の平のツボを押したりして、ひたすら疲労回復、血の巡りをよくすることに使っております(笑)。みなさん、何かいいアイデアがあったら教えてください。

レベル3の型式指定を取得したクルマにしか与えられないステッカーが、こちら。初めて見ますよね~。これから少しずつ、増えていくのでしょうか

 そしてその日はやってきました。世界で初めて、自動運転「レベル3」を実現した「Honda SENSING Elite」を搭載した新型「レジェンド」に試乗できる日です!

 とくに注目なのは、やはり50km/h以下(30km/h以下の渋滞時に起動)で作動するレベル3自動運転の渋滞運転機能「トラフィックジャムパイロット」なんですが、最初にリリースを読んだ時点では、うちのコ(レヴォーグ)とどこがどれほど違うのか、よく理解できていませんでした。だって、すごく難しい説明なんですもの。「レベル2」と「レベル3」の大きな違いは、責任の主体がドライバーにあるか、クルマにあるかである。と、言われましても? なんかあまりピンときていなかったわけです。

 有明ICから首都高速にのり、その時に渋滞が発生していた6号線を目指します。渋滞にハマるまでの間には、従来のHonda SENSINGから一歩進んだ、ハンズオフ機能付き車線内運転支援機能を体験。これまでよりも、追従のすべての動作がなめらかだし、ステアリング制御も安定感があって、後席に座っていた人からは「なんていいクルマなんだ! 心地よくて寝ちゃいそうです」と感嘆の声が上がってほど。

 そして、ハンズオフしたままできる車線変更も、運よく条件が揃って体験できました。これには2つの機能があって、1つはウインカーを半押しくらいで長押しすることで、安全だと判断した段階で車線変更してくれる機能。これはもう、自分で安全確認をすればいいだけですから、お茶の子さいさいですよね。日産自動車の「スカイライン」でも体験させてもらってました。

 でももう1つの機能、「高度車線変更支援機能」は、ステアリングの右下にあるスイッチを押しておくだけで、前のクルマが遅かったりした場合に、クルマが安全だという状態を判断して車線変更し、追い越してまた走行車線に戻ってくれる、という信じられない機能! 前のトラックが遅く、追い越し車線にスペースができたタイミングをレジェンドは見逃さなかった! 実に鮮やかに車線変更をし、トラックを追い越したら十分な車間距離マージンを取ったところで、再び車線変更して走行車線に戻ってみせたのです。しかも、合流地点などリスクが高い区間は、スペースが空いていても車線変更に踏み切らないなど、「しっかり見てるな~、的確な判断をしてるな~」と感心してしまいました。しかし、ここまでの話はレベル2の世界、責任の主体はドライバー側にあります。

 さて、ようやくここから先がレベル3の世界。4kmほどのノロノロ渋滞に突入し、渋滞を検知して「トラフィックジャムパイロット」が作動したという案内が出ました。助手席に同乗してくださったホンダの開発者が「もう大丈夫です」と言いつつ、DVDを流してくれます。「いいんですか? ほんとにいいんですね?」と疑り深くなりながら、恐る恐る前方を見ることをやめ、センターコンソールに流れ始めたDVD画面を注視してみたら……。

 す、すごい! なにごとも起こりません! 新型レジェンドは前のクルマとつかず離れず、順調にノロノロ渋滞をこなしてくれています。手を離すハンズオフ、だけでなく初めて「アイズオフ」を体験した瞬間、なんてこった~~。こりゃ、レヴォーグの10倍くらいラクではないですか~~。手も足も目線さえもフリーとなり、運転はすべてクルマに任せて走れる日が生きているうちにくるなんて! 最初のうちは、信用しきれずにチラッ、チラッと前を見てしまっていたんですが、数分もすると安心しきって、画面に流れる映像に癒されていた私でした。

 でももちろん、まだまだアイズオフにも制限はあるんです。私は、自動運転が実現していちばんしたいことは、とにかく「睡眠をとること」なんですが、今はまだそれはNG。目を閉じたり、本などを読んで顔が隠れてしまうことや、ノートパソコンで仕事をすることもダメ。いつクルマが「運転を代わってくれ」となった時でも、すぐに運転に復帰できる状態でいること、というのが作動条件だからです。スマホ操作は、法律的にはOKになったそうですが、ホンダとしては推奨しないということでした。

 そのほか、1時間30分の短い試乗時間では、検証できなかった部分もあるとは思います。実際にユーザーとして日常で使ってみたら、不満も出てくるのかもしれません。でも、初めて体験したレベル3は、想像していたよりもずっと、「楽しい」「心地いい」ものでした。

 例えば家族でレジャーに出かけて、帰り道にひどい渋滞にはまって、家族みんなは後席で眠ってしまった時って、すごい辛いんですよね。なんども経験ありますが(笑)。でもそんな時にトラフィックジャムパイロットが作動してくれたら、見たかった映画のDVDとかを流して、ドライバーもちょっとリフレッシュできるし、渋滞の時間も短く感じるかもしれない。これまではドライバーだけ一緒に見られなかったDVDも、家族みんなで見ることができるって、まぁ渋滞の間だけではあるけど、疎外感がちょっと薄れるんじゃないでしょうか。

 というわけで、初体験の「アイズオフ」は、とんでもない驚きと、未来への大きな期待をくれた体験となりました。

あまりにデザインに馴染んでいるため、そんなにセンサーがたくさんついているようには思えなかったのですが、このフロントバンパー左右をはじめ、ライダーセンサーが5台、ミリ波レーダーセンサーが5台、フロントセンサーカメラが2台、計12台が360°を見守っています
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Zなど。 現在は新型のスバル・レヴォーグとメルセデス・ベンツVクラス。