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トヨタ、ハイブリッド燃費37.0km/Lなど新型「プリウス PHV」の車両概要を発表

世界初のソーラー充電システムで「お日さまの力で走るクルマ」

2016年8月27日 発表

 トヨタ自動車は、今冬に日本国内での発売を予定している新型「プリウスPHV」の報道向け試乗会を千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイで開催。合わせて新しいプリウスPHVの主要諸元や採用技術などの車両概要を発表した。なお、試乗内容については日下部保雄氏によるインプレッションを後日掲載する。

プリウスPHV 主要諸元
全長×全幅×全高4,645×1,760×1,470mm
ホイールベース2,700mm
トレッド(前/後)1530mm/1540mm
乗車定員4人
車両重量1510kg
タイヤサイズ195/65 R15
エンジン直列4気筒DOHC 1.8リッター
エンジン最高出力72kW(98PS)/5,200rpm
エンジン最大トルク142Nm(14.5kgm)/3,600rpm
モーター最高出力(駆動用/発電兼用)53kW(72PS)/23kW(31PS)
モーター最大トルク(駆動用/発電兼用)163Nm(16.6kgm)/40Nm(4.1kgm)
駆動用バッテリーリチウムイオン電池
セル容量25Ah
セル個数95個
総電力量8.8kWh
EV走行距離60km以上
EV最高速度135km/h
トランスミッション電気式無段変速機
駆動方式2WD(FF)

 新型プリウスPHVは3月に開催された「ニューヨーク国際自動車ショー」で北米仕様の「プリウス プライム」として出展。当初は市場導入の時期を今秋としていたが、「ユーザーによりよいクルマを着実に届けるため」との理由から日本国内での発売が今冬に延期されている。

 初代プリウス PHVは3代目プリウスをベースに、走行用バッテリーに外部から充電可能とすることで、より積極的なEVモード走行を実現する派生モデルとして2012年1月に一般販売がスタート。2代目となる今回のプリウス PHVは「TNGA(Toyota New Global Architecture)」を全面採用して40.8km/LのJC08モード燃費を実現した新型「プリウス」をベースとしながら、開発コンセプトに掲げられた「HVにつぐ次世代環境車の柱」というプリウスとは異なるキャラクター性を明確化するため、フロントオーバーハングを25mm、リアオーバーハングを80mm延長して伸びやかで高級感のあるフォルムを実現。さらにフロントマスクにはトヨタのFCV(燃料電池車)「MIRAI」でも採用している4灯LED、リアビューではCFRP製バックドアの「ダブルバブルウィンドウ」を採用し、ウェッジシェイプデザインを強調するプリウスに対して横方向の広がり感を演出する外観デザインとしている。

プリウスPHV(スティールブロンドメタリック)
初代プリウスPHVは3代目プリウスとほぼ共通の外観デザインだったが、新しいプリウスPHVはMIRAIと同じ4灯LEDなどの採用で独自のキャラクターが与えたれた
ボディカラーは写真の新色「スピリテッドアクアメタリック」を専用設定し、ほかにも「エモーショナルレッド」「サーモテクトライムグリーン」など9色を用意

 インテリアでは基本的なデザインなどをプリウスと共通としながら、インパネ中央にフルHD解像度の11.6インチの縦置き大型ディスプレイをトヨタ初採用。DCM通信モジュールでデータセンターと接続するT-Connect SDナビゲーションシステムやオーディオ、エアコン、エネルギーモニターなどの表示、設定変更などを集約し、上下2分割表示などで使い分けできるほか、広い画面を生かして操作アイコンを大きく表示。物理キーの少ないセンターコンソールながら使い勝手も充実させている。また、リアシートはMIRAI同様に中央部分にアームレストを設定するセパレートタイプで、乗車定員は4人となる。

