イベントレポート

トヨタ紡織、JAXAと研究開発する航空機シート「ウェルボヤージュ・シート」公開

2025年10月30日〜11月9日 開催
トヨタ紡織とJAXAが研究開発する航空機向けシート「ウェルボヤージュ・シート」

 トヨタ紡織は東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されているジャパンモビリティショー2025(会期:10月30日〜11月9日)に出展。西3・4ホールに位置するブースでは「Finest QUALITY OF TIME AND SPACE For you −あなただけの特別な時空間−」をコンセプトに、同社が考える未来の移動空間を提案している。

 プレスデー2日目となる10月30日にプレスカンファレンスを実施し、トヨタ紡織株式会社 代表取締役社長・CEO 白柳正義氏がプレゼンテーションに登壇した。

トヨタ紡織株式会社 代表取締役社長・CEO 白柳正義氏と後方に見えているのが次世代の移動空間モック「I.C.30 -Integrated Cabin 2030-」

 その冒頭、トヨタ紡織について「世界中のお客さまへ感動をおりなす移動空間の未来を創造する会社として、モビリティの中でもっともユーザーに近い製品であるシートや内装部品を手掛ける移動空間と、フィルター製品やモーターコアなどの電動化製品を手掛けるユニット部品を事業領域としています」「世界23の国と地域に90拠点あるグローバルネットワークを活用し、トヨタ自動車をはじめ、国内外のさまざまなお客さまと取引を行なっております。売上高は2024年度はおよそ1兆9000億円。 2030年度の目標として2兆1000億円を掲げております」と会社概要を説明した。

トヨタ紡織株式会社 代表取締役社長・CEO 白柳正義氏

 主力製品となるシートについては「人中心の設計を大切に、小型車から高級車まで幅広い車種で多様なニーズにお応えするシートを開発している」と述べるとともに、「今後は制御やソフトウェアを含めた移動空間全体の企画、提案ができるように取り組んでまいります」と将来の展開を示唆した。

 展示においても次世代の移動空間を表現したモックアップ「I.C.30 -Integrated Cabin 2030-」を展示し、「さまざまな着座姿勢を考慮し、移動中も安心安全で快適に過ごせる“リラックスアンドセーフティシート”、ユーザーの気分に寄り添った光の演出で心地よい空間にする“車室内イルミネーション”、これらのデバイスを連携させ空間全体を制御いたします」と紹介した。

透過型ディスプレイを使用し次世代の移動空間「I.C.30 -Integrated Cabin 2030-」を紹介
電動車の概要をオーバーレイ表示
透過型ディスプレイの後方に置かれた次世代の移動空間「I.C.30 -Integrated Cabin 2030-」のモックアップ
リラックス&セーフティシートを中心とした次世代のキャビンを提案
シートポジションはもちろんイルミネーションやシートの振動なども統合して空間を演出する仕組みを採用している

 また、自動車だけではなく航空機や鉄道のシートも手掛けており、航空機向けの展示として機内用車いす一体型航空機シート「ウェルボヤージュ・シート」を用意。

 これはJAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)とともに研究開発を進めているもので、座席フレームから1席ずつ取り外すことができ、シートに座ったまま移動することが可能というもの。これにより「乗り換えは最小限となり、車椅子ユーザーと介助者の負担を軽減することができます。また、座ったまま窓側に移動・固定もできますので、車椅子ユーザーもこれまで難しかった窓の外の景色を楽しむことができ、より快適な空の旅を過ごしていただける」「空の旅のユニバーサルデザインを実現する」と述べた。

JAXAと研究開発する航空機向けのシート「ウェルボヤージュ・シート」。フロアへの固定方法は従来と同様。ただ、シートバックに介助者用のハンドルが付くためテーブルや後方席用のモニター設置は不可能。機内での位置は最前列や最後列などある程度限定されることになりそう
横にスライドさせて引き抜くとそのまま機内移動用の車いすに
フレーム。座面左側の白いエクステンション部も取り外し可能となっている
救命胴衣は左右席の中央下部に
関西万博にも期間限定で展示されていた「Proximity」没入型体感シート。国土交通省が整備中の3D都市モデルオープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」により再現された渋谷や京都の街中を移動体験できる。専用サイトから体験予約が可能だ
シートそのものは専用品
内部に10個の振動デバイスが埋め込まれている。大きさは40〜50φぐらいとのこと
シートは6軸でコントロール
渋谷を体感してみた。シートの薄さから想像する以上に振動が大きく没入感満点。EVにエンジン車のような振動を付加するなんて使い方も想定しているとか
レクサス「RX」に採用されているプレミアムシート
座面長を体格に合わせて変更することができる
レクサス「LX」に採用されている「おもてなしリアシート」
「GRカローラ」に採用されている「TBスポーツII」
トヨタ「プリウス」に採用されているスタンダードシート
ファッションブランド「TAKEO KIKUCHI」とコラボした自動車用素材や加飾を使用したアパレル
安田 剛

デジモノ好きのいわゆるカメライター。初めてカーナビを購入したのは学生時代で、まだ経路探索など影もカタチもなかった時代。その後、自動車専門誌での下積みを経てフリーランスに。以降、雑誌やカーナビ専門誌の編集や撮影を手がける。一方でカーナビはノートPC+外付けGPS、携帯ゲーム機、スマホ、怪しいAndroid機など、数多くのプラットフォームを渡り歩きつつ理想のモデルを探索中。