ニュース

三菱自動車、2017年度第3四半期は646億円の営業黒字、純利益701億円を計上して通期見通しも上方修正

グローバル販売台数は前年同期比15%増の77万7000台

2018年2月5日 発表

3月に新型「エクリプス クロス」を発売予定となっている三菱自動車工業の2017年度第3四半期決算説明会が開催された

 三菱自動車工業は2月5日、2017年度第3四半期決算と2017年度通期の業績見通しを発表し、東京都港区にある本社で決算説明会を実施した。

 2017年度の第3四半期累計期間(2017年4月1日~12月31日)における三菱自動車の売上高は前年同期比13.1%増の1兆5181億円、営業利益は前年同期の-232億円から黒字転換して646億円となり、営業利益率は同-1.7%から4.3%となった。当期純利益も同-2133億円の赤字から701億円の黒字となっている。

 このほか、9カ月での好調な販売に加え、コスト低減が順調に進んでいることを受け、2017年度の通期業績予想と年度末の配当予想を上方修正することも合わせて発表されている。

三菱自動車工業株式会社 取締役 副社長執行役員(財務、経理担当)CFO 池谷光司氏

 説明会では三菱自動車工業 取締役 副社長執行役員(財務、経理担当)CFOの池谷光司氏が登壇し、決算内容の詳細を解説した。

 2017年度第3四半期累計の販売台数は、タイでのピックアップトラック販売が好調なこと、インドネシアで新型「エクスパンダー」の市場投入、中国市場で「アウトランダー」の販売が引き続き好調であることなどを受け、前年同期比15%増の77万7000台となったことを池谷氏は説明。

 地域別の数字では、日本市場では前年同期比24%増の6万2000台を販売。軽自動車の「eKワゴン」「eKスペース」の販売が復調し、アウトドアテイストを強調した「ACTIVE GEAR」シリーズが販売を牽引。販売台数は“2015年度レベル近くまで回復している”とした。さらに2017年12月からは新型「エクリプス クロス」の受注を開始し、1月末の時点で3000台以上の受注を得ているという。今後もエクリプス クロスを足がかりに、販売台数のさらなる拡大に取り組んでいく。このほか、ブランド再構築に向けた取り組みとして力を入れている「電動ドライブステーション」も2月3日に「松江店」のリニューアルなど順調に展開を進め、これまでに全国で23店舗を展開していることを池谷氏はアピールした。

2017年度第3四半期累計の業績概要
営業利益の増減分析。日本と米国での販売インセンティブ、ブランド強化に向けた広告宣伝費などによる販売費がマイナスとなったものの、そのほかは増収要因となっている
バランスシート/フリーキャッシュフロー。健全な財務状況を維持しているとする
グローバルの全市場で販売台数を増加させた
軽自動車の「eKワゴン」「eKスペース」、第4弾まで投入した「ACTIVE GEAR」シリーズなどが販売を牽引

 アセアン地域でも販売好調を維持しており、販売台数は前年同期比25%増の18万7000台。主要マーケットであるタイ、フィリピン、インドネシアのそれぞれで好調となっており、インドネシアでは2017年度から製造会社、販売会社をスタートさせてビジネスモデルを刷新。さらに新型MPVのエクスパンダーが非常に好評で、さらなる拡販が期待されている。このほかにもベトナム市場などで積極的な事業展開を進めているという。

 中国市場では現地生産を開始したアウトランダーが引き続き好調で、前年同期比63%増という数値を記録。台湾市場などと合わせて11万9000台を販売した。さらなるシェア拡大に向けて新規ディーラー開店を促進し、店舗あたりの販売台数増加などを推し進めており、店舗数は2016年末の210店舗から2017年末には300店舗まで増加。2019年度末には400店舗まで拡充していく計画としている。

 米国市場は全体需要が-3%となる市場環境の中、三菱自動車は前年同期比3%増となる10万8000台を販売。2017年12月に「アウトランダーPHEV」、この1月にエクリプス クロスを市場導入するなど積極的に展開しているという。

 欧州市場では西欧地域で販売台数がマイナスとなった一方、ロシアでの販売が回復。全体では前年同期比2%増の13万4000台を販売した。苦戦した西欧地域でもドイツ、イギリスでは堅調を維持し、2017年10月初旬から出荷を始めたエクリプス クロスは順調に販売台数を伸ばしており、今後の巻き返しが期待できると池谷氏は解説。ロシア市場では生産を再開した新型「パジェロ スポーツ」を中心に販売台数が力強く回復しているとした。

