東京モーターショー2015
トヨタ、豊田社長「バッターボックスに立たないと“WOW”は起こせない」とイチロー選手を招いて新型「プリウス」の挑戦をアピール
イチロー選手「トヨタのチャレンジがどんな“WOW”を起こすのか注目」
(2015/10/29 11:21)
- 2015年10月28日開催
東京モーターショー2015の初日(報道関係者向け公開)となる10月28日、トヨタブースで開催されたプレスカンファレンスには、トヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏が登壇、マイクを握った。
豊田氏はまず、今回のモーターショーで同社が掲げたキーワード「WHAT WOWS YOU? あなたの心を動かすものは何ですか?」を紹介。続けて「今から100年前、T型フォードが登場するまで、アメリカには人やモノを運ぶために1500万頭の馬がいました。その後、わずか20年の間に、ほぼ、すべての馬がクルマに置き換わったといいます。なぜ、人々はクルマを選んだのでしょうか。いろいろな理由があったと思いますが、馬よりもクルマで移動するほうが、楽しかったからだと言われています。クルマの存在そのものが“WOW”だったのかもしれません」と、クルマには潜在的な楽しさがあることを紹介。
続けて、同社を80年前に立ち上げた豊田喜一郎氏も、日本人に日本人の手でクルマを届け、“WOW”を感じてほしい、そんな情熱があったと振り返った。そして、現在のトヨタもそれは変わっていない、それがトヨタの使命であると語った。
今回のモーターショーでは「もっといいクルマを作りたい、という想いを胸に自分たちの考える“WOW”を形にしようとした」と説明。そして「これは今の非常識を、次の常識にするチャレンジでもあります。ハイブリッドカー、燃料電池車、いずれもかつては非常識でした。非常識はやがて常識になり、居心地のよい場所になり、しかし、この居心地のよい場所から抜けださなければ、未来を切り開くことはできません」と、失敗を恐れずチャレンジしていく姿勢こそ重要であると説明した。そして、「私たちが生きていく中で、できない、無理だとあきらめる理由はいくらでもあります。しかし0打数0安打では世の中、何も変わらない。ヒットを打てるかどうかわからない。それでもバッターボックスに立たないと“WOW”は起こせない。それを私たちに教えてくれた方がいます」と、ゲストを紹介した。
その呼びかけに答えて登壇したのはマイアミ・マーリンズのイチロー選手。「マイアミ・マーリンズのイチローです。野球やってます」と自己紹介の後、豊田社長に会って話をする度に「なぜか共感できることが多いなと、勝手に感じていました」と、話した。
そして「僕は毎年バッティングフォームを変えるようにしています。たとえ、首位打者を獲ったり、誰よりもヒットを打ったとしても、次の年には変えてしまう。今よりも前に進むためには常に新しいチャレンジが必要だと信じているからです。その結果、前の年よりも成績が下がったり、うまくいかないこともたくさんあります。むしろそのほうが多いのかもしれません。でも僕はこう思うんです。成長するということは、まっすぐにそこへ向かうことではないんじゃないか。前進と後退を繰り返して少しだけ前に進む、つまり後退も成長に向けた大切なステップなんじゃないかと」と、自身のプレイスタイルを解説。
新しいプリウスは「(TNGA採用など)トヨタの首位打者と言えるプリウスで大胆にフォームを変えてきた」「グローバルに戦うということは本当に厳しいことです。新しいことにチャレンジしなければ生き抜くことはできない」と、バッターボックスに立つ自分の姿を重ね、世界は違うものの同じ気持ちであると話した。
最後に「トヨタのチャレンジがどんな“WOW”を起こすのか注目しています。僕はクルマが本当に大好きです。クルマの運転はうまくありません。トヨタだけでなく、多くの自動車メーカーが思い切ったチャレンジをして、クルマがもっともっと楽しくなることを心から願っています。信じられない緊張感の中、ご清聴ありがとうございました」と、会場を沸かせスピーチを締めくくった。
イチロー選手のスピーチを受けた豊田氏は「野球を愛し、成長し続けるために、常に新しいことにチャレンジする。日々の練習はもちろん、バットやグラブといった道具の手入れに至るまで、誰よりも入念な準備を重ねる。いったん、バッターボックスに入ればどんな結果になったとしても、決して言い訳をせず、すべてを自分の責任として受け入れる」。そんなイチロー選手の姿勢に心から感銘を受けたとし、「トヨタのクルマづくり、企業経営の姿勢もこうありたい」と話した。最後に「私たちトヨタはもっともっといいクルマを作ります。そしてもっともっと楽しいモビリティ社会の実現に向けて努力いたします。WHAT WOWS YOU? それは勇気をもってチャレンジすること。私たちはこれからもずっとバッターボックスに立ち続けたいと思います。皆さん、私たちと一緒にやりましょうよ」と呼びかけ、カンファレンスを締めくくった。