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インテル、自動車事業と自動運転事業の取り組みのなかで「FPGA」をキーデバイスに
CPU、FPGA、5Gなど自動運転に必要なデバイスを1社で提供できることが強み
2017年6月23日 19:25
- 2017年6月22日 開催
インテルは6月22日、都内で報道向けに、2017年度第2四半期におけるインテルの最新の取り組みを紹介するプレスセミナーを開催した。注力分野はいくつかあるが、自動運転を最初の注力分野として挙げ、自動運転の開発、自動車分野への取り組み、FPGA(Field Programmable Gate Array)事業について説明を行なった。
最初にインテル 代表取締役社長の江田麻季子氏がインテルの全体的な取り組みを紹介した。このなかでは米国で自動運転のデモを行なったことや、米国で6月21日に発表したばかりのIOC(International Olympic Committee)と2024年までのスポンサーとなることなど、インテルの事業を紹介。そのなかでAI、IoT、5G(モバイル)、VR/ゲームと同じ注力分野として「自動運転」を挙げた。また、インテルの成長戦略としてはPCに主軸を置いていた従来から、スマートデバイスを提供する企業へと進化するとし、戦略的サイクルを加速させるため新たに「FPGA」をポートフォリオに加え、車載にも使えるとした。
2020年には「ドライバーレスタクシー」が実現か
自動運転の開発については、事業開発・政策推進ダイレクター兼チーフ・アドバンテストサービス・アーキテクトの野辺継男氏が説明した。
ITとクルマの関係は1970年代まではほとんどなく、その後、公害の問題で燃料噴射に電子制御が入ってくる。そして、ABSやスタビリティコントロールなど運転支援が入る。2000年に近づくにつれナビゲーションが入ってくる。さらに2000年前後にはモバイル回線で不特定多数のクルマから走行データを集めてデータセンターで分析することで、ナビゲーションシステムで渋滞予測や回避、ワイパーが激しく動く動作状態が集まればゲリラ豪雨も検知することができるようになったとこれまでの歴史を説明した。
その後はADAS(先進運転支援システム)や自動運転に結びつく過程で、センサーとしてクルマに搭載され、ネットワークを介して、データをクラウドで分析できるのが2020年とした。
野辺氏は自動運転についての想定実現時期についても言及。これまで、2020年に高速道路、2025年頃に主要幹線道路と、グローバルに日米欧で認識されていた状況があった。
それが、クルマがデータをクラウドに上げ、地図をアップデートするというマシンラーニング、ディープラーニングによって過去2年間の指数関数的な成長があったとし、「人間が運転することを機械が学習して、人間がいちいちプログラミングせずにプログラムが生成される」といった理由から、「2020年にはドライバーレスタクシーが実現する」と予測した。
車内システムは統合に向かう
実際にインテルの製品における自動車分野に向けた取り組みについては、執行役員 Automotive担当の大野誠氏が説明した。「インテルが自動車ビジネスに本格参入したのは、自動運転が注目を浴びるようになったここ1~2年の話しではない」とし、製品は「今ではグローバルで30車種以上、主要の自動車メーカー数社で採用。今後も増える見込み」と自動運転だけの取り組みでないことを強調した。
また大野氏は「完全自動運転が実現した場合、1日、クルマ1台あたり4TB以上のデータを生み出すと言われている。一般的なインターネットユーザーが消費するデータ容量のおよそ2600倍。その結果、全体のシステム・アーキテクチャは現在の分散から統合へと見直しがされることも重要」と指摘した。これまで自動車では、燃料噴射やABSなどの車載器が搭載されると、システムもその数だけ増えていたが、利用効率を考えればデータセンターで統合が起きたように、自動車の領域でもシステムの統合が必ず進んでいくという。
一方で、自動運転を実現するには、クルマとクラウドを結ぶ高速なネットワーク、自動運転のアルゴリズムを生成するクラウドデータセンターが必須になる。また、カメラやレーダー、センサー、ソフトウェアベンダー、標準化団体など、ありとあらゆるパートナーと強力な連携体制も必要。そこで、インテルはパートナーと連携を図るため、自動運転を実現するソリューションとして第5世代のモバイル通信のプラットフォームを含む「Intel GO」を用意し、エンド・ツー・エンドのソリューションと開発環境を用意した。
大野氏は「すべての領域で、ハイパフォーマンスかつ柔軟で、拡張性を持ったエンド・ツー・エンドのプラットフォームを提供できるのが、私どもの強み」と自信を見せるが、国内における取り組みについては「報告できないが、積極的に活動しているので、ゆくゆくこういった場で報告できるかと思っているので、ぜひ期待して」と述べるにとどめた。
FPGAが自動運転のカギとなる
FPGAについては、インテル傘下となったアルテラの日本法人、日本アルテラ 代表取締役社長の和島正幸氏が解説した。FPGAとはField Programmable Gate Arrayの略で、そのまま訳せば現場で書き換え可能な論理ゲートが並んでいる半導体。簡単に言えば製品出荷後でもソフトウェアの書き換えができる製品があるように、FPGAでは処理に合わせて回路を最適化できるよう回路を書き換えてしまうことのできる半導体だ。
FPGAはさまざまな業種や用途に使われているが、自動車向けには「Arria 10 GX FPGA - オートモーティブ・グレード」を用意、FPGAの再プログラム可能な特徴はもちろんとして、用途に最適化された回路構成によって高い電力効率を実現し、安全制御など数十ミリ秒でリアクションをしなければならないところにも対応できる。電力容量に制限があり、安全のために低遅延で処理する必要のある自動車において自動運転に適したアクセラレーターだとしている。
また、FPGAはほかのメーカーの製品もあるが、和島氏はインテルの強みとして、インテルだけがCPUとFPGAを1社で提供できるとし、インテルならではFPGAの活用ができる点を訴えた。