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プジョー・シトロエン・ジャポン、最新クリーンディーゼル「BLUE HDi」発表会

アイシン製新世代6速ATと組み合わせ、高効率で力強い走りを実現

2016年7月12日 発表

 プジョー・シトロエン・ジャポンは7月12日、同日からプジョー、シトロエン、DSの各ブランドから搭載車を発売した新しいクリーンディーゼルエンジン「BlueHDi」に関する記者発表会を都内で開催した。なお、発売となったそれぞれのモデルについては、関連記事「プジョー、299万円の『308 Allure BlueHDi』など3モデルにクリーンディーゼル導入」「シトロエン、279万円のクリーンディーゼル『C4 FEEL BlueHDi』日本導入」「DS、『DS 4』『DS 4 CROSSBACK』にクリーンディーゼル搭載モデル日本導入」をそれぞれ参照していただきたい。

308 GT BlueHDi
直列4気筒DOHC 2.0リッター直噴ターボディーゼルを搭載。可変ジオメトリーターボチャージャーを採用し、圧縮比は16.7。最高出力133kW(180PS)/3750rpm、最大トルク400Nm/2000rpmを発生
308 Allure BlueHDi
直列4気筒DOHC 1.6リッター直噴ターボディーゼルを搭載。可変ジオメトリーターボチャージャーを採用し、圧縮比は17.0。最高出力88kW(120PS)/3500rpm、最大トルク300Nm/1750rpmを発生
使用燃料は当然ながら軽油。BlueHDi搭載の308シリーズの燃料タンク容量は52L
尿素水溶液の「AdBlue(アドブルー)」をラゲッジスペースのスペアタイヤ脇から補充。AdBlueのタンク容量は17L
既存モデルと内外装での違いはほとんどなく、一部のグレードでリアハッチに専用バッヂを装着するぐらい。GTグレードはフロントフェンダーにGTのバッヂが与えられる
ディーゼルエンジンの採用で前輪の軸重が増えることを受け、フロントブレーキのサイズを大きくして対応
シトロエンの「C4 FEEL BlueHDi」(左奥)と、12月に発売を予定する「GRAND C4 PICASSO BlueHDi」(右手前)
DSの「DS 4 BlueHDi」(左手前)と「DS 4 CROSSBACK BlueHDi」(右奥)
プジョー・シトロエン・ジャポン株式会社 代表取締役社長 クリストフ・プレヴォ氏

 記者発表会でプジョー・シトロエン・ジャポン 代表取締役社長のクリストフ・プレヴォ氏は、2015年10月の東京モーターショーのプレスカンファレンスで「PSAの成長サイクル」「DSブランドの正式発表」「日本市場にBlueHDiを導入する」という3点を強調していたことをあらためて語り、これまでに発表した約束を成し遂げてきたとコメント。「今年の初めからPSAの日本における販売台数は、前年比で15%増という成長を遂げています。DSブランドのすべてのラインアップ車はリニューアルされ、新しいフロントマスクに生まれ変わっています。そして私たちのBlueHDi技術は、日本市場で求められるすべての規制を満たしました。これにより、日本でのディーゼル車販売を始められることになったのです」と語った。

仏グループPSA パワートレイン&シャシーエンジニアリング研究開発部長 クリスチャン・シャペル氏

 BlueHDiの詳細な技術解説は、仏グループPSA パワートレイン&シャシーエンジニアリング研究開発部長のクリスチャン・シャペル氏が担当した。シャペル氏は1935年にメルセデス・ベンツから世界初のディーゼル乗用車が発売され、次いでプジョーからも1938年にディーゼルエンジンを搭載した「402」が発表され、世界で2番目にディーゼル乗用車を発売したPSAはディーゼルにおける革新的な長い歴史があるとアピール。さらに1979年に欧州初のディーゼルターボを搭載した「プジョー 604」、1987年にディーゼルエンジン搭載車の世界速度記録を「シトロエン CX」が樹立したことなどの歴史を紹介した。

 今回、日本導入が開始されたBlueHDiは、2013年秋にSCR(選択還元触媒)を採用するテクノロジーとして発表され、PSAの全モデルで搭載する戦略によってこれまでに100万台以上の乗用車でBlueHDiが搭載されたとアピール。2015年には1.6リッターBlueHDiモデル120万台、2.0リッターBlueHDiモデル20万台で、合計140万台を生産しているとのこと。