11.6インチ大型ディスプレイの採用に伴い、センター側のエアコン吹き出し口が縦型形状になるなどのデザイン変更も行なわれている

 このほかに車内の装備では、ガスインジェクション機能付ヒートポンプオートエアコンを世界初採用。キャビンスペース外の熱交換器から車内のコンデンサーに車外の熱を取り込んで暖房したり、車内のエバポレーターでキャビンスペース外の熱交換器に熱を放出して冷房するヒートポンプの作用にガスインジェクションの機能を追加。コンデンサーから出る気液混合の冷媒からガスを分離してコンプレッサーに注入することで冷媒の液量が増え、外気から熱をくみ上げる暖房効率を高めることができる。

ガスインジェクション機能付ヒートポンプオートエアコンの単体展示。写真内の左側が車両前方になり、暖房効率を高めるガスインジェクションは中央右寄りに置かれている機能
室内コンデンサーから車両前方の熱交換器に戻る配管上にガスインジェクションの気液分離器をレイアウト。冷媒の液量を増やして暖房効率を高める

 パワートレーンでは、プリウスでリアシート下に配置される56セルのリチウムイオン電池から容量を高めた95セルのリチウムイオン電池に駆動用バッテリーを変更。大型化により搭載位置がラゲッジスペースのフロア下に変更されているものの、総電力量は8.8kWhとなってEV走行距離(JC08モードにおける社内測定値)は60km以上を実現。この数値は初代プリウスPHVの26.4kmから2倍以上となっている。また、向上した駆動用バッテリーの能力を有効活用するため、EV走行の最大出力時には「MG2」と呼ばれる通常のモーターに加え、スターター・ジェネレーターである「MG1」に電力供給して駆動力をアシストする「デュアルモータードライブシステム」を新採用。開発責任者を務める豊島浩二氏が「電気ターボのような使い方」と表現するこのシステムの活用により駆動力が上積みされ、EV走行時の最高速が100km/hから135km/hに高められている。JC08モードのハイブリッド燃費は初代の31.6km/Lから37.0km/Lに向上させた。

EV走行距離60km以上を実現するリチウムイオンの駆動用バッテリー。セル個数は95個で重量は120kg。総電力量8.8kWh、総電圧351.5Vとなっている
エンジン始動や補機類用バッテリーの充電に使われているスターター・ジェネレーターにワンウェイクラッチを追加し、最大出力時に駆動用モーターとしても機能するようになって駆動力を高める「デュアルモータードライブシステム」を新採用
1日で平均2.9km、年間で1000km以上走れる電力を生み出す世界初の「ソーラー充電システム」

 ルーフ一面に太陽光パネルを設定する「ソーラー充電システム」は、太陽光で発電した電力を走行に利用する量産車世界初の装備。最高出力180Wの太陽光パネルにより、駐車中には専用のニッケル水素電池に発電した電力を充電して走行に使用。走行中には電力を補機類用バッテリーに充電して通常の駆動用バッテリーの電力消費を抑えてくれる。発電量は日照条件に左右されるが、最大で6.1km/日、平均で2.9km/日に相当する電力がソーラー充電システムから生み出されるという。この機能について開発責任者の豊島氏は「年間で計算すると1000km以上になり、『お日さまの力で走るクルマ』と言えます。私はPHVの開発に携わり始めた当初から『充電をしないPHVを作りたい』と言い続けてきて、自ら発電するクルマがPHVのあるべき姿になればいいと思っております」とコメントしている。

ソーラー充電システムのパーツ構成。太陽光パネルを設置するソーラールーフの最高出力は180W
インナー骨格部をCFRPで構成するバックドアは、アルミ製で製造した場合と比較して約40%の軽量化を実現。重量では3~4kgの軽量化となり、重量物の駆動用バッテリーがラゲッジスペースのフロア下に移動した重量配分の適正化に貢献している
プリウスPHVサーキット走行シーン01(3分22秒)
プリウスPHVサーキット走行シーン02(1分58秒)