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ボルボ、トヨタ博物館で世界初の3点式シートベルト装着車「PV544」寄贈式典

2018年初から常設展示予定

2017年12月15日 開催

世界初の3点式シートベルトを標準装備した自動車ボルボ「PV544」をトヨタ博物館(愛知県長久手市)に寄贈

 ボルボ・カー・ジャパンは12月15日、トヨタ博物館(愛知県長久手市)に世界初の3点式シートベルトを標準装備した自動車としてボルボ「PV544」を寄贈した。

 同日、トヨタ博物館 本館メインエントランス前で寄贈式が行なわれ、寄贈式にはトヨタ博物館 館長 布垣直昭氏、ボルボ・カー・ヘリテイジ ディレクターのペルオケ・フローバーグ氏、ボルボ・カー・ジャパン 代表取締役社長 木村隆之氏が出席し、寄贈に至った経緯などが語られた。

 寄贈されたPV544は1959年にボルボのエンジニア、ニルス・ボーリン氏により開発された3点式シートベルトを世界初搭載したクルマで、ボルボの安全技術を象徴する代表的なモデル。ボルボは、この3点式シートベルトについての特許を無償で公開。以来、このシートベルトは100万人を超える人々の命を救ったとされる。

寄贈されたPV544
ボルボ・カー・ジャパン株式会社 代表取締役社長 木村隆之氏

 寄贈式に登壇した木村氏は「ボルボとしては(日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した)月曜日に続くビッグイベント」と挨拶をするとともに、今回の寄贈に至った経緯を紹介。

 木村氏は「昨年の10月にボルボ愛好クラブのツーリングに参加して、ボルボアマゾンクラブのメンバーでここを訪れたときに、館長から直接館内を案内していただく機会がありました。布垣館長とはトヨタモーターヨーロッパ、ベルギーのブリュッセルで一緒に4年働いた仲で、いろいろ話していくなかこのミュージアムにボルボのクルマが1台もないことに気づきました。安全を掲げてクルマを連綿と開発してきたブランドのクルマが、このトヨタミュージアムに1台もないのはさみしいということで、1台寄贈させていただきたいと思いました。それには3点式シートベルトを最初に装備したクルマがいいだろうと、PV544を寄贈しようということで今日にいたりました。世界中を探し回って最終的には本国スウェーデンのボルボミュージアムから譲り受けて寄贈させていただくことになりました。素晴らしい意義のあるミュージアムにボルボのクルマを寄贈できることを、ボルボの日本の代表として誇りに思います」と述べた。

寄贈の経緯について語る木村氏
ボルボ・カー・ヘリテイジ ディレクターのペルオケ・フローバーグ氏

 寄贈されたPV544について、ボルボ・カーのフローバーグ氏は「このボルボPV544は1959式で、1959年はボルボにとって特別な年になりました。自動車業界で最も重要な安全装備3点式シートベルトが発明され、PV544は世界で初めてこの3点式シートベルトを標準装備いたしました。以来、世界中で何百万もの人の命を救ってきて、今ではクルマには当たり前のものになりました。安全に関わるエンジニアにクルマの安全装備のなかで1つだけつけられるという場合、誰もが3点式シートベルトと答えるでしょう。トヨタ博物館にこのクルマがボルボを代表して展示されるのは格別の思いがあります」と歴史的価値を述べた。

 加えて、フローバーグ氏は「自動車会社が歴史を大事にするのは単にノスタルジーだけではありません。個人的にノスタルジーに浸って過去を振り返るのはわるいことではないですが、会社としてのボルボは常に前を見て新しいことを考えていかなければなりません。このヘリテージ(遺産)は、ノスタルジーでなく本物であること、本物だけが持つ価値は、信頼性、確実性において、強いブランドには必要とされるものです。今私たちは昔より多くの対価をいただいていますが、お客様も単にいいものを求めるだけでなく、私たちがなぜそれをしているかにも関心を持っています。私たちが過去に行なったことと今やっていることがどう結びつくのかを見ています。それが私たちが持たなければならない歴史の重み。ほとんどのものは真似をしてコピーすることができますが、会社の歴史をコピーすることはできません」と、歴史の持つ重要性を説いた。

トヨタ博物館 館長 布垣直昭氏

 PV544を寄贈されたトヨタ博物館の布垣氏は「(PV544に採用された)3点式シートベルトは技術的には安全を願って作られたわけですが、さらに素晴らしいのは特許を公共のために公開したことだと思います。私ども(トヨタ自動車)はクルマの開発も携わっている会社ですが、コンペティティブな環境のなかでそういった決断をすることは難しいことだと思います。人の命を救うのに垣根があってはいけないと、そういった決断をされたボルボ様の会社の志を感じます」と感想を話した。

 また、布垣氏は「私ども博物館でいま何を展示していくのかを考えていくときに、クルマの背景にあるストーリーや文化をもっともっと伝えていかなければならないと感じています。今回いただいたクルマは、まさに安全のヒストリーを語るときに欠かせないワンピースを埋めていただいたと思っています。単にクルマを1台飾るだけでなく、背景にあるスウェーデンのエンジニアたちの志や誇りを伝えていきたい」と話した。

 寄贈されたPV544は、1週間程度トヨタ博物館本館メインエントランスに展示され、2018年の年初から本館3階の展示エリアのなかで安全性をテーマに常設展示される予定。

現役車両3台も寄贈式に駆け付けた