イベントレポート

自工会「未来モビリティ会議」の特別セッション「トップが語る『モビリティ愛』とは!」開催

一般公開日:2025年10月31日~11月9日 開催
入場料:1500円~3500円(小学生以下はアーリーエントリーを含め無料、高校生以下はアーリーエントリーのみ3500円でそれ以外は無料)
未来モビリティ会議・特別セッションに参加した日本自動車工業会の会長・副会長の7人

「ジャパンモビリティショー2025」(一般公開日:2025年10月31日~11月9日、会場:東京ビッグサイト)では期間中に会場内の各ブースで参加企業による製品展示が行なわれているほか、各所でモビリティの魅力を紹介する多彩なプログラムが実施されている。

 プレスデー2日目となる10月30日には、西展示棟アトリウム 特設ステージで「未来モビリティ会議」の特別セッション「トップが語る『モビリティ愛』とは!」を開催。第1部では日本自動車工業会の会長であり、いすゞ自動車 代表取締役会長 CEOも務める片山正則氏がスピーチを行ない、その後の第2部では片山会長と自工会 副会長・専務理事である松永明氏、自工会 副会長を務める自動車メーカー5社の社長という計7人が登壇して、モビリティにかける想いなどを語り合うトークセッションも展開された。

特別セッションの登壇者

 また、会場の両サイドには参加者の「想い入れのある愛車」が展示され、クロストーク内でも各車について取り上げられた。

会場の両サイドで参加者の「想い入れのある愛車」を展示
片山会長の“未来の愛車”NTB「EXPEDITION STRIKER」(いすゞのキャンピングカー専用シャシー・Travioを採用した車両)
鈴木俊宏氏の愛車だった初代「アルト」
鈴木俊宏氏の愛車だった「マメタン」
佐藤恒治氏の現愛車「MR2」
イヴァン・エスピノーサ氏の現愛車「フェアレディZ」
三部敏宏氏の現愛車「プレリュード」
設楽元文氏の元愛車「RZ250」
設楽元文氏の現愛車「XSR900」

来場した人といっしょに未来を思い描き、探していくショーにしていきたいと自工会 片山会長

片山正則氏(日本自動車工業会 会長/いすゞ自動車株式会社 代表取締役会長 CEO)

 自工会 片山会長によるスピーチでは、「ジャパンモビリティショーの前進である東京モーターショーは70年の歴史を誇り、日本を代表する自動車の祭典として愛されてきました。この伝統を引き継いで、自動車からモビリティへとさらにすそ野を広げ、日本中を巻き込みながら明るい未来を作るきっかけを生み出したい。そんな思いで2023年にジャパンモビリティショーとして生まれ変わる決断をいたしました。これからは各社さまの製品や技術、アイデアにフィーチャーするだけでなく、その多様なもの同士がつながり、いっしょに楽しみながら未来を作っていく姿を目指しております。そのために、参加される企業の皆さまだけでなく、ご来場の皆さま巻き込みながらいっしょに未来を思い描き、探していく。そんなショーにしていきたいと思っております」とショー開催の意義について説明。

「私たちはこれまで、モビリティによって非常に多くのワクワクや感情、価値観を享受してまいりました。それは未来でも同じであってほしいと願っております。自動車業界を代表する立場といたしまして、さらなる協創とワクワクを生み出し、豊かで夢のある未来につなげていくこと。それがわれわれの役目であり、責任だと自負しております。私もこれまで以上にモビリティに愛を持って接し、1人でも多くの方にモビリティを愛していただけるよう尽力してまいります。本日開幕いたしましたジャパンモビリティショー2025は、誰もがワクワクできるショーとなっておりますので、ぜひご来場いただけますようお待ちしております」と語り、より多くの人に足を運んでもらえるようアピールした。

自工会の会長・副会長の7人が愛車などについて語る

第2部では日本自動車工業会の会長・副会長の7人によるトークセッションを実施。MCを務めたのはフリーアナウンサーの須黒清華さん

 第2部のトークセッションでは、登壇者がそれぞれ「ドライブ時やライディング時に着るような服装」に身を包んで登壇。まずは各氏が会場に持ち込んだ“愛車”についてコメントしていった。

