まるも亜希子の「寄り道日和」
まもなく誕生50周年!「シビック」の思い出
2021年9月9日 00:00
2022年で50周年を迎えるホンダ・シビック。いよいよ11代目が登場しましたよね。7代目のシビックが登場した2000年に生まれた人も、すでに免許を取得できる20代に入っているので、若い世代から熟年世代まで、どの世代にもそれぞれ思い出深いシビックってあると思うんです。
私の場合は、まさにその7代目シビックは生涯忘れられないモデル。ハイブリッド仕様が登場した初めてのシビックで、本田技術研究所(現ものづくりセンター)の若手エンジニアたちの有志チームがコツコツと作り上げた、おそらく世界に1台しかないレース仕様車で、2004年に初めてJAF公認レースに出場させてもらったという、これぞプライスレスな体験を共にしたシビックなのです。
日本仕様のシビックハイブリッドにはMTモデルがなかったので、ベースとなったのは英国仕様。右ハンドルのMTモデルでした。レースには不利となる、バッテリーという重量物を抱え、夏のレースではそのバッテリーが高温になってダウンしてしまったり、当時はモーターアシストがサーキットの1~2コーナーで早くもカラになってしまったりと、難題が山積みの船出。予選タイムなんて、同クラスのマシンより40秒くらい遅くてまったく勝負にならなかったのを覚えています。
でも、シビックハイブリッドという未来のクルマが初めて耐久レースに参戦するということで、その将来性とチャレンジ精神に理解を示してくださったのが、モータースポーツ界のレジェンド、高橋国光さん。現役引退後、初めて国さんがステアリングを握るとあってメディアは大注目だったのですが、マシンはスタートして全車に抜かれるという亀さんぶり。ファンはガッカリだったかもしれないですね。
それでも国さんは、「今は抜かれる面白さだね」と瞳をキラキラさせて、レースを楽しんでいたのが印象的でした。若手エンジニアたちはすっかり国さんの大ファンになって、「いつか絶対、ガソリン車をぶち抜くハイブリッドマシンを作ります!」と熱く握手をしていたのも感動的でした。しかも私はそんな貴重なマシンをクラッシュさせてしまって、亀さん走行でコツコツと順位を上げてくれた国さんたちの努力を水の泡に……。もうその場から消えてしまいたいほど申し訳なくて、悔しくてショックで、レースなんて二度とやるまいと涙したほどだったのですが、チームメイトは誰ひとり、そんな私を責めたり叱ったりしませんでした。
そのかわり、「お前がもっと運転を練習して、チームに迷惑をかけない走りができるようになることが、今日のみんなへのお詫びになるんだよ」と、レースを辞めることは許してくれなかったんですね。サーキットを走るのが怖くなってしまって、1年くらいまともにタイムも出せなかったのですが、それでも、みんなに会わせる顔がないと思うとただひたすら練習するしかなく、そのおかげで今があるのだと本当に感謝しています。
そんな、ほろ苦い思い出が詰まったシビック。その後、8代目と9代目のシビックハイブリッドでもレース参戦させてもらって、エンジニアたちの飽くなき向上心とアイディア、Honda特有の「やらまいか精神」は着実にマシンを速く面白くしていきました。富士スピードウェイの耐久レースでは、ハイブリッドカークラスでは優勝するまでになったんですよ。
そして今回、11代目のシビックプロトタイプに専用コースで試乗してみて、もう別人かと思うほど上質で優雅になったことにまずビックリ。流麗なクーペのようなルーフラインなど、デザインは今まででいちばん好きかもしれないと、ドキドキしちゃいました。まだガソリンモデルだけでしたが、走ってみると清々しくてちょっとヤンチャな顔も持っている、シビックらしさが溢れんばかり。とくにMTモデルはタイプRじゃないのにガンガン攻めたくなってしまったほどでした。遅れてハイブリッドも追加されるとのことなので、こりゃまた楽しみ! タイプRもハイブリッドになるかも? なんて噂もあるらしいので、どうなるかワクワクして待ちたいと思います。