まるも亜希子の「寄り道日和」

新ジャンルのクロスオーバーモデルで気づいたこと

新型クラウンのデザインは最近の攻めてるトヨタらしくて好きなのですが、皆さんはいかがですか? 名前がクラウンじゃなければすんなり受け入れられたのに……という人もいるかもしれないですね

 衝撃的な変貌を遂げた新型「クラウン」が何かと話題ですよね。最初に登場したクロスオーバーのデザインや、伝統のFRではなくなったこと、このあと続々と多彩なバリエーションのクラウンが控えていること、海外展開されることなどなど、トピックてんこ盛り。賛否両論ありますが、注目されるのは無視されるよりよっぽどいい! と私は思います。

 しかも、この「セダンとSUVとステーションワゴンのイイとこどり」をしたようなデザイン、すごく好きなんです。メルセデス・ベンツ「Cクラス」初のクロスオーバーとして登場した、Cクラス オールテレインに試乗した時も、「Cクラスの中で一番好き!」と感激したし、シトロエン「C5 X」もこうしたセダンの進化系としてのクロスオーバースタイルで登場して、伝統と革新が同居したデザインがとても魅力的でした。

 でもよくよく考えてみると、この3台に「いいな」と感じる理由は単にデザインの好みだけではないことに気づいたのです。

 まず、本格的なSUVほどではないけれど、セダンやステーションワゴンよりも高い最低地上高を確保しているのでヒップポイントが上がり、乗り降りがしやすいことと、視界が開けていること。小柄な人だとこのボディサイズのセダンは前が見にくいと感じることが多いですが、その弱点をクリアしてくれます。新型クラウンの場合、従来のセダンよりも80mm高い630mmとなっているそうです。

クラウンの見どころの1つでもある、この21インチの大径タイヤ。開発時にトヨタとして初めて外径の要望を出し、ミシュランと試行錯誤しながら作り込んでいったそうです。スタイルと転がり抵抗を両立させるのはかなり難しく、例えるならばパイロットスポーツの形をしたプライマシーを実現するというほどだったとのこと。乗ってみると、なるほどと思うところがあります

 そして、セダンよりも視界が開けているのに、乗り味はSUVよりも低重心なセダンに近く、高速道路などでも安定感が高いこと。これは不思議な感覚ですが、例えばCクラス オールテレインでは速度が上がるほどにググッと路面に沈み込むような安定感の高まりを感じ、だんだんとクロスオーバーよりも低いクルマを運転しているような気持ちになってくるのです。後席の乗り心地もなかなかよくて、4WDを走破性のためだけでなく、そうした上質感アップのためにも有効に働かせているのかなと感じたところも好印象でした。

シトロエン「C5 X」は最低地上高が165mm確保されていて、ちょっとしたラフロードや雪道なども頼もしく走れそう。でも、ドレスアップした服装でも似合いそうな、エレガントなスタイルになっているところが新しいですよね。今後登場するプラグインハイブリッドモデルが楽しみ!

 インテリアの質感やセンスが一番好きなのは、C5 X。シトロエンのエンブレム「ダブルシェブロン」が細かな模様となっているインパネなどには、どことなく日本の伝統工芸にも通じるホッと落ち着く感じや温かみがあるのですが、それが日本人デザイナー・柳沢知恵さんによるものだと知って、なるほどと腑に落ちました。C5Xは最初に1.6リッターのガソリンモデルが日本に入ってきて、あとからEV航続距離が65kmほどだというPHEVが登場する予定なのですが、走りや乗り心地などはPHEVが本命かな? と期待しています。

 クロスオーバーではなくリフトアップセダンとも呼ばれている、こうした新ジャンルのクルマたち。今後、世界的なSUVの勢いがこちらに流れてくるのかどうか、海外でクラウンがどう受け入れられるのか、注目していきたいと思います。

C5Xのインテリアデザインは、さすがフランス生まれのセンスのよさ。エンブレムのダブルシェブロンが、シートのレザーやインパネなどの模様のモチーフになっていて、どことなく日本の伝統工芸にも通じる丁寧な手仕事を思わせます。色使いもオシャレですね
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。