 具体的な技術では、ディーゼルエンジンからの汚染物質の排出を減らし、低燃費で気持ちのよい走りを実現するため、燃焼室でのスワール(気流)を最適化し、インジェクターでは燃料圧力や噴射孔のサイズや形状、1行程内での噴射回数などを検討。さらにターボチャージャーやインタークーラーなどエンジンルーム内でのエアマネージメントを突き詰め、EGRシステムはハイプレッシャータイプとしてエンジンの信頼性を確立するという。しかし、深いレベルでの最適化を目指してはいるものの、NOxとCO2の削減をどのバランスで妥協するかが問題になり、燃費というディーゼルエンジンのメリットを有効に使うためにはCO2排出の削減が必須となる。

 この相反するNOxとCO2の関係を断ち切るため、NOxを後処理することが非常に効果的であるとシャペル氏は説明。このための技術としてSCRを使い、これをコンパクトカーから大排気量モデルまですべてのディーゼルエンジンに導入することを戦略的な選択として決断していると述べた。尿素を使ったSCRシステムでは、排出ガスの温度が180℃を超えた時点から「AdBlue(アドブルー)」と呼ばれる尿素水溶液をエキゾーストパイプ内に噴射。アンモニアがNOxと化学反応を起こして窒素と水に変換する仕組みを解説し、同様のシステムを採用する他社とPSAの違いとして、SCRの選択還元触媒を微粒子フィルターであるDPFより上流に配置していることを挙げた。PSAではDPFで煤を燃焼させる温度がほかより100℃低く、これによって選択還元触媒を先に経由して、NOxを90%削減することが可能になっているという。

 このほかにシャペル氏は、2017年に新しい次世代ガソリンエンジン、いかなる厳しい規制にも対応できる新たなディーゼルエンジン、さらに高性能なドライビング性能を持つ次世代8速ATを登場させるとコメントし、2019年にはモジュラーガソリンエンジンによるプラグインハイブリッドの4WDモデル、Bセグメントの燃料電池車などを出していくと明らかにした。

PSAにおけるディーゼルの歴史。オールアルミエンジンやコモンレール技術などでも先駆けているという
近年におけるディーゼル技術。DPFやSCRのほか、ディーゼルハイブリッドもラインアップ
ディーゼルエンジンは、理想的な燃焼が行なわれた場合には水とCO2だけを排出するが、実際にはさまざまな要因からNOxやPMといった物質が発生する
PSAでは、まずエンジンの燃焼室内で可能な限り汚染物質が発生しないように取り組んでいるという
CO2を減らして燃費を高めつつ、後処理システムでNOxを除去することで高効率化
SCRで分解・変換する仕組み
酸化触媒、SCR、DPFの3段階で排出物を削減するシステム
サスティナブルモビリティに向け、2017年に次世代ガソリンエンジンや次世代8速AT、2019年にプラグインハイブリッド4WDやBセグメントの燃料電池車などを登場させるというロードマップ
プジョー・シトロエン・ジャポン株式会社 マーケティング部長 ジャン・ミシェル・オモン氏からは、具体的な日本市場でのBlueHDi搭載モデルの販売計画を発表。プジョーの3モデルが同日から発売され、シトロエンのC4は8月、DSのDS 4とDS 4 CROSSBACKは9月から発売。また、「C4 PICASSO」「GRAND C4 PICASSO」では2.0リッターBlueHDiエンジンの150PS仕様が導入されるとのこと
プジョーのBlueHDi搭載モデル
シトロエンのBlueHDi搭載モデル
DSのBlueHDi搭載モデル
この先の6カ月で、プジョー8モデル、シトロエン3モデル、DS3モデルの計14モデルがBlueHDiを搭載して日本市場に導入される計画
発表会では製品紹介に加え、北海道大学 大学院 工学研究科 教授の小川英之氏、フリーアナウンサーの吉川美代子氏の2人によるトークセッションも実施され、ディーゼルエンジンの基本情報やメリット、デメリットの解説などが行なわれた
2.0リッターBlueHDiエンジンの単体展示
選択還元触媒をDPFの先にレイアウトするPSA独自のテクノロジー。これにより、NOxを90%低減することが可能になっている
PSAのクリーンディーゼルの歴史と最新BlueHDiエンジンの解説
組み合わせるトランスミッションは、これまでPSAモデルと同じく全車アイシンAW製。今回のBlueHDiに合わせて新開発され、ロックアップ領域の拡大やクラッチの改良による伝達効率改善などによって効率を高めたほか、アイドリングストップに対応するため、エンジンが停止している状態でもAT内部の油圧を維持するため、専用のアクチュエーターを追加している。これにより、エンジン再始動直後から駆動力の伝達が可能となってレスポンスを向上させることに成功している。このBlueHDiでの採用を皮切りに、今後はPSAのガソリンエンジンなどにも採用が拡大していく予定とのこと