インドネシアでは新型MPVのエクスパンダーが販売を牽引
重点市場と位置付ける中国では現地生産化したアウトランダーが好調で、販売店の拡大など積極的な施策を進めている
北米市場ではアウトランダーPHEVやエクリプス クロスをラインアップに加えて攻勢を強める
欧州では西欧地域のマイナスをロシアの販売増がカバー
三菱自動車が高いシェアを獲得している豪州でもSUVや小型商用車を中心に販売台数を増加
需要が不安定な中東地域ではフリート販売によって販売台数を確保。中南米でもピックアップトラックなどの人気で販売台数増加を実現した

 このほかに池谷氏は「直近のトピック」として、2017年度下期から販売を開始したエクスパンダー、エクリプス クロスといった新型車2モデルが好調に販売台数に貢献していることをアピール。日本でエクリプス クロスを紹介する販売施策として実施した「NIGHT SHOWROOM」は1月末までに累計6万5000件以上のアクセスを記録しているという。

 生産体制の面では2017年10月から岡崎製作所でエクリプス クロスの生産を開始したことを受け、2017年12月から「RVR」の生産を岡崎製作所から水島製作所に移管。これによって国内における生産体制の最適化が進められたと池谷氏はコメント。2017年度に操業を開始したインドネシア工場はエクスパンダーの好調により、生産体制の2直化を10月から前倒しで実施。インドネシア工場はアセアン地域における重要な生産工場として生産を強化し、16万台/年まで高めていく計画だとした。

 顧客サービスの強化として取り組む販売金融では、ルノー、日産自動車とのアライアンスを活用。2017年6月に発表したオーストラリア、タイ、ニュージーランド、カナダでの三菱自動車ブランドを使った販売金融事業に加え、販売金融分野でルノーと初めての協業として、同日にオランダにおける販売金融サービスの共同提供をスタートさせることも発表。このサービスについても、今後さらに拡大していくと池谷氏はコメントしている。

 また、将来の成長に向けた設備投資、研究開発費も着実に投資を実施。研究開発では来年以降に市場投入する新型車の開発に向け、開発リソースを増強している段階にあると池谷氏は説明し、さらにエンジニアリング会社に対する業務委託など開発のアウトソーシングも積極的に進めてリソースを確保していくという。

インドネシアで2017年10月に発売したエクスパンダーは1月末までに5万8000台以上を受注。2018年にはフィリピンやタイにも輸出する計画となっている。2017年10月に欧州、1月に北米や豪州で発売したグローバルモデルのエクリプス クロスはこれまでに4000台以上を販売し、3月の発売を前に、日本でも1月末までに3000台以上を受注している
インドネシア工場はエクスパンダーの好調を受け、生産体制の2直化を前倒しで開始した
ルノー、日産とのアライアンスを販売金融の面でも活用。欧州市場ではルノーとの取り組みが新たにスタートした
将来の成長に向けた設備投資、研究開発費も着実に投資している

 第3四半期までの好調により、2017年度の通期見通しは売上高で5%、営業利益で36%、当期純利益47%とそれぞれ数値を上方修正。2017年10月に発表した2019年までの中期経営計画「DRIVE FOR GROWTH」で目指すV字回復の軌道を維持していると池谷氏は語り、2019年の目標となっている「営業利益率6.0%以上」に向けても好調なペースであることをアピールしている。

 最後に池谷氏は「当社はこの第3四半期において計画を上まわる実績となり、業績見通しの上方修正をいたしました。今期はこの計画を確実にやりきるとともに、再生に向けた手を緩めることなく必要な投資を継続し、将来の成長に向けた基盤づくりを着実に進めてまいりたいと思います」と締めくくった。

当期純利益47%増など通期見通しを上方修正
V字回復の軌道を維持していると池谷氏は語る
通期見通し修正の各要因。アライアンスによるコスト低減も大きく効果を上げる想定となる
通期見通しの上方修正を受け、株主に対する配当金も3円増配になる予想
質疑応答でコメントする池谷氏

 質疑応答では2016年5月に明らかになった燃費不正問題で落ち込んだ販売台数が回復傾向にあることの受け止めについて質問され、池谷氏は「私どもとしては皆さまにご迷惑をおかけした燃費不正の影響、それに伴う台数減ということで、とにかく本社、販売会社を含め一体となって信頼回復を最優先にこの1年やってまいりました。おかげさまで長年お取引いただいているお客さまからのご信任もいただきながら、ようやく待望の新型車であるエクリプス クロスの本格導入(が3月から)ということで、大きな流れとして信頼回復に基づいた目で今回の台数増をいただいているかと思います。私どもは国内については中期経営計画でお約束している大きな目標が、台数にしても、損益についても黒字化という動きがありますので、1歩1歩着実に台数が出た新車を軸に愚直にやっていくことが必要かと思っています」と回答している。