まるも亜希子の「寄り道日和」

フィットに復活したRSに試乗しました

ついに正式発表となった、フィットe:HEV RS(左)。ノーマルモデルは柴犬のような顔だと言われていますが、RSはとっても精悍な雰囲気になっていますよね。右は現在、King&Princeの皆さんとのCMにも登場している、Joy耐参戦マシンです。初年度はまったくサーキットに似合わないなぁと思っていた顔つきが、レースを経験するに従ってだんだんカッコよく引き締まってきて、今ではレーシングカーらしいキリリとしたマシンになっています

 祝! フィットのRS復活! ということで、「心地いい走り」に「走りの愉しさ」をプラスした、フィットe:HEV RSが本日正式発表となりました! 実は、すでにクローズドコースでプロトタイプに試乗させていただいたので、お伝えしたいと思います。

 まずデザイン。やる気マンマンな感じではなく、すごく大人っぽいスポーティデザインが素敵です。ブラックのRS専用グリルと専用バンパーで迫力アップしつつ、ヘッドライトリングの色がブラックに変更となったり、サイドミラーもブラックに。ピラーガーニッシュはマットブラックで、シックなカッコよさが加わっています。

 リアもRS専用の大型リアスポイラーやバンパー、エキパイフィニッシャーで勇ましい雰囲気がアップしてますが、洗練されたスポーティといった佇まい。16インチホイールもRS専用デザインで足下を引き締めているんです。

ステッチが入った3本スポークのステアリングが、フィットe:HEV RSのインテリアの大きな特徴です。グレーとのツートーンとなるシートなど、全体的にシックで大人っぽいインテリアになってますよね

 インテリアはあんまり変わっていないように見えますが、運転席に座った人だけが「お!」と思うのはステアリングが3スポークになっていること。走りをより楽しくしてくれる減速セレクターや、3モードスイッチも加わっています。

 そして走りですが、フィットe:HEV RSはトラクションモーターの最大出力が13PSアップしていて、加速性能が大きく向上しているのが特徴です。走行モードに「SPORTモード」が加わり、サスペンション特性に合わせた専用アクセル応答特性をセッティングしていて、初期応答をはやめ、スムーズに駆動力をつなげるようにしています。なのでSPORTモードにすると、エンジン回転数の上昇速度が上がり、変速ポイントが高くなります。通常がMAX6000rpmのところ、MAX6300rpmになり、立ち上がりから急激な加速Gがとてもエモーショナル。でも、ただ加速Gが強いだけでなく、そこからのつながりのなめらかさが最高に気持ちいいのです。

 このフィットe:HEV RSが登場するまでには、3年前にスタートしたJoy耐チャレンジプロジェクトでの試行錯誤がありました。石井昌道・橋本洋平・まるも亜希子の3人で結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」にベテランの桂伸一さんがジョインしてくださり、ホンダのフィット開発チームとタッグを組んで、モビリティリゾートもてぎの7時間耐久レース「Joy耐」と2時間耐久レース「ミニJoy耐」にこれまで4度、参戦してきました。最初はまったく勝負にならなかったラップタイムは20秒以上も短縮し、今ではライバルチームに迫るまでに。完走した時もあれば、トラブルによってリタイヤした時もありますが、この活動を通じて、私たちが目標としていたことはただひとつ。多くのファンが待ち望んでいる「走りのフィット」をもう一度、世の中に送り出したいということです。

 ドライバーの感じたことをフィードバックしながら、開発者がモーター特性やCVTの制御、バッテリーマネジメントなどをコツコツと改良し、サーキットでライバルたちと互角に闘えるまでのマシンに仕上げていきました。そのノウハウが注がれているのが、このフィットe:HEV RS。Joy耐マシンとの違いは、タイムを突き詰めていくと「走りの愉しさ」を犠牲にせざるを得ない部分があり、例えばエンジンサウンドや、操作に対する一連の挙動の滑らかさといった部分は、市販車に落とし込むにあたって「ハーモニー」を大事にしたといいます。

速さを突き詰めたJoy耐マシンの方が確かに加速Gの過激さなどはあるのですが、それだと走って気持ちがいいところばかりではなく、荒っぽい挙動になったりするので、フィットe:HEV RSではそうした荒さを省き、操作に対して常になめらかなつながりをもつ「ハーモニー」を大切にして仕上げたと、フィット開発責任者の奥山さんも言っていました

 前後ロール剛性を見直したり、操舵量に応じた安定したロール姿勢を見直したり、操作に対して挙動が心地よくつながっていく、ヒトの感覚に合った旋回挙動で走る愉しさを実現しているのです。試乗時にはヤリス、ノートe-POWER NISMOとも乗り比べをしたのですが、それぞれよさがあるものの、思った通りに操れてブレーキ、アクセル、ハンドルの操作に対して忠実に、リズム感よく走ってくれるところがフィットe:HEV RSはピカイチ! 乗り心地のよさ、安定感も素晴らしいと感じました。ロードセイリングの頭文字であるRSの名にふさわしく、日常の中で誰もが感じられる爽快な走りが、しっかり楽しめるクルマになっていると思います。

 私たちのJoy耐チャレンジプロジェクトも、あとは12月のミニJoy耐参戦を残すのみとなりました。マシンのデザインもRS仕様に変えて、3年間の集大成となるよう頑張ります!

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。