 自工会 片山会長は「“トラック愛”四十数年の片山です。今回は最大ということになったこのトラックですが、ちょっとコマーシャルさせてもらうと、これ実は普通免許で運転できます。しかもATで非常に小まわりが利いて、“だれでもトラック”と呼んでいます。今回は本来なら愛車ということだったのですが、これは私の『未来の愛車』になる予定のクルマです」。

「これまでは社会のため、皆さんの生活を支えるために荷物を運んでいくのがトラックだったのですが、私もリタイアしたあとは孫といっしょに楽しみを運んでいくということで、まだ予約もしてはおりませんが、そういう用途のクルマだということで、今回ご紹介させていただきました。トラヴィオという名前です。(お孫さんとどこに行きたいですかというMCの質問に対して)夢は日本一周。孫が付いてきてくれるかちょっと自信がないとこもありますけど、ただ、車内はすばらしいですよ」とコメントした。

「夢はリタイア後に孫といっしょに日本1周」と語る自工会 片山会長

 スズキの鈴木俊宏氏は「今日持ってきたのは、私が初めて乗った4輪車と2輪車です。初代アルトは大学を卒業して、まあ2輪車の方もそうですが。アルトは助手席に女性を乗せると肩と肩が触れ合うというようなクルマでした。今では皆さん『リアビューモニター』を使っていると思いますけど、当時はなかったので、助手席に左手を伸ばして(隣に座っていたエスピノーサ氏の背中に手をまわしながら)後ろを見るわけですよ。それがいいなと」。

「マメタンは、実は弟が大学に入って通学用に買ったんです。僕それまでバイクって興味なかったのですが、乗らせてもらったら『こんなに風を感じて楽しいのか』と感じて、自分でも中型2輪免許を取るきっかけになったバイクです。今では大型免許まで取って会社で乗ったりしていますが、ワクワクドキドキを体験した2台ですね」とコメントした。

鈴木俊宏氏(自工会 副会長/スズキ株式会社 代表取締役社長)

 トヨタの佐藤恒治氏は「僕は初代MR2を持ってきました。1988年のクルマなんですが、前のオーナーの方から昨年譲っていただいてから1年かけて整備して、やっと今年の夏になって乗ることができるようになりました。(MR2が発売された)当時はまだエアコンがオプションだったんです。このクルマもエアコンがなくて、今年の夏はめちゃめちゃ暑かったですが、それでもどうしても乗りたくて、エアコンなしで乗ったら人間の方が先にオーバーヒートしました(笑)。いや、よいクルマですよ、日本初の量産型ミッドシップということで、これは気持ちのいいクルマです」とコメントした。

佐藤恒治氏(自工会 副会長/トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長)

 日産のイヴァン・エスピノーサ氏は「本日持ってきたのは日産のZです。これは左ハンドル車なので、いろいろな人に疑問を持たれます。Zは私が初めて乗ったクルマで、現代でも私の心を動かすワクワクするクルマです。ただ、Zは日本国内でも多くの注文が入っていて、そんなお客さまからの注文を差し置いて日本割り当て分を取ってしまうようなことはできません、そこでカリフォルニアに電話をかけて、グレーのZで在庫車はありますか?と聞いて、見つけた車両を日本に送ってもらいました。ちょうど日本から届いたばかりだったのですが、戻してもらいました。そんな逆輸入のような形で日本に戻ってきたのがこのZで、通勤で毎日乗っています。私が頭の中を切り替えて、リフレッシュしたいと思ったときに、儀式のように乗って仕事場まで走らせています」とコメントした。

イヴァン・エスピノーサ氏(自工会 副会長/日産自動車株式会社 取締役 代表執行役社長兼最高経営責任者)

 ホンダの三部敏宏氏は「私はちょっと前まで3モーターハイブリッドのレジェンドに乗っていたのですが、『プレリュードが出たら買おうかな』と言っていたら、このタイミングに間に合わせるために『クルマ手配します』『乗り替えてください!』って言われて、2週間ぐらい前に来た車両です。まだ200kmぐらいしか乗っていません」。

「私が社長になってすぐのころ、NSXを止めてS660も止めて、F1やってるくせにホンダはツマラン会社だという声をたくさん耳にして、とにかくスポーティなクルマを出そうという方針が出ました。そこで開発を始めたのですが、最初はプレリュードという名前はまだ付いてなかったんです。でも、中盤あたりになって『これだったら久しぶりにプレリュードの名前を付けてもいいんじゃないか』ということで、これで6代目、25年ぶりですかね」。

「TV-CMもバンバン流して好評ですが、一番売れている年齢層は50代以上です。(先ほどアルトでデートの話題を出した)鈴木さんには申し訳ないですけど、“究極のデートカー”と言えばやっぱりプレリュードですよ。50歳以上の人は分かるかと思いますが、『でも当時は高くて買えなかった』という層で、まぁ今回も高いと言われてますが、50歳以上の人はみんなお金もあるので、たくさん買ってもらえています」。

「ホンダ車はすべて魂がこもっていますが、スポーティな方向で久しぶりに魂がこもったクルマになっていますし、従業員たちが久しぶりにこのクルマに飛びついています。見た目だけじゃなくて乗ると分かりますが、シビック TYPE Rと共通点も多くて、乗るとびっくりというなかなかすばらしいクルマに仕上がっているので、ぜひ皆さん買っていただければと思います。あ、今は生産が間に合ってなくて『買いたくても買えないじゃないか』という話もありますが、何かの機会でぜひ1回乗っていただければ、私が言っていることを理解していただけると思います」とコメントした。

三部敏宏氏(自工会 副会長/本田技研工業株式会社 代表執行役社長)

 ヤマハの設楽元文氏は「(ステージから見て)手前側にあるのがRZ250です。1980年に発売されて、当時の2ストロークブームをけん引したモデルで、今は残念ながら手放してしまいましたが、当時は所有していました。これを買った理由は、やはり斬新なデザインと軽量コンパクトということです。TZというレーサーモデルをモチーフにして造られたモデルで、かなりスポーティでした」。

「もう1台は現在所有しているXSR900というモデルです。こちらも軽量コンパクトな3気筒エンジンモデルですね。僕は2021年末までインドに駐在していて、バイクを持っていなかったのですが、日本に帰ってきて買おうと思ってオーダーしたら、弊社の場合は『カスタマーファースト』ということで、先ほど三部さんは早く納車してもらった一方で僕は1年ぐらい納車を待たされました。『お客さまに納車する方が優先だ』って言われてずっと待っていたら、そこから社長になってしまったら乗る機会もなくなってしまって、ほとんど走行距離が増えていません。そんな『バイクに乗る時間がない』ということが現在のフラストレーションで、早く自由に乗れるようになりたいと思っているところです」。

「(MCから乗れるとしたらどこに行きたいですかと質問されて)やっぱり静岡に住んでいるので、富士山とかですかね。富士五湖から山梨とか、よいロードがいっぱいあります。あとは箱根にも行きたいですね。ぜひ皆さん2輪車にも乗りましょう」とコメントした。

設楽元文氏(自工会 副会長/ヤマハ発動機株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 CEO)

 自工会 副会長・専務理事の松永明氏は「皆さんから愛車のお話しをいただきましたが、私は事務局でクルマを造っているわけではないので、自動車産業全般に対しての思いや感謝を述べさせていただきます。私は1990年代の後半にミャンマーに駐在していました。そのときに、1970年代に日本からの援助で、マツダさんのB600というピックアップトラックが現地をたくさん走っていました。コンパクトなクルマなのですが、乗り合いタクシーとして驚くほどたくさんの人を乗せて街を走っていました」。

「また、私がミャンマーで仕事をしていると、日本に対する感謝であるとか、強いリスペクトを感じることもあって、それはそういった自動車が持つ性能が高いという点が背景にあって、日本メーカーの自動車が日本を象徴していて、技術力が高いよね、いいよねと評価されていることを感じました。このB600を生産していたのがトンボというあまり大きくはない街で、日本のエンジニアの皆さんが工場を造って技術指導を行ない、何年も現地に駐在して頑張って指導したことが実を結んで自動車生産ができるようになっています。そんな先人の皆さんが培ってきた土台の上に日本に対するリスペクトや、日本の技術に対する信頼というものが立っているんだなと感じまして、私も日本の自動車に愛を感じています」とコメントした。

松永明氏(自工会 副会長・専務理事)

「自工会はいつもこんな雰囲気です」と自工会 片山会長

ホンダの三部氏に謝罪するトヨタの佐藤氏

 その後はフリーの話題で会話するパートとなったが、最初にトヨタの佐藤氏が「三部さんにお詫びをしたい」と切り出し、イベント前に2人で会ったときには三部氏からレジェンドを出展すると聞いていたのに、直前になって資料を見たら「新型プレリュード」と書かれていて、「こんな場で自社製品の宣伝!?」と事務局に問い合わせたとのこと。しかし、プレスデー初日のプレスカンファレンスで三部氏が「社長が買うほどよいクルマです」とアピールして、実際に展示車が170kmほど走行していることを目にして勘違いしていたことを確認したと述べて頭を下げた。

 また、プレリュードが“究極のデートカー”と評された流れからシルビアに話題が移り、日産のエスピノーサ氏がシルビアについてコメント。「シルビアは私も本当に大好きなクルマです。シルビアのS110型(3代目)は(エスピノーサ氏の母国)メキシコでも売られていて、日本以外では世界の数か所でしか販売されていませんでしたが、メキシコはそのうちの1つでした。私が小学生のころ、このS110を持っていた隣人が私を小学校まで送ってくれていました。メキシコでは『サクラ』という名前で売られていましたね。今では私たちの電気で走る軽自動車が同じ『サクラ』として日本で販売されています。そんな子供のころの思い出があってシルビアは好きです」。

「また、S15型(7代目シルビア)も本当に最高のシャシー性能を持っているクルマで、私は日産でもベストなモデルの1台だと思っています。テストドライバーの訓練を行なう車両としても使っていて、S15型を250PSまで高出力化したモデルでも訓練をしています。本当に素晴らしい運動性能を持つ最高に素敵なクルマだと思っています。なので、両方のクルマがあった当時は素晴らしいライバル関係だったのではないかなと思いますね」と語った。

メキシコでは「サクラ」の車名で売られていたシルビアについて語るエスピノーサ氏

 自工会 片山会長はそれまでの流れを見て、「先ほど裏側でちょっとだけ事前打ち合わせをしたときに、自分の愛車に対する思いをかたるスピーチは各自1分でと言われていましたが、そんなの絶対に無理だと思っていて、実際に本番では1人5分ぐらいしゃべってるんですね。これが自工会の実態であります。本当にこんな感じで、みんなで喧々諤々と『どうやってよくしていこうか』『どのように自動車産業をベースにモビリティを造り上げていくのか』と話し合っています。なので、今日が特別ということではなく、いつもこんな雰囲気です」とコメント。自工会ではメーカー各社の代表が忌憚なく意見交換していることをアピールした。

今日のイベントの雰囲気が自工会の実像だと語る片山会長

 最後には各参加者が考える「2035年にあったらいいなと思うクルマ」をパネルに書いて紹介し、それぞれについて語り合いながらトークセッションは終了した。なお、イベント内容は「日本自動車工業会 公式YouTubeチャンネル」でライブ配信され、その後もアーカイブ動画が公開されている。

自工会 松永副会長の回答は「自工会14社が協力してつくる自動車」
ヤマハの設楽氏の回答は「ワクワク2035 転ばないバイク MOTOROiD:Λ」
ホンダの三部氏の回答は「Personal owned“空飛ぶ車”」
日産のエスピノーサ氏の回答は「INTELLIGENT CONNECTED MUJIKO」
トヨタの佐藤氏の回答は「駐車のときに小さくなるクルマ」
ほかの回答がそれぞれ社会や未来について真面目に向き合った内容だったことに対し、自分の回答は個人的すぎて恥ずかしい!とパネルを隠してしまった。なお佐藤氏はクルマを8台所有しているとのこと
スズキの鈴木俊宏氏の回答は「自分で操る車」
自工会 片山会長の回答は「トランスフォーマー型トラック」
自工会【JMS2025 未来モビリティ会議】特別セッション(1時間13分34秒)
佐久間 秀