イベントレポート

【フランクフルトショー 2019】デンソー、ブランドアンバサダーのトム・コロネル選手を司会に記者会見

JOLEDが円柱型のディスプレイを展示

2019年9月11日(現地時間) 開催

フランクフルトモーターショー(IAA)2019のデンソーブース

 日本のティアワン部品メーカーのデンソーは9月11日(現地時間)、ドイツ フランクフルトで開催されている国際モーターショー「フランクフルトモーターショー(IAA)2019」に出展し、同社ブースにおいて記者会見を開催した。

 会見には、デンソー 執行職 欧州地域CEO/デンソー・インターナショナル・ヨーロッパ 社長 佐藤久彰氏、デンソー・サーマル・システムズ社(DENSO THERMAL SYSTEMS) R&Dディレクター、 マッテオ・ビリア氏、デンソー 執行職 北米・欧州技術開発担当 松ヶ谷和沖氏が登壇し、デンソーの強みや将来のビジョンについてのトークショーを行なった。司会は1999年のフォーミュラ・ニッポン王者で現在もFIA WTCRに参戦しているレーシングドライバーであり、デンソーのブランドアンバサダーも務めているトム・コロネル選手。

 また、デンソーブースでは、OLED(有機EL)パネルを製造するJOLEDも展示を行なっており、プロ用の21型ディスプレイと曲げられるOLEDの特徴を生かした円柱ディスプレイの紹介した。

車両が電動化してもサーマルマネージメントは重要。それに対応したソリューションを提供できる

デンソーブースで行なわれた記者会見

 通常こうした記者会見では、PowerPointなどのスライドを利用してプレゼンテーションを行なうのが一般的だが、今回の記者会見では記者に対しての説明のほか、FacebookなどのSNSを利用したストリーミング中継が行なわれたこともあり、登壇した3人のデンソースタッフが司会の質問に答えるという形式で進められた。

司会のトム・コロネル選手

 司会を務めたコロネル選手は現在もFIA WTCRに参戦している現役選手で、1996年に来日してからはトムスチームから全日本F3選手権に参戦し、翌1997年に全日本F3チャンピオンに輝いている。1998年には現在のスーパーフォーミュラの前身となるフォーミュラ・ニッポンにステップアップし、2年目の1999年にチャンピオンを獲得している。

 その後は海外に活躍の場を移して、WTCC(世界ツーリングカー選手権)でも活躍。現在はその後継イベントとして行なわれているFIA WTCRに参戦中で、10月25日~27日に鈴鹿サーキットで行なわれる日本ラウンド(スーパーフォーミュラ最終戦と併催。詳細は鈴鹿サーキットのWebサイトを参照)にも参戦する予定だ。

会場のスクリーンにはコロネル選手がフォーミュラ・ニッポンに参戦していた当時の映像も流れた

 コロネル選手はデンソーがQRコードを25年前に開発して、今では世界中で使われていることなどを紹介しながら、デンソーが世界で2番目に大きなティアワンの部品メーカーであることなどを紹介し、さらに登壇したデンソースタッフに質問する形でトークショーを進めた。

株式会社デンソー 執行職 欧州地域CEO/デンソー・インターナショナル・ヨーロッパ 社長 佐藤久彰氏

 デンソー 執行職 欧州地域CEO/デンソー・インターナショナル・ヨーロッパ 社長 佐藤久彰氏は「自動車業界は今、大きく変わろうとしている。デンソーは新しいモビリティ社会に貢献できるように、持続的成長が実現できるように、さまざまな技術を導入していく。中でも重要なのは熱設計監理(サーマルマネージメント)だと考えている」と述べ、電動化自動車(EV/PHEV/HVなど電気を動力に利用する自動車の総称)を実現するためには、バッテリーやモーターの性能を最大限発揮するために熱をしっかりと管理していくことが重要だと強調した。

DENSO THERMAL SYSTEMS S.p.A. R&Dディレクター、 マッテオ・ビリア氏

 デンソー・サーマル・システムズ R&Dディレクター、 マッテオ・ビリア氏はヒートポンプの効率的な活用をその具体例として説明した。「ヒートポンプを活用することで、温めたり冷やしたりを効率よく行なうことができるようになる。EVではそれが航続距離に影響する」と述べ、デンソーが欧州で注目されている電動化自動車に向けた各種ソリューションを提供できることを強調した。

株式会社デンソー 執行職 北米・欧州技術開発担当 松ヶ谷和沖氏

 デンソー 執行職 北米・欧州技術開発担当 松ヶ谷和沖氏は「デンソーは革新的な技術を持っているだけでなく、開発リソースや製造キャパシティを十分に備えている。そうした組織としての強みがある」と述べ、顧客となる自動車メーカーが求めるものを提供することが可能なリソースを準備していると強調した。

JOLEDが折り曲げられるOLEDの特徴を生かす円柱型ディスプレイ展示

JOLEDの円柱型ディスプレイ

 また、デンソーブースではデンソーのパートナーとなっている複数の企業やスタートアップなども製品展示を行なっていた。JOLEDもその1社で、JOLED製のOLEDパネルを展示した。JOLEDにはデンソーも300億円を出資しており、両社は共同で車載向けのOLEDパネル開発を行なっている。

JOLEDの展示コーナー

 JOLEDが製造するOLEDは、現在車載向けなどで一般的に使われている液晶パネルと比べて高いコントラストを実現し、色表現も豊かになるなどの特徴を備えている。AppleのiPhoneやSamsung ElectronicsのGalaxyといった高価格帯のスマートフォンで採用が進んでいる高品質なパネルになる。JOLEDが開発して生産しているOLEDは「印刷方式」と呼ばれる方式で製造されている。印刷方式は有機EL材料を印刷により塗布・形成する技術で、生産過程をシンプルにできることから多彩な画面サイズに対応できるという特徴がある。

JOLEDがプロユース向けに出荷している21.6型OLEDパネル、4K(3840x2160ドット)の解像度になっている

 OLEDのもう1つの特徴は折り曲げなどが容易ということ。JOLEDブースでは円柱の周囲にOLEDのパネルを貼り付けた円柱ディスプレイが展示されていた。将来的にはクルマのダッシュボードの湾曲に合わせてOLEDディスプレイを貼り付けるという用途も考えられる。JOLEDではデンソーと協力しながら、そうした車載向けのOLEDパネル開発を続けていくということだった。

円柱型ディスプレイ

【お詫びと訂正】記事初出時、登壇者氏名に間違いがありました。お詫びして訂正させていただきます。

笠原一輝