まるも亜希子の「寄り道日和」

アイスもいける「シンクロウェザー」体験してきました

2024年2月、雪景色がきれいな旭川のテストコースにて、初めてシンクロウェザーを体験。アイス路面にしっかり食いつくことにビックリしたのでした

 まさかまさか、ドライもウェットもスノーもアイスまでも、同じ1本のタイヤでイケちゃうなんて、ホント〜?

 口には出さないけど内心、疑いの嵐(笑)のまま北海道へ飛んだのは、2024年2月のことでした。住友ゴムのタイヤブランド「DUNLOP」が、新技術の発明によるまったく新しいジャンルのタイヤ「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」を開発し、その試作品の試乗会が旭川のテストコースで行なわれたのです。

 全ての路面を1本のタイヤで走れるという点では、いわゆるオールシーズンタイヤと言えるわけですが、既存のオールシーズンタイヤは「M+S スノーフレークマーク」が刻印されているので降雪路は走れるんですが、凍ったアイス路面はどれも「推奨せず」「NG」となっていたんですね。それがシンクロウェザーは、「氷上性能が確認できた証」とされている「アイスグリップシンボル」が初めて刻印されたオールシーズンタイヤということになります。

ちょっと見えにくいですが、M+S スノーフレークマークに加えて、しっかりとアイスグリップシンボルが刻印されています

 とはいえ……。真っ白く覆われた雪の路面と、ツルッツルのアイス路面。どちらも走れますという言葉を半分信じつつ、恐る恐る出ていってみました。比較用のタイヤを履いたクルマも用意されていて、まずはすでにダンロップが販売しているオールシーズンタイヤの「ALL SEASON MAXX AS1」。そして、純然たる冬道用のスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX 02」。降雪路は、やはりスタッドレスタイヤの安心感はものすごいですね。AS1も緊張感はあるものの走れますが、アイス路面になった途端、まっすぐ走るのが難しくなり、カーブでも気を抜くとオーバーステア気味になってしまいます。

 そしていよいよ、シンクロウェザーで走ってみると、降雪路は発進から安定していて滑らかな加速フィール。操作性にもとくに緊張感はなく、直進安定性もしっかりしていると感じます。で、問題のアイス路面ですが、すごく食いついているのを感じ、カーブもスラロームも安心感が高いのでAS1より速度が5km/hくらい速くイケますね。ハンドルやペダルの操作のつながりがスムーズで、ブレーキングも自然で安定してる! えーっ、スゴイ! 終始びっくりしながら走っていたのでした。

 なんでこんなことが可能になったのかというと、今までのゴムは、低温時に硬くなったり、水で濡れた路面では排水性が問題となったり、弱点があったんですよね。だから雨の日はすべりやすくなるし、雪や凍結路では冬用タイヤが必要でした。でもシンクロウェザーは、水や温度に反応してゴムの性質が瞬時に変化して適合させるという新技術「アクティブトレッド」を組み込んだんです。

 これは、従来のゴム構造は共有結合によってしっかりと結びついているのですが、水に触れると結合がほどけて柔らかくなる仕組みと、温度が低くなると硬くなってしまうグリップ成分を一部取り出すことで、ポリマーが自由に動きやすくなってグリップ力を保つという仕組みの2つを持たせたとのこと。まさに、ゴムの常識を覆す大発明。

 ただ、私はその時思いました。雪とアイス路面の実力は分かったけど、ドライとウェット路面でちゃんと走れることを確認するまでは、まだ信じないぞーと(どんだけ疑い深いヤツなんだ・笑)。

2024年7月、今度は岡山県のテストコースにて、ドライ路面とウェット路面でシンクロウェザーを体験。こちらの実力も優秀で、次世代のオールシーズンタイヤに納得した私でした

 そして季節は冬から春、夏へとめぐり、猛暑となった7月。私は岡山県のテストコースに向かいました。オールシーズンタイヤというと「音がうるさい」というイメージを持っている人も多いと思いますが、ここでは静粛性や乗り心地に定評のある夏タイヤ「LE MANS V4」と、北海道にもあったスタッドレスタイヤとの比較試乗も決行。するとシンクロウェザーは操作性や乗り心地がしっかりしているのはもちろん、音もちゃんと抑えられているではないですか。もちろん、聞こえてくる音の質みたいなものはLE MANS V4の方が上質な感じなのですが、シンクロウェザーの方も音域が異なるだけでまったく不快な音ではなく、すぐに慣れて快適な試乗ができました。気になったのは、ほんの少しですが砂利の巻き上げが多いかもしれないな、ということくらい。ハンドリングもいいし、すごく好印象です。

 さらに、ウェット路面に行くと、この日いちばんの驚き。LE MANSよりも安定感があり、細かく変わる路面のミューに対しても瞬時にゴムの性質が適合することで、一定のコントロール性を出してくれるからすごく走りやすいんです。乗り心地や音といった快適性の部分はLE MANSと変わらないので、これは本当にすごいとすっかりシンクロウェザーのファンになったのでした。

 東京に住み、年に2回くらいスキーなどで雪道を走るくらいのわが家が、なぜオールシーズンタイヤに手が出せなかったかといえば、やっぱりいざという時にアイス路面が走れないと困るから。でもシンクロウェザーなら、アイスもいける! これは10月の発売に向けて、真剣に履き替えを検討することになりそうです。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。