イベントレポート

ダボス会議や経団連で講演したギル・プラット博士が、11月2日のジャパンモビリティショー登壇 「共感」など「未来を切り開くモビリティの力」がテーマ

一般公開日:10月28日~11月5日

入場料:1500円~4000円

2016年4月、NVIDIA GTC2016基調講演より

 11月2日10時30分、ジャパンモビリティショーのジャパン フューチャー セッションにおいて、ギル・プラット博士(Dr. Gill Pratt)のトークセッションが行なわれる。

 ギル・プラット博士は、現在Chief Scientist and Executive Fellow for Research of Toyota Motor Corporationという役職にあるが、トヨタのAI研究開発機関であるTRI(Toyota Research Institute)を立ち上げ、前職はDARPA(Defense Advanced Research Projects Agency、国防高等研究開発局)のプログラム・マネージャーとしてロボット関連を担当。現在の自動運転技術の源流の一つとも言える、DARPA Robotics Challengeを担当した。DARPAの大きな成果の一つがインターネット技術であるように、先端の技術開発にたずさわってきた人物になる。

2023年、TRI EXPOより

 記者自身が初めてギル・プラット博士の講演を聞いたのが、TRI設立直後の2016年1月に米国ラスベガスで行なわれたCES2016のプレスカンファレンスにおいて。TRIの組織概要を発表するものだった。

 そして、その年の4月に行なわれたNIDIAのGTC(GPU Technology Conference)2016では基調講演を担当。かつては謎の半導体企業とも書かれたNVIDIAだが、2010年代半ばでグラフィックスやスーパーコンピュータ企業からAI企業へと転身。その転換期にギル・プラット博士は基調講演を担当、TRIが取り組んでいるAIの研究成果や、トヨタが考える自律運転/自動運転の方向性などに関する講演を行なった。

 この講演はエポックメイキングなもので、混沌としていた自動運転車の開発方向性に一つの指針を与えた。博士は、自動制御におけるSeries、Interleaved、ParallelといったDARPAのロボット開発で培ってきた知見を示し、人とロボットがどうかかわって行くのかということについて説明。

 その上で、TRI設立に当たって当時の豊田章男社長から受け渡された「安全(Safety)、環境(Environment)、誰もが使える移動手段(Mobility for All)、楽しい運転(Fun to Drive)」の4つのビジョンを紹介。Safety、Environmentまでは当時でもコモンセンスとなっていたが、Mobility for Allは近年トヨタが積極的に取り組んでいることでもあり、Fun to DriveはトヨタのDNAとも言える部分でもある。それら4つのビジョンとともにある自動運転ということで、とくにFun to Driveの部分では会場からの反響が大きかった。

 これら4つのビジョンを示した後に、博士は自動運転へのアプローチを語る。それが、現在の自動運転でも語られる「Chauffer(運転手)/Series Autonomy」と「Guardian Angel(守護天使)/Parallel Autonomy」という概念。ショーファーはクルマ業界であれば常識的な概念であるが、当時の自動運転(主にロボット業界)ではなじみのない概念であったため、謎な記事が多く出ていたのを覚えている。一方、ガーディアンエンジェルもピュアな概念が入っているためか、その後トヨタ自身もガーディアンとして規定し直しているものの、博士の講演以降、自動運転はショーファーとガーディアンという言葉で整理され、語られることが多くなった。

 近年は、カーボンニュートラル方面への言及も多く、ダボス会議や先日の経団連モビリティ委員会での講演は、将来についての知見を識者の前で示した。

 そのギル・プラット博士のトークセッションを、ジャパンモビリティショーで聞くことができるというのは、今後のモビリティのヒントを得られる貴重な機会であることは間違いない。11月2日10時30分から「Mobility of the mind 〜 未来を切り開くモビリティの力 Creating Limitless Possibilities through Mobility」というテーマで実施される予定だ。

編集部:谷川 潔