まるも亜希子の「寄り道日和」
SIP最終成果発表会に参加して未来に期待するもの
2023年4月13日 00:00
日本が提唱する未来社会のコンセプト「ソサエティ5.0」は、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによって実現する、人間中心の超スマート社会だと言われていますよね。そして、その実現のために欠かせないのが自動運転。
クルマ業界にどっぷり浸かっていると、どうしても自動運転はクルマが主役と思ってしまいがちだったのですが、3月に開催されたSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)最終成果発表会に参加してみると、じつに多種多様な技術の再構築と地道な研究開発、地図データを含む環境整備、そして何より私たち1人1人の意識改革のために、これほどの人たちが動いていたのだということを見ることができて、終始圧倒されてしまいました。
私たちがこれまで見てきたのは、最初は走行中の車両の目の前に迫った前走車を検知して、警告とともにブレーキをかけて衝突を回避または被害を軽減する技術でした。そこから、歩行者や自転車、夜間の検知も可能になり、前走車に追従できるようになったら、ついにハンズオフでの追従や、車線変更までが可能に。そしてホンダ・レジェンドがハンズオフだけでなくアイズオフ、前を見ていなくても走行することができる自動運転レベル3を実現。日産は飛び出してきた車両や歩行者を自動で避ける技術を発表し、私もまさにそれを体験して大きな衝撃を受けました。
これらはまず、交通事故ゼロ社会を早期に実現するために。そしてその先には、さまざまな社会問題を解決するために。島根県の飯南町などで稼働している自動運転サービスは、地方での住民の高齢化、過疎化、人手不足などによって危機に瀕しているライフラインをつなぐ救世主として、ぜひ今後増えていってほしいと感じました。
というのも長野に住む私の父が昨年、自主的に運転免許を返納したのですが、それ以降、外出する機会が減ったこともあって体力が落ち、人とのコミュニケーションも減ってしまっているのを目の当たりにしているのです。家の近所にバス停はなく、徒歩圏内にスーパーもないので、食品や日用品の買い出しにはタクシーを呼ぶしかないのですが、1回の買い物で4000円程度の乗車賃がかかるとのこと。週に1回としても、月に1万6000円の出費は年金暮らしには厳しいはずです。
それならばと宅配サービスを利用すると、食品の調達には困らないものの外出する機会が減り、ずっと家にいるので足腰がどんどん弱っていきます。誰とも話をしない日が増えて、生活にハリがなくなっていくのではと心配にもなっています。やはり、できる限り長く「自分の足で出かけ、自分の目で見てほしいものを選び、生身の人と触れ合う機会」がある方がいいのではないかと感じるのです。
そうなると、スーパーや病院、銀行、床屋といった生活に必要な場所を定期的に回ってくれる自動運転サービスが整備されることは、大きな一歩になるのではと思います。いよいよ政府は、これまでの成果を踏まえて「スマートモビリティプラットフォームの構築」に着手する予定とのこと。今後の進化にも注目していきたいと